2025年6月16日 |
ベトナムで中国製HRC輸入増加 AD対象サイズ外で 4月は21万4000dへ大幅な増勢 ベトナムで中国製ホットコイルの輸入が4月21万4千dへ大幅に増加した(板幅1880_超)。ホーチミン発現地紙の報道をジェトロがビジネス短信で伝えた。ベトナムでは3月8日から120日間のAD税(19・38―27・83%)賦課が運用されたなか、4月輸入は急増する現象を呈した。AD税は板幅1880_以下の中国製熱延コイル(HRC)に課せられたが、AD税の調査開始以降、1900―2千_幅の広幅コイルの輸入が増加する傾向にあるという。 ちなみに、この1―4月のベトナムのHRC輸入総量は約310万d(前年同期比15%減)で、うち中国製190万dと全体の61%を占めたという。ただ、1880_超は1―4月33万5千dで、24年下期比4・6倍、上期比25倍にあたる由。 5月、6月の動向も見なければAD税賦課の影響を論じきれないが、AD賦課を実施しても、対象サイズを外した輸入の増加や、駆け込み増加が発生。需給撹乱を防げないようだ。 中国の鋼材輸出は増え続けており、トランプ新関税賦課を前に中南米、アセアン諸国向けに増加が想定されてきた。それらの地域を経由し、加工品、部品など「迂回輸出」も増加し、多少の関税で中国製鋼材の流入を食い止めることは難しそうだ。ベトナムだけでなく、周辺国での輸入増加が究極には日本市場のサプライチェーンの秩序を壊す可能性も否定できない。加工品・部品のかたちをとった「迂回輸出」のトレサビリティを追求するのは徒労に似て、いわば「トランプ式」が効力を持つのかもしれない。それでも、低価格を武器にした浸潤は関税の堤防を越える。中国製鋼材の氾濫への対処は、世界の鉄鋼業の課題として、いよいよ共通の重さとなってきた。 |
2025年6月13日 |
小野建、1次中計は長期ビジョン基礎に 鉄鋼と建設事業を両輪で ソフト投資は50億円、DX・財務強化 小野建は12日、第1次中期経営計画と2024年度決算の説明会を開催した。新中計は長期ビジョン2035の実現に向けた基盤づくりの期間と位置付けられている。人的資本の拡充による経営人材育成・建設分野請負能力向上・ITやDXによる事業基盤強化が骨子となる。 中計については、計画策定の中心となった小野剛副社長(6月27日開催の株主総会後に社長に就任予定)が説明を行った。小野副社長は事業に関しては、鉄鋼事業と建設事業を連携させ、高付加価値を生み出す事業モデルを構築していくとした。また「当社は鉄鋼事業において、在庫力・加工力・物流力を充実させており、建設事業の拡大に重要な要素がそろっている。施工だけでなく設計提案や施工における資材の最適化を実現することができる」という。将来的には2つの事業を両輪とし、建設事業は売り上げ全体の50%まで引き上げる方針だ。 DXや人的資本に対する積極的な投資も新中計の目玉の1つだ。長期ビジョン全体で700億円の投資を行う予定だが、こうしたソフト投資が100億円を占めるという。小野副社長は新中計ではこのうち50億円を充てるとする。同社では小野建eプレイスを構想中で、ミルシートの電子化や取引先とのやり取りをネット活用で効率化させるなど、流通業界の改革につながる取り組みを進めたいとしている。これについては従来のハード面の投資が役立ってくる。鉄鋼小売り業においてナンバー1としての圧倒的なポジションを確立することを同社は新中計のなかで目指す姿として掲げている。販売や在庫のボリューム、東西地区に広がる広いネットワークを持つ小野建だからこそeプレイスは成功させられると自信を持つ。 今回の中計では財務体質強化が大きなポイントとなる。(本紙2面に続く) |
2025年6月12日 |
