2019年8月23日
鉄連、エコリーフPCRを策定
環境負荷など開示促進
画期的取り組み、鉄の環境性能明確に

 日本鉄鋼連盟は、世界的に広まる各種製品などの環境性能開示トレンドに合わせ、産業環境管理協会の環境ラベルプログラム「エコリーフ」に対応する環境負荷算定ルール(PCR)を策定した。13日に産環協から認定を受けた。ステンレスを除く全鉄鋼製品を対象としており、他分野を含めても特定分野のほぼ全製品を対象としたPCRは珍しい事例。今後、鉄鋼メーカー各社のエコリーフ取得に際しては、広範なライフサイクルを考慮したリサイクル効果や、鉄鋼製品の環境負荷などを定量化し、開示が求められる。鉄連は「これから、取得申請は徐々に増えていくだろう」としている。事実上の義務化とも捉えられ、今後の普及が注目される。
 これまでも環境ラベル制作、普及の取り組みは数多く行われてきたが、近年はよりグローバルな規模で、厳正な規定のラベル取得が求められている。環境ラベルのなかでも定量的データ開示のあるタイプVのラベルであるEPDの取得が世界で活発化している。日本ではエコリーフの名称で産環協がEPDを運営しており、エコリーフのラベルにはEPDのことがわかるようになっている。建築物での環境影響評価制度の一部では、EPD取得製品を使った建築物は加点がされるメリットもあるため、建材製品のEPD取得が急速に加速。世界のEPD登録製品の分野では、1129件中62%が建材(8月20日現在)となっている。
 今回策定したPCRは、建設用と非建設用のそれぞれ鉄鋼製品、鉄鋼2次加工製品の4点となっている。EPDの運営を行う機関は世界に複数ある。鉄鋼分野でのEPD取得は、2014年頃からアルセロールミッタル、ポスコ、ティッセンクルップなどがしており、日本では昨年にねじ節鉄筋(東京鉄鋼)のエコリーフ申請が先行して出され、PCRが策定されていた。
2019年8月22日
引き合い低調など向かい風も
棒鋼メーカー、強気姿勢
関東地区受注量7月は15万7000d

 関東地区棒鋼メーカーの鉄筋受注量(明細投入量)が低調で、鉄スクラップ相場は鉄筋市況と比べて低水準なままだが、棒鋼メーカー各社は4―6カ月あると見られる契約残や足元の堅調な出荷状況、2020年度に盛り上がると期待される鉄筋需要予測などを背景に、製品販売維持の姿勢を続けていく。続落した鉄スクラップ相場は足元トン2万6千円付近で推移するなか、鉄筋市況は当面7万円付近で横ばいとなりそうだ。商社筋は「引き合いは確かに停滞しているが、メーカーは契約残もあって焦る状況にはない。収益面でこの2年間苦しんだ反省もあり、販価をきっちり守っていくだろう」と展望。今年度の需要減分が元に戻るとされる来年度の引き合い増を見据え、メーカーの販価政策は来年度まで変わらないと見られている。
 直近7月の関東地区の明細投入量は15万7千d(うちベースサイズ9万3千d、細物サイズ6万4千d)にとどまった。月間平均は17年度約23万d、18年度約20万dあったが、19年度は4月16万7千d、5月13万2千d、6月15万3千dと前年度実績を下回り続けている。普通鋼電炉工業会は今年度の鉄筋需要を前年度実績比4・1%減の750万dと予測するなか、関東地区の鉄筋需要について商社筋は「東京五輪向けなど目立った案件がなくなる分、1割程度減少するのではないか」と話す。これまで低調な引き合いが続けば棒鋼メーカー各社が「腹が減った」として安値で受けるケースもあり得たが「現在は単純に端境期。エアポケットとなって減っているだけで、メーカーは悲観的にはなっていない」(商社筋)という。
 他方、メーカーが製品販価を鉄スクラップ相場と連動させない姿勢を維持しているため「大量明細」発生時期は以前よりも見通しにくくなっている。ゼネコン購買担当者の様子見も続きそうだ。
2019年8月21日
建材薄板メーカー値上げ第4弾出揃う
淀鋼、鋼板・パネル改定
鋼板・建材1万円、パネル・SD10%

