2020年7月6日
一部関東地区メーカーは3カ月分
6月鉄筋受注量が急増
販価値上げを受け流通が動く

 棒鋼メーカー各社が値上げに踏み切った6月、関東地区棒鋼メーカーの受注量は2カ月分の40万d近くにまで急増したもようだ。一部棒鋼メーカーは3カ月分の受注があったという。その多くは流通がタイミングを見計らいメーカーにつないでいなかった明細だが、ゼネコンが先々の分を手配する動きもあった。「鉄筋コンクリート造の建築着工数字の波と引き合いや出荷量の波がそろわず、どこに需要が消えたのだろうと思っていたが、実際は流通が明細を隠し持っていたということだ」とメーカー筋は話す。他方、5月末から6月にかけて出てきた大量明細で「机の引き出しにしまわれていた案件はほぼ出尽くした」(流通筋)ことや、鉄スクラップ相場が足元急落していることから、7月以降は商いが低調となるのは必至だ。
 棒鋼メーカー各社は製品販価をトン3千円程度引き上げた。高騰する鉄スクラップ相場などへ対応したものだが、この動きに流通・ゼネコンが反応。関東地区の明細投入量が倍増した。その後、鉄スクラップ相場は下落基調に転じ、6月半ばにトン2万6500円を付けた東京製鉄・宇都宮工場の鉄スクラップ購入価格(特級)は5千円下がり、足元2万1500円。鉄筋市況への先高観は一転し、先安観が強まる。ゼネコンは必要な手配をすでに終えており、再び鉄筋の手配を控えるモードに切り替わる。
 メーカーの契約残は大きく膨らんだ。このため「ある程度の期間、強気の販価姿勢を継続できる」(流通筋)と予想され、鉄筋市況はすぐには下がっていかないと見られている。製品販価の追加値上げを狙ったメーカー各社にとって足元の鉄スクラップ相場の下落局面は誤算だが、第1弾の値上げはほぼ実行できたもよう。鉄スクラップ相場がこのまま下がれば、結果的にメタルスプレッドが広がり、収益改善につながる可能性がある。
2020年7月3日
薄板3品在庫、流通在庫急増
自動車分野の影響色濃く
カーメーカー復調温度差の懸念

 薄板3品の5月末在庫がまとまった。446万dで対前月比10万5千d増となった。例年この時期は大型連休による稼働日数減により10万d近く積みあがるため数値だけ見れば例年通りの動きと言える。特徴的なのが問屋とコイルセンター在庫の積み上がりの幅だ。あわせて5万8千dの積み上がりとなっている。メーカー在庫が4万7千d増にとどまっているのに対し、これは明らかに多い。この要因と言えるのが自動車メーカーや部品メーカーのライン休止である。新型コロナウイルス影響で大手自動車メーカーの製造ラインが休止となり、部品メーカーのラインもこれときっちり連動するわけではないが休止になり生産調整が行われた結果だ。特にコイルセンター在庫は昨年7月以来の150万d台乗せであり、急増ぶりが目立っている。
 次月の在庫でも業界では高止まりが懸念されている。そもそも自動車メーカーの生産動向に左右されるため、問屋やコイルセンター在庫が例年通りの動きをするとは考えにくい。3品全体の在庫推移は、例年では5月から6月にかけて4万d程度の減少となるわけだが、自動車メーカーによって生産回復の度合いはかなり違いがあり、トヨタ自動車の生産が急回復したとしても全体の流れを牽引するまでには至らないだろう。コイルセンターの間では、取引先の部品メーカーの信用不安を懸念する向きも強くなっており、低操業と在庫負担増による採算悪化の他、与信リスクも加わり経営面での影響が出ることは回避できそうにない。
 4月の3品の全国生産は110万6千dで対前月比12万d減。対前年同月比74万d減だった。高炉はバンキングにより上工程から大幅減産を行っており、メーカー在庫増は昨年以下に収まっている。仕入れをいくら抑えようとも、出庫が絶不調とあっては流通も手の打ちようがない。
2020年7月2日
東海地区、全国いの一番で復活
トヨタ膝元の強さ発揮
地元企業やホテルの案件目白押し