関東鉄源、鉄スクラップ輸出入札 6契、初の一船仕立て2万d 落札価格4万2267円、122円安で高値保つ 関東鉄源協同組合は11日、鉄スクラップ6月契約の輸出入札を行った。落札は1番札のみで、4万2267円で2万d。価格は前月比122円安だった。向け先はバングラデシュかベトナム。 今回のトピックスの1つは、成約量を2万dまで引き上げたこと。一船仕立てで2万dは関東鉄源として初めてだ。一船仕立てにすることでトン当たりのコストが数j安くなる。組合では事前に一船仕立てにすること、これまでの1万5千d上限を開放し2万dまで拡大することについて会員に図った。集荷は荷積みの労力を考え、組合では最大1万5千dの成約量にとどめてきた経緯がある。 ところが輸出環境変化し、今ではベトナムやバングラデシュなど遠国向けが中心になり、まとまった数量が求められるようになっている。電炉製品の需要減で国内向けの鉄スクラップ消費も減った。これらを踏まえ、組合としては対応を見直すことにしたもの。 応札量は16万3400d。16万d乗せも今回の入札トピックスの1つだ。応札件数は17件で辞退はなし。2021年2月契約で応札量が17万5900dあったが、今回はそれ以来の高水準だ。国内需給情勢が変わったことが背景にある。世界的な経済動向が不透明になっているためか、フレートが安くなっていることも会員を積極的にさせたと見られる。 5月契約分は6月21日から7月2日まで1万5千dが船積みされる予定だ。台風シーズン入りしたため、若干ずれる可能性があるという。足元の浜値は4万円から4万1千円。関東鉄源の落札価格は依然としてそれより高値を保っている。ベトナムは経済回復途上にあり今後も期待できる。国内外の価格乖離が続く。 |
2025年6月11日 |
ステン店売り向け冷薄・厚中板価格 日鉄、6契Ni系1万円下げ 輸入冷延1万8000d強の高水準続くなか 日本製鉄は、6月契約の国内店売り向けのニッケル系冷延薄板と厚中板を1万円値下げする。クロム系冷延薄板は据え置きとした。ニッケル系は2カ月連続の値下げとなる。ニッケル価格の下落と為替の円高を反映、アロイリンクで値下げしたもの。 ニッケル価格は4─5月平均で6・93jになった。3─4月平均より0・16j下落。為替は2・25円の円高だった。クロム価格は2・5k上昇。ただ、南アフリカの一部生産者による大幅減産発表やクロム鉱石の輸出制限などの動きはあったが、原料価格に及ぼす影響は軽微であるとの判断があった。 同社のニッケル系値下げは高水準の入着が続く輸入材の影響もあると見られる。国内のニッケル系冷延薄板の4月末の在庫率は2・51カ月。流通の販売状況も低調で在庫に目立った変化は見られない。こうしたなかで輸入は1万8千d強のボリュームがある。国内メーカーが減産となり、輸入材が市場浸食を深めている現状がある。日鉄では不公正な輸入品の入着が長期間持続していることで、国内のステンレス産業が数量・価格の両面で損害を被っているという認識がある。WTOルールなどに即した救済措置を求めていると言う。中国材に関しては大手の流通経路を通らず、中国系業者が仲介し国内流通業者に供給されているケースが増え、全体量を把握するには経路が複雑化してきた部分もある。不公正な輸入品の市場に与えるリスクはますます顕著なものになってきているといえる。 国内市場においては米国の関税措置による直接・間接影響が懸念されている。日鉄によれば現状はまだ顕在化はしていないという。米国関税はトランプ大統領の動向に左右され変動要素をはらむ。需要家が仕入れに慎重にならざるを得ない局面も懸念される。 |
2025年6月10日 |
棒鋼メーカー、苦悩募る製造コスト増 4月国内鉄筋出荷11カ月連続減 耐えるか関東鉄筋市況10万円台 普通鋼電炉工業会(渡辺敦会長=JFE条鋼社長)がまとめた4月の国内向け鉄筋出荷量は前年同月比8・8%減の50万5153dだった。普電工は前年同月比0・1%増としていた昨年7月の数字を0・1%減と見直したことから前年比マイナスは11カ月連続に伸び、2024年度累計出荷量は619万1194dに微修正された。普電工は25年度の国内鉄筋需要予測を7月に公表する予定だが、今年度の出荷量は出足から鈍っている状況だ。 建設分野の働き方改革や計画見直しを背景に鉄筋需要の減少傾向は続くとの見方は多く、都内流通筋は「鉄筋需要は今年度も緩やかに落ちていきそうで、案件の取り合い合戦は激しさを増すだろう」とため息をこぼす。これはメーカーも同様で、弱含みながらもトン当たり10万円付近を保つ関東地区鉄筋市況がどこまで維持できるかが注目されている。