 淀川製鋼所は20日、10月出荷分から鋼板商品と建材商品をトン1万円、パネル商品・金属サイディング商品を現行比10%値上げすると発表した。継続的に合理化と生産コスト削減に取り組んできたが、原板調達コストや亜鉛・アルミ・塗料といった副資材、物流費などの各種コスト上昇分の吸収は「自助努力だけでは大変困難」として価格転嫁を進める。安定供給と品質維持のためとして取引先の理解を得ていきたい考え。鋼板製品の価格改定発表は日鉄鋼板、日鉄日新製鋼建材、JFE鋼板に続くもので、主要建材薄板メーカー4社の方向性が出揃った格好だ。
 建材薄板メーカー各社は2016年度から原板調達コストなどの上昇を受けて段階的に販価改善を行ってきており、今夏以降からの価格改定はアナウンス・発表ベースで第4弾となる。ただ、値上げの進展具合や発射台(値上げ前価格)の違いがあるほか、これまでの取り組みにおける一旦の仕切り直しの側面もあるとみられ、改定幅にバラつきが出た。鋼板製品においては、日鉄鋼板と日鉄日新製鋼建材はともに9月出荷分からトン5千円以上値上げし、これまでの販価是正が遅れている一部のひも付き需要家に向けては1万円程度の値上げを実施するとした。両社が7月に行った販価政策に関する発表は、16年度からの累計トン3万円の値上げ完遂に向けた姿勢を表明した昨年12月末以来のこととなる。JFE鋼板は9月出荷分から1万円の値上げを正式に表明。各社、不需要期前の新価格浸透を図る。
 非住宅向け外装材として使用されるパネル商品や住宅向け金属サイディング商品の上げ幅は、日鉄鋼板は8月出荷分から現行比7%程度、日鉄日新製鋼建材は9月出荷分から金属サイディング製品を現行比10%程度。需要が堅調に推移するなか、断熱材などのコスト上昇分の転嫁を進めていく。
2019年8月20日
東京製鉄、9月販価全品種据置き
実行への注目度依然高く
原料はじめ海外要因は複雑化

 東京製鉄は19日、9月販価について全品種据え置きと発表した。今回の据え置きについて「夏季休暇をはさみ市中の商いが低調であること、需要環境においても大きな変化がない」ことなどを理由として挙げている。ただし、今村清志常務取締役は「形鋼類については7月から徐々に動きが回復しつつあり、薄板類について在庫水準は依然高いものの、メーカーが輸出ドライブをかけ、ひも付き交渉結果が出れば市況持ち直しの可能性はある」とし、秋口以降のマーケットの好転に期待を見せた。
 8月の生産計画についてはトータル21万dを見込み、内訳はH形鋼9万d、ホットコイル9万d(うち輸出3万d)、厚板1万5千dなどとなっている。物件・在庫販売価格についてはH形鋼8万5千円、丸棒6万4千円、厚板7万9千円とした。
 今回の据え置きはマーケットでも織り込み済みだが、流通の注目は実行価格動向と、生産量についてだ。実行は個別のため一律ではない模様だが、鉄スクラップ価格が底を打ったことと、主原料以外のコストが高止まりしていることなどから、どのような方向性を打ち出してくるのか、流通関係者は見極めようとしている。8月の生産計画は7月のそれよりも1万d上回っており、ホットコイル生産については前月の計画を2万5千d上回っている。今村常務は「トータル生産の21万dと、ホットコイルの9万dは当社として決して高いと言える水準ではない」とコメントしているが、例年並みの平均値に並ぶ計画を立てているということは、それなりの受注規模を見込んだものと見られる。鉄鉱石など主原料スポット価格の値下がりと為替の円高基調は輸入鋼材には有利に働く。常に輸入鋼材との価格バランスを意識する同社がこの局面にどう対応していくのか注目される。(本紙2面に関連記事
2019年8月19日
鉄鉱石スポット90j付近まで急落
中国ミルの増産、輸出リスク
日本マーケットのマイナス要素に

 中国ミルの増産継続に追い風が吹いている。直近の鉄鉱石スポット価格が90j付近まで下落したのである。一時は120jまで高騰した鉄鉱石価格だが、このところ連続下げが目立つ。リオティントの減産やヴァーレの鉱山ダム事故影響などにより総体的には需給の基調は引き締まっているはずだが、これまでの価格上昇が急激だったためか、ここへきて反動が出ているようだ。100jの大台を割り込むのはおよそひと月半振りのことだ。中国では7月から唐山地区の減産規制が緩和されており、新設備の稼働などで同月の中国全体の粗鋼生産は8500万d強となり31カ月連続で増加となっている。原料コスト事情により、増産リスクは高まっていたが鉄鉱石スポット価格がピークよりも30jも値下がりしたとなると前提条件は変わってくる。国内の鋼材需給バランスが崩れている中で、ミルの輸出方針にも影響をもたらす可能性があり、今後の鉄鉱石価格動向は業界内で注視されるだろう。
 中国国内では米中貿易摩擦や自然災害の影響など複数要因により鋼板類を中心にして鋼材市況の値下がり傾向が目立つ。政府主導のインフラ需要活性化により条鋼類に関しては、まだ値上がり基調を保っていたが、8月に入ると共に少しずつ値下がりし出している。ビレットについても同様だ。国内市中在庫の増勢も収まらず、いつ輸出に舵を切っても不思議ではない状態だ。こうした局面で主原料価格に下落基調が表れることは、中国ミルの採算概念を薄れさせ、数量至上主義に突っ走らせるきっかけとなってしまう。輸出価格についてはホットコイルFOB510─520j付近でオファー価格は横ばい模様が続いていたが、再び500jを割り込むようなことがあれば、国際マーケットにダメージを与えることになる。対日向けについても、為替効果と相まって日本市場にマイナス影響のリスクが高まると見られる。
2019年8月16日
関東鉄源、8契輸出入札で5商社が辞退
日韓関係悪化じわり影響
落札単価は2万7714円で横ばいに