 (名古屋)日本全国の中で、トヨタ自動車の膝元である東海地区が最も早い需要復活を遂げそうだ。強力な下支えとなるのがトヨタ自動車の急速な復調だ。同社は9月に国内生産の日当たり1万2千台乗せを目標としており、10月からはさらに上積みし1万3千台から1万4千台までの回復を目指している。5月の国内販売は前年比33・4%減でコロナ影響は拭えないが、新型車のヤリスは目標値を超え1万台を達成しており、同社は一層強気の構えを見せている。また、販売チャンネルを今年5月から統合し、ディーラーの全店舗が全車種を扱うようになったことで、店舗や車検場のリニューアル需要が今後相次ぐという。まさにトヨタ効果で条鋼から鋼板類まで鋼材需要を復活させる下地が整ったと言える。トヨタ以外にも地元を本拠地とする企業の社屋建て替えや老舗ホテルリニューアルなど建設分野では秋以降、具体化する動きが出るとみて流通関係者は大きな期待を持っている。
 中国のコロナ感染で製造業のサプライチェーンが滞り、国内回帰の動きが散見されることも流通関係者の期待感を膨らませている。国内回帰は大々的に起こるものではないが、国内の製造ラインが休止に追い込まれないようにするには、組立メーカーも部品メーカーもある一定の国内調達を保持する必要があり、これが流通の仕事にじわじわと反映されるようになっているのだ。
 ただ、足元の鋼材流通マーケットは依然として低迷中で、月次の販売が平常時の3─4割ダウンというケースも珍しくはない。6月から動きが出てきたがまだ一息つける状態でないと多くの関係者が話している。トヨタ中心の需要復活を流通は全面的に信用しているわけではない。だが、具体的な案件が出ているだけに期待感は強く、マーケットの空気が変わってきているのが現状だ。
2020年7月1日
東京デーバー・東北デーバーが追加値上げ
棒鋼製品2000円(7月)
逆風下も「再生産可能な水準」訴え

 東京デーバー販売と東北デーバー・スチールは7月、棒鋼製品販価トン2千円の値上げを実施する。6月からの累計上げ幅5千円を目指す。
 一時8千円近く急騰した鉄スクラップ相場は足元落ち着き、鉄筋市況上昇ムードは沈静化し始める。こうしたなかで追加値上げに踏み切るのは、鉄スクラップ相場は直近ボトムからは5千円近く高いレベルにあり「収益面ではかなりギリギリ」(東京デーバー)と危険水域に陥っているため。世界的な新型コロナウイルス感染の流行による影響も織り込む。中国やインドへの依存度が高い耐火物や副資材の調達コストは今後、高騰する可能性がある。主原料に加えて、各種生産コスト上昇分や調達リスクに対応した適正価格の浸透を図る。
 一部スーパーゼネコン向けで陥没していた販価の値戻しを進める狙いもある。東北デーバーは「棒鋼メーカーとして高品質な製品を生産・安定供給していくためにも、棒鋼販売価格を再生産可能な価格水準にさせてもらいたい」と訴え、一部で落ち込んだ販価是正を急ぐ。鉄スクラップ相場が上昇局面にないことから販価改善には困難が予想されるが「お客様へ丁寧に説明していきながら取り組んでいきたい」と理解を求めていく。
 中国の鉄スクラップ輸入再開に向けて備えておく必要もある。状況によっては海外市場にひきずられ、国内鉄スクラップ相場が再び急騰する可能性がある。鉄筋市況がキロ5円(トン5千円)刻みで変動しやすいという業界特有の「5の法則」も念頭にあり、関東地区棒鋼メーカーとして最低でも販価6万5千円まで引き上げたい意向がある。鉄筋は年間を通じても市況改善ムードは出てきにくく、市況改善の余勢が残るうちに少しでも販価・市況の改善を進めておきたい考えもありそうだ。
2020年6月30日
関西地区H形鋼市況を再構築へ
製販8万円形成が目標
先行き需要減といえどもマージン必須

 (大阪)関西の在庫量販店がH形鋼販価の是正に動き出した。吉田鋼業は1日からH形鋼販価を5千円引き上げるが、陥没している店売り市況を8万円に戻すよう取引先に訴え始めた。「昨年後半からH形鋼市況は失速したが、それまで3年半にわたって8万円の相場を維持してきた品種が満足にマージンを取れないようでは話にならない。われわれ流通も高炉メーカーもマージンがとれず赤字を出しているようでは、H形鋼特約店の明日はない」(吉田清社長)と陣頭に立って檄を飛ばす。「先行きの需要はしばらく厳しいし、放っておけば市況が上昇するわけでもない。ここは製販が努力を傾けて、製販の採算ラインである8万円を目指すべき」という。
 スクラップ価格の6月急騰を背景に、電炉H形ミル各社は7契5千円値上げを打ち出した。それ自体、スクラップ価格値下がりにつれての市況後退だったが、その間、市中実勢はミルネットとの値差が少なく流通マージンを稼げない状態に追いやられた。昨年秋からの別船価格も市況の足を引っ張り、一方、高炉は製鉄所設備再編・減損計上で販売政策を緻密化できない状態が続いた。そうした結果、H形鋼の物件価格は7万5千円を持ちこたえられず、7万円割れの危機に立ち至った。7契建値の値上げで注目されたのが東鉄の物件受注姿勢で、ここで後退を続けた物件価格に大きなカンヌキが入った。7万8千円の物件価格は、店売り市況8万円に対応するもので、7契値戻しはH形鋼の立ち姿を「原点」に戻すものという。
 関西地区では阪和興業、ダイサン、山大興業、吉田鋼業、清和鋼業、小野建などのH形鋼の倉が大きく、これに加工能力を併せた販売力が市場を塗り替えてきた。「コロナに負けてマージンも取れないようでは、コロナどころか4日ももたない」と吉田社長は決意を述べた。
2020年6月29日
流通3団体、経産省ヒア2Q見通し
新型コロナ影響顕著
各団体とも経験値にない低迷

