2020年10月1日
アイ・テック、全拠点で一斉値上げ
建材全品種で5000円(10月から)
H形8万円、コラム11万円実現目指す

 アイ・テックは10月からH形鋼・一般形鋼など建材品種全品について、5千円の値上げを行う。高炉や電炉メーカーが7月契約で値上げした分の転嫁に取り組み、早急にマーケットへの反映を目指す。同社では全拠点で一斉に値上げに着手する。大畑大輔社長は「メーカーの値上げが相次ぐなかで、市中価格への反映がなかなか進まない状況にある。このままでは流通業界だけでなく、鉄鋼業界の地盤沈下にもつながりかねない危機的事態につながる」と話し、価格転嫁への取り組みを徹底させる姿勢を示した。
 同社が全拠点での一斉値上げ取り組みを表明するのは今回が初めてのこと。流通がメーカー値上げを転嫁するのに実需面での後押しは望めず、苦境に置かれているなかで、同社としてはこの現状に強い危機意識を持っている。これは大畑社長の言葉にも表れている。大畑社長は「コロナ禍で起きているパラダイムシフトをしっかりと見極め、過去からの販売経験の踏襲で数量を追うのではなく、適正なスプレッドを確保する営業スタイルに変化していかなければならない」とし、膠着状態から脱却しきれずにいる流通の現状に苦言を呈した。
 大畑社長はH形鋼で8万円、ロールコラムで11万円水準を最低でも実現していきたいと話す。今回の値上げは足掛かりに過ぎず、さらなる価格改善が必要だと強調する。足元の需要環境は厳しいものの、市中在庫は歴史的な低水準となっており、需給ミートする状況にさしかかっている。同社としてはこのタイミングを最大限に生かしたいととらえている。原料を含めた諸コスト上昇により、高炉も電炉も値上げを推し進めるしか手はなく、流通に逃げ場はない。今回のアイ・テックのように大手流通の毅然とした態度で挑むことが、流通業界を後押しすることにつながるだろう。
2020年9月30日
JFEスチールのESG課題対応
完全クロメートフリー実現
溶融亜鉛めっき鋼板をエコに

 JFEスチールは29日、環境負荷物質の6価クロムを使用するクロメート処理の製造を終え、溶融亜鉛めっき鋼板・全品種の完全クロメートフリー化を実現したと発表した。今後はクロメートフリー商品だけを製造していく。
 これまでGI鋼板「JFEガルバジンク」やGA鋼板「JFEガルバジンクアロイ」の製造過程ではクロメート処理を施してきたが、6価クロムを用いずにクロメート鋼板と同等以上の性能を持つ鋼板製造技術を確立させ、量産体制を整えた。判断にはユーザーからの高い評価も後押しした。JFEグループでは気候変動などESG課題の解決を大きなテーマとしており、今回の「溶融亜鉛めっき鋼板の完全クロメートフリー化」はその取り組み成果の1つとなる。
 6価クロムは腐食の主要因となる成形加工部の白錆発生を抑制でき、鋼板へのクロメート処理は耐食性向上を目的としたもの。主に建材分野や電機分野でクロメート処理鋼板が用いられているが、電機分野では欧州での環境規制を契機に1990年代からクロメートフリー化が進展してきた。こうした潮流を受け、JFEスチールではクロメートフリー商品につながる有機系皮膜「JC」と無機系皮膜「JM」を開発。電機分野では2000年代にクロメートフリー化を完了させていた。
 他方、厳しい条件下に晒される建材分野では、GI鋼板とGA鋼板の一部でクロメート鋼板の製造を続けてきた。国内で規制がなかったことなどが背景にある。そこでJFEスチールは、腐食因子に対して高いバリア性を持つ「eNano」技術を活用し、16年に無機系皮膜「JB」を開発。以来、環境負荷低減ニーズと高い品質ニーズに応えられる体制づくりを進めてきたが、ようやくこのほどユーザーとの最終調整がついた格好だ。
2020年9月29日
阪和、薄板3品在庫販売値上げ
10月1日から3000円
需給タイト踏まえ、採算回復目指す

