2025年3月14日
産業・工作機械は省人化需要が増加
金属加工に「門前、市」も
人手不足でワンストップ、複次加工

 (大阪)建築需要の低迷に加えて自動車向け鋼材需要の回復ピッチも上がらないなか、新年度の工作・産業機械需要に期待する声が出てきた。「まだ本格的とはいえないが、これまでと違った手応えが感じられる」(産機向け主力の鋼材流通)という。
 産業機械、工作機械分野は自動車産業への依存度が高く、自動車新工場の建設があれば需要は活況を呈する。しかし、日産自動車の再建スキームづくりが難航しているように、自動車産業は目先、リストラ含み。工場建設で機械需要を刺激するどころではない。ただ、昨年来の人手不足に突き動かされた省人、省工程、省エネルギー、自動化ニーズの高まりは次第に金属加工業界を潤し始め、納入待ちの受注案件が増える要素を呈している。
 身近なところでの事例を挙げれば、鋼板切断、形鋼・鋼管などの立体加工分野は職人の手作り作業からAI搭載の省電力24時間対応可能な設備機械へシフトされつつある。この数年、人手依存から機械による連続加工への傾斜は強まってきているが、昨年来の「2024年問題」や賃金引上げ、円安に伴う外国人労働者の確保難など中小企業の現場の作風が大きく変化している。加工の難易度だけでなく、ワンストップの可否なども問われ、平面加工から3次元加工、同時加といった注文が増えている。
 このため、機械メーカーは「門前、市を成す」かはともかく、納期が来年にまたがる受注も増えてきているという。一品仕様の特注は無論だが、普及機でも「現状は秋以降まで納入待ち」(東大阪)のケースが出ている。
 受注内容も「従来の鋼板平面加工から条鋼の立体加工へのシフト」が進むようだ。従来はユーザー領域だった製函・機械加工が鋼材サプライヤー領域に移行してきており、市場の底辺でテリトリー変化が生じているようだ。
2025年3月13日
輸入鉄骨の増勢に中国の存在
鋼構造物区分でシェア拡大
内需減少のなかで海外勢が浸食

 鉄鋼業界で輸入鉄骨増加が問題視されるなか、中国製鋼構造物の増加が目立ってきている。鉄骨の輸入については明確なHSコードでの分類はなく、おおざっぱな鋼構造物としての区分であり判別しにくい。だが、2020年以降の推移を見る限り、中国からの増量分は鉄骨部材として輸入されていると推測される。24暦年の鋼構造物輸入は75万9千dだった。このうち中国製は62万3千dを占めた。
 HSコードでは鋼構造物と部品という区分になるが、これは橋・橋げた・水門・塔・格子柱・屋根・戸・窓・戸枠・窓枠・戸敷居・シャッター・手すり、足場用枠や支柱用部品を除いたものだ。加工品となっているため、区分が難しくこれだけでは鉄骨やその部材と判別はできない。だが、中国製の比率上昇は着目すべきものがある。20年からの暦年推移を見てみると総量は81万9千d、このうち中国製は64万6千d。当時は日本の内需が今より多かったため、こうした水準となっている。21年は80万9千dのうち59万7千d、22年は74万dのうち56万6千d、23年は81万dのうち62万1千dと推移している。
 今や鉄骨需要が年間400万dに届かないのが当たり前になった。要因は資材高や人材不足などさまざまだが、こうした状況下においても輸入品は変わらず高水準で入着している。ゼネコン、ファブ、商社が個々の事情を抱え輸入に関わっており、恐らく輸入品の増勢に歯止めをかけることは難しいだろう。
 中国だけでなく韓国やそのほかのアジア地域からの流入もある。だが、顕著な動きを示しているのが中国からとなっている。通商問題がこれから流入に拍車をかける可能性は高い。内需が確実に輸入に食われていく。
2025年3月12日
関東鉄源、3契鉄スクラップ輸出入札
米関税影響、1000円高の4万4200円
輸出抑制でトルコ向け減少がプラス要素