 全国鉄鋼販売業連合会、全国コイルセンター工業組合、全国厚板シヤリング工業組合の第2四半期見通しについて経済産業省ヒアリングが23日(全国CC)、26日(全鉄連、全国厚板シヤ)に行われた。今回、各団体とも共通しているのが第1四半期での需要落ち込みと第2四半期需要見通しの厳しさだった。特に自動車影響の大きい全国CCは組合員企業の収益性の悪化に対する強い危機感がうかがえる。
 全鉄連は会員企業の主要分野が建設分野ということで新型コロナウイルス影響は他の2団体に比べれば小さかったが、それでも第2四半期での需要見通しは前年を大幅に下回ると厳しい見解を示している。8月末の在庫見通しは226万5千dで5月見通し時とほぼ変わりはない。仕入れを抑えているにもかかわらず、販売不振で在庫率は悪化しているという。5月の販売量は過去に経験したことのない数値になっている。14万5千dで前年同月比18・4%の大幅減少となった。中小ファブの山積みは低く、中小案件は景気悪化により一部で中止や延期が見られるとのことだ。
 全国CCは第2四半期の出荷量を前年同期比3割近く減少するとの見通しを示しており、組合員のほとんどが実質赤字経営を強いられていることへの強い危機感を滲ませている。第1四半期の出荷量は306万d、第2四半期見通しは301万dだった。同組合では自動車をはじめ製造業分野ではコロナ前の活動水準に回復することは考えにくいとしており、低迷したままの需要をもとに事業構造改革に取り組むことは待ったなしとの、極めて切迫した見解を示している。前回のヒアリング時よりも更に組合員企業の置かれた状況が悪化していることをうかがわせる。
 全国厚板シヤも第2四半期の平均月間出荷量をこの数年で(本紙2面に続く
2020年6月26日
王子製鉄、店売り7月契約値上げ
平・角鋼全製品で5000円
原料コストと、減産固定費上昇苦しく

 王子製鉄は店売り向けの7月契約の販価を、平鋼・角鋼ともに値上げする。値上げ幅はともに5千円。平鋼は小形平鋼及び厚さ3_サイズを含む全製品、角鋼は小形角鋼を含む全製品が対象となる。
 今回の値上げ背景は主原料の鉄スクラップの値上がりだけでなく、減産によるコストアップ、資材コストの高止まりなども挙げられる。特に減産に関しては、同社が月間600サイズロールを継続するなかでワンサイズロットの減少による、固定費上昇が非常に重く響いているという。こうした状況から7月契での値上げだけでコストアップを補えるものではないため、同社としては8月契約についても更なる値上げの必要性があるとして、取引先に理解を求めていくとしている。東京製鉄が7月契約で最大5千円幅の値上げを実施したが、他の電炉メーカーも相次ぎ値上げに動き出している。先日は大阪製鉄が5千円上げを公表したばかりだ。足元こそ落ち着いたものの急激な鉄スクラップ価格上昇はメーカーを追い立てている。
 平鋼トップメーカーの王子製鉄が5千円幅の値上げに踏み切ったことで、市中相場に与えるインパクトは大きいと見られる。値下り基調にあった市況を食い止め陥没価格是正に効くと流通関係者は期待している。ただ平鋼に関しては他品種に比べ値下がりがセーブされており、底値が見えたという感覚ではない。6月になって荷動きの停滞感は一層強くなっており、主力流通としても一気に価格転嫁に動けるほど現状は易しくない。ひとまず陥没是正を進め、その後段階を踏んで転嫁に動くだろう。メーカー値上げが下支えになるのは間違いない。今回の平鋼に限らず、電炉の値上げはあくまで供給側の事情であり、市中実態とは乖離している。市況の基調は整うが、転嫁に取り組む流通には非常に重い負担がかかることになるのだ。