 鉄スクラップの世界に日韓関係悪化という政治情勢が影響をもたらし始めている。9日に行われた関東鉄源協同組合の8月契約入札において、5商社が辞退したのだが、韓国向けの輸出に障害が出始めたことが1つの要素となっていると関係筋は指摘する。
 韓国側は日本産スクラップの放射能検査を強化しており、実質的に通関手続きを遅らせるように仕向けているという。過去数年で見て、日本産スクラップから放射能が検知されたのは1度あるかないかで、検査を強化したところで放射能が検出される可能性は限りなくゼロに近いという。韓国には年間400万d規模の鉄スクラップが日本から輸出されている。これが滞るとなると、日本の業者にとっても痛手だが、それ以上に韓国鉄鋼メーカーへのダメージが大きい。だが厄介な政治事情が背景にある以上、鉄スクラップ業者や商社も扱いにくくなる。今回の関東鉄源入札にこの影響が出始めたことは今後の対韓向け輸出の動向がいかに不透明化を裏付けるものとなったのだ。
 日本産の分をロシアやアメリカに振り替えることは可能だ。だがそれは取引上韓国にとっては不利なものになりかねないし、デリバリーについても時間がかかり柔軟性を失うものとなるのは必至だ。韓国鉄鋼メーカーからは日韓貿易における支障を政府に訴えてはいるものの、すっかり冷え込んでしまった。業界筋では文政権が続く以上かなり見通しが厳しいと見る向きもあるようだ。
 関東鉄源の入札結果は落札数量は2万5千d、落札平均単価は2万7714円になった。前回に比べ346円安となったが、円高効果などもあり実質的にはほぼ横ばいと言える。1番札は2万7810円で1万5千d、2番札は2万7570円で1万d。全量ベトナム行きだった。
2019年8月9日
下村特殊精工、大同興業と2次加工拠点
タイの現地需要捕捉
機能材料シフトの潮流に適応

 大同特殊鋼グループの磨棒鋼メーカー・下村特殊精工(千葉県市川市、安田保馬社長)と大同興業(東京都港区、堀江均社長)は、特殊鋼の冷間引抜き棒鋼を主力とするダイドーシモムラスチールマニュファクチャリング(タイ)を設立した。下村特殊精工はマレーシアと中国に生産拠点を持つが、プラスをもたらす第三極として海外事業の一層の強化につながりそうだ。タイはASEANの中でも堅調な棒線需要があるといわれ、今後の伸長が期待される。総投資額は11億円となっている。
 工場の稼働開始は2021年4月を見込み、月産能力は1千d。荷役・保管といった倉庫事業も展開する。株主構成は下村特殊精工51%、大同興業46%、大同興業のタイ現地法人3%。大同特殊鋼グループでは、20年度中期指針として、機能性に優れた素材ニーズに応えるため、構造材料から細やかな機能材料へと製品シフトを図る「製品ポートフォリオ改革」を目指している。タイでは、トヨタ自動車はじめ日産自動車や本田技研工業の生産拠点もあるなど日系自動車メーカーが存在感を持つ。新会社は事業インフラの整ったタイと、自動車関連向け高機能材需要の堅調推移が期待されるASEANでサプライチェーンの一部を担う。
 大同興業は大同特殊鋼グループ製品の流通販売をメーンとしており、アジアの広域で販売、事業展開実績がある。ダイドースチール(タイ)の敷地内に加工事業拠点を構え、グループの物流機能強化、資産有効活用も兼ねる。新拠点での受注は現地ニーズの捕捉を第一とし、着実に案件を捕捉していく。顧客からの要望があれば、下村特殊精工の国内工場で生産している注文も移管を考える。自動車のEV化、自動化が着実に進行していく局面で、部品の小型化や軽量化、電子化も進んでおり、このトレンドに適応する。