 関東鉄源協同組合は11日、3月契約の鉄スクラップ輸出入札を行った。落札したのが1番札のみで4万4226円、前月比1026円高だった。数量は1万5千d。ベトナムかバングラデシュ向けと見られる。
 応札は17件で数量は13万8900dだった。2番札も高水準の値がついたが、2月契約分の船積みが終わっていないことから見送った。3月契約分は下旬から4月初頭にかけて船積みしたいというが、まだ船の予定を抑えられていない。今回値上がりしたのは、主に米国の追加関税影響によるものだという。米国国内では通商措置の効果により鋼材市況が上昇している。このため鉄スクラップを国内で消費させようという意向が強くなった。影響を受けてトルコ向けが減少したという。トルコでは米国スクラップが減ったことであちこち手当てを始めた。それが日本のスクラップの価格を押し上げている。ちなみにトルコ向けは足元でCFR375jだ。前月よりも15─20j上昇した。
 今回の入札結果を受けて浜値もまた上昇するとの見方が強い。足元の浜値は4万円から4万500円で推移している。入札が行われた11日について、東京製鉄は購買価格を据え置いた。同社は2月21日から価格を動かしていない。米国のスクラップ輸出抑制で海外市場は当面強い基調で推移すると見られている。東鉄に限らず、内需低迷で電炉の操業率は低下している。本来であれば値上がりする局面ではないが、米国影響で思わぬほうにスクラップ市場が動きつつある。東鉄の宇都宮の購買価格が上昇すれば、製品市況の支えになるかもしれない。米国の関税についてはさまざまな影響が出ている。スクラップにおいては米国内の製品市況の上昇ピッチが1つの鍵になっていると見られる。
2025年3月11日
中国政府の粗鋼減産方針も市場響かず
3月初旬鋼材価格さらに下落
先物反応は一瞬だけ、内需不振深刻

 中国政府による粗鋼減産方針表明も、鋼材市況の立て直しに寄与しなかった。3月初旬の上海地区市況は一部を除き主要品種で下落となった。ホットコイルは3400元を割った。政府の方針は輸出主要国における通商措置が背景にあるが、減産規模に関する言及はなく、市場関係者は懐疑的な見方をしている。
 方針が明らかになった際に、5千万d規模の減産幅になると観測が流れた。それで先物はいったん上昇したが、憶測の域にとどまったため、すぐに下落したという。現物はほとんど反応なしだった。中国は月平均で900万d前後の輸出を行っている。年換算で1億d規模の輸出は各国の通商措置の影響を受けて行き先を失う。米国の追加関税措置が間接的に影響をもたらす部分も多い。今回米国は中国のう回輸出も封じ込めようと対策を講じている。政府が方針だけでも示さなければならなかった実情がある。5千万dという減産幅の噂は余剰規模を考慮すれば遠からずのものだ。
 だが、市場は正直だ。政府のこれまで示した景気対策をもってしても内需回復の道のりは遠い。粗鋼減産はメーカーや設備再編を念頭においたものだが、宝武を頂点とした国営大手グループの中核設備にどれだけ手を加えられるかが焦点となる。ただ、景気動向を左右する雇用にも影響するだけに設備再編だけでは需給を適正化できる保証はない。
 3月初旬のミル生産は主要品種について930万dとなった。前週比の減少は数万dにとどまる。鉄筋や線材の減産もたいした幅ではない。大手ミルが3月積みで値上げを表明しても市中の反応は鈍く、今回の政府の表明をもってしても市場関係者の期待にはつながらない。それだけ内需不振は深刻だ。政府の具体策の提示が待たれるが、相当のインパクトが重視される。
2025年3月10日
丸一鋼管が全品4月出荷分値上げ
2万円値上げで先陣
コスト高を念頭に追加措置も検討

 丸一鋼管は4月出荷分から同社取扱いの製品全品をトン当たり2万円値上げする。具体的には機械構造用炭素鋼鋼管(STKM)、機械構造用角形鋼管(スモール角、STKMR)、一般構造用鋼管(STK)、配管用炭素鋼鋼管(SGP)、圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)、一般構造用角形鋼管(STKR)、カラー角、鋼管杭、コラム、軽量C形鋼、足場管、農業用鋼管、電線管を含む全めっき製品などが対象。全製品を対象とする値上げ措置は24年1月出荷分以来のこと(電線管は24年7月出荷に追加値上げ)。
 値上げの理由について、同社では深刻化している人手不足の問題をはじめ、物価上昇に伴う従業員の人件費アップ、2024年問題に絡む配送コストの高騰、電気代上昇、副資材費上昇の影響を指摘。同社常務の樺沢賢治営業部長は「昨年より弊社社内で生産体制の見直しや省力化、効率改善に向けさまざまな努力を重ねてきたが、自助努力で吸収できる限界を大きく超えたため」として「引続きお客様のお役に立ついっそうの品質、サービス向上へ誠心誠意努めていく」と説明した。
 足元、国際マーケットの混乱を受けて母材HC市況は混迷の度を強めており、鋼管メーカー各社は有効な一手を示さずにきた。コスト高の時代においても1年以上の様子見が続いていたのもそのためで、今回の一手はマージン確保に向け、母材高騰の到来を待つ前に着手し、横並びを脱する意欲的な取り組みとして位置付けることができる。直近の国内熔協メーカーの動きのなかでも、同社は大胆な投資計画(ステンレス事業向けに総額500億円)などで存在感を高めており、今回の値上げ措置は今後の国内溶接鋼管メーカーの価格政策にも大きな影響を与えるといえる。今後については、状況によってさらなる製品価格の改定を検討していく。
2025年3月7日
NSSC、Ni系3カ月連続値下げ
輸入冷延鋼材に鋭い視線
インドネシア材台頭、中国系強く