メーカー各社は生産減による製造コスト上昇への対応に迫られ「やはり量も欲しいところだ」と流通筋。「交渉価格は10万3千円からスタートしている現在も販売姿勢は何とか踏ん張っているが、どこまで耐えられるかだろう」と話す。 棒鋼メーカーの生産量は小形棒鋼輸出の低空飛行も響く。4月の小棒輸出量は2731dと24年度月平均約9100dを大きく下回り、1万d割れが4カ月続いた。直近ピークとなった21年度は小棒輸出量が約48万d(月平均約4万d)に上ったが22年度約35万6千d、23年度約25万7千d、24年度約10万9千dで推移した。棒鋼メーカーの4月の小棒生産量は前年同月比13・3%減の54万7100dと前年比マイナイが15カ月続いた。輸出を含む小棒出荷量は10・7%減の54万1421dにとどまった。かつて1千万d台だった出荷計は20年度に800万dを、24年度に700万dを割った。メーカーは事業環境の変化に合った適正販価の浸透に力を入れる。 |
2025年6月9日 |
メタルXシリーズ、今度は線・特分野 Metal X WR6月から提供 2次加工メーカーと部品メーカーつなぐ メタルワンはメタルXシリーズ第3弾として、線材・特殊鋼のデジタルプラットフォームを立ち上げた。「Metal X WR」(メタルエックスダブリューアール)は線材2次加工メーカーと部品メーカー間のコミュニケーションをデジタル化。リアル(製品)とデジタルを融合させ、購買・受入業務の信頼性を高めるメリットがある。自動車を中心に対象分野を広げていく。 新たなプラットフォーム開発は昨年10月から始まった。線材・特殊鋼のサプライチェーンは足が長く扱う会社も大手から中小までさまざま。同社では現場の要望を吸い上げ使い勝手の良い形を整えた。「納入管理」「ミルシート管理」「仕様書管理」の機能が盛り込まれ、すでに6月から活用を始めた企業がある。今後は受発注管理やコミュニケーションツールの拡充などさらに機能を加える。年内にはバージョンアップの輪郭が見えてくる。 WRにはほかのメタルXシリーズにはない特長がある。QRコードを使った受入れ業務のデジタル化だ。ハンディを使って読み込むだけで受入れが完了する。発注データと納入データ、ミルシートを仕様書がデータ上で自動突合ができる仕組みだ。(本紙2面に続く) |
2025年6月6日 |
中国国内HC市況ついに3200元割れ 輸出価格450j目前の危機 駆け込み効果も消え、需給悪化加速も 中国の鋼材輸出価格がさらに値下がりした。7─8月積みのホットコイル価格はFOB455jとなり、再び下落傾向に入った。大手ミルの国内価格設定の影響が危惧されている。宝鋼は7月積みのブリキを100元値下げしており、今後公表されるホットや厚板など鋼板類の価格が同様の傾向をたどる可能性が高い。輸出価格も連動するため、450j大台割れは避けられないと見られる。 これまでホットの輸出価格は455jから460jで推移してきた。もちろん平均的な価格でこれよりも安値はある。大手を中心とした減産が需給調整に反映されていれば問題はないが、実際鋼材生産は増加傾向にあり市中のムードは悪化している。ミルが値下げに舵を切っているのは、市況下落への対応だ。国内はこれから不需要期に入る。国内市場を優先し、輸出にいっそうドライブをかけるのは必至と言える。各国の通商対策や米国の関税影響で、中国材の向け先はかなり制限されてきた。成約も難航する。この1─2年で中国材の入着が大幅に増加している日本市場は恰好のターゲットであり、輸出価格動向に注視が必要だ。 中国国内市況は続落しており、ホットはついに3200元を下回った。主要品種の流通在庫は減少ペースが鈍ってきた。結局供給とマッチしていないためだ。一部のミルはメンテナンスを実施、生産抑制に動いているという話もあるが、効果は表れていない。不需要期に入ることでミルが政府指導のもとで減産を本格化させるという話はあるが、これまで何度となくうわさは出たものの、実効性が薄いため市中関係者は冷めた見方をしている。米国関税引き上げ前の駆け込みによる下支えがなくなった。需給バランスの悪化が本当の意味で表面化するのはこれから。深刻な局面を迎えている。 |