 日鉄ステンレス(NSSC)は、3月契約の国内店売り向け冷薄価格をニッケル系でトン5千円値下げした。3カ月連続の値下げとなり、市中の相場も引き続き弱基調が続きそうだ。同社などが問題視している輸入冷延鋼材は、1月にインドネシアからの入着量が1400dとこれまでより大きく増加し「WTOの協定、関係する国内法令に基づいた手続きを進めることを余儀なくされている」(NSSC)としている。
 インドネシアは粗鋼の世界最大手・青山鋼鉄など中国系ミルの原料、鋼材製造拠点があり、近年各国への輸出が非常に増えている。まさに世界のステンレス需給を揺るがす震源地の1つだ。ニッケル系、クロム系ともにアロイリンクに従って5千円値下げし、ベース価格は据え置いた。1、2月のLMEニッケル平均価格はlb6・96jと昨年12月、今年1月の平均からみてわずかに値下がりし、クロム価格も引き下がった。円高も若干進んでいる。需要面はインバウンド効果により業務用厨房機器は堅調で、住設機器の省エネ関連設備も政府の支援継続効果が期待される。
 だが、建材や産機などは需要が限定的。半導体関連も回復の動きは一部で見られるが、先行きに不透明感がある。全体としては盛り上がらず、ステンレス業界では「足元の景況が天井だ。受注が落ちないように粘りたい」(メーカー筋)という声も聞こえる。
 1月の輸入冷延鋼材は前月比で2300d増の2万1700dとなり、過去2番目の高水準だった。NSSCなどメーカーは、国と連携して通商施策の発動に向け、準備を進めている。厚板は5千円の値下げだが、需要は比較的堅調ムードで造船向けが本格化。エネルギー関連も脱炭素関係の新たな設備投資案件の需要が出てきている。
2025年3月6日
薄板3品在庫増加も大台割れ続く
1月末393万d、問屋在庫増影響
値下がりで韓国材増加、黒皮や酸洗

 薄板3品の1月末在庫は393万dで前月比1万9千d増加した。しかし水準的には3カ月連続で400万dを下回った。在庫増の大半は問屋在庫の増加によるものだ。メーカー在庫は159万4千dで5千d増、問屋在庫は84万6千dで1万2千d増、コイルセンター在庫は148万8千dで2千d増加した。
 問屋在庫の増加は熱延鋼板の増加によるもの。対照的に冷延鋼板と表面処理鋼板については前月に比べ減少した。商社の四半期決算明けの反動、熱延輸入の増加などが要因に挙げられる。輸入については韓国からの黒皮・酸洗が前月比増加している。3千円から4千円値下がりしていることから、安値を見込んで手当てしたと見られる。
 メーカー在庫は表面処理鋼板で増加が見られた以外、熱延も冷延も減少。表面処理鋼板の増加について自動車向けは調整できていると思われるが、内需減や輸入材影響を受けているとも見られる。コイルセンター在庫は熱延が9千d増加したものの、冷延や表面処理鋼板の在庫は抑制されている。先行きの需要動向に慎重で仕入れが適正であるためと見られる。
 3品の1月在庫率は、熱延が3・43、冷延が3・29、表面処理鋼板が2・34だった。熱延だけ0・37ポイントの上昇した。関係筋では例年に比べ在庫全体の増加は抑えられている方だという。2月以降は再び減少傾向をたどる公算が大きい。
 ただし、中国材を中心に輸入材動向は注視が必要だ。1月は中国材の流入は減少したが年度替わりであること、統計が公表される2月は日中の交流会が行われたことなど配慮が働いた可能性がある。3品全体の1月輸入は29万dだった。30万d割れは昨年8月以来だ。