 阪和興業は、10月1日から薄板3品(熱延・冷延・表面処理鋼板)の在庫販売価格を3千円値上げする。急激に需給がタイト化したことから、これまでに下落した市中価格の値戻しを行い採算回復させることが狙い。すでに取引先に申し入れを行っている。
 薄板3品の7月末在庫は391万dで3年ぶりに400万dの大台を切っており、足元でも市中在庫のタイト化は進んでいる。需給の引き締まりは高炉のバンキングなどの減産効果によるもので、自動車需要の回復を踏まえ、下期は一段と引き締まってくる公算は大きい。また高炉が10月から店売り向けの値上げ表明も行っていることなどからマーケットは大きな潮目の変化を迎えている。こうした状況を背景にして、同社は全社ベースでメーカー値上げの転嫁を急ぐ。市中への浸透状況を見ながら更なる値上げの実施も視野に入れている。
 コイルセンターの稼働は4─6月を底に回復基調にある。まだ新型コロナ以前のレベルにはほど遠いが、もともと仕入れを抑制していたことと相まって急速にコイルセンター在庫も圧縮されている。7月から流通から同社への引き合いが少しずつ増加し始めたというが、仕入れを極端に締めた結果、歯抜けが出たためである。輸入鋼材の減少もタイト化の一因となっている。中国市場の需給に起因し、アジア薄板市況は上昇しており、対日向けの供給圧力は軽減されている。ちなみに7月の3品通関実績は、前月の22万dを下回る18万dとなった。高炉値上げの転嫁にコイルセンター業者は本腰を入れようとしているが、価格の浸透には在庫商社のけん引は不可欠である。そのため阪和が値上げ姿勢を明確にする意義は大きい。
 これにはコイルセンターにとって価格転嫁のハードルが非常(本紙2面に続く
2020年9月28日
日本製鉄ひも付向け厚板値上げ
値上げ幅は5000円以上
輸出向けも実施、覚悟示す

 日本製鉄は、ひも付き向けの厚板の下期値上げを申し入れし始めた模様だ。値上げ幅は5千円以上になると見られる。値上げは国内向けにとどまらず、輸出でも行うと見られる。アジア市場の厚板やホットコイルの上伸を踏まえたものだ。同社は需要家に対し再生産可能な適正価格是正を要請し取り組み続けてきた経緯があるが、今回は主原料価格が大幅に上昇しており、なおかつ物流費なども高位にとどまり採算的に一段と厳しい状況に追い込まれていることから、今回の対応に踏み切ったようだ。同社ではすでに店売り・鉄骨橋梁向けの値上げを表明しているが、ひも付きも含め厚板全分において、価格改善への徹底した姿勢がうかがえるものになっている。
 厚板の需要家向け価格改定は、日鉄だけでなくメーカーにとって生易しいものではない。建産機分野は新型コロナ禍影響から脱却し始めているが、主力の造船分野は手持ち工事が2年を割り込み造船メーカーの懐事情は厳しい。だが、ここへきて需給バランスに変化が生じており、これが日鉄のひも付き値上げへの取り組みを後押しする要因になっている。国内の厚板在庫は大幅に圧縮され、需要減もミニマムな状態になっており、瞬間的に不足サイズも出始めている。これは建築分野で20年度はじめから在庫調整の流れが顕著なことが1つの要因として挙げられる。首都圏の再開発案件の端境期に直面していたことが背景にある。もう1つの要因は米中貿易摩擦悪化で建産機需要の低下と同分野での在庫圧縮の進展だ。コロナ以前から需要家の急激な生産調整が始まっていたことが功を奏した。
 日鉄では名古屋製鉄所厚板工場休止の決定など抜本的な経営改革を実施。今回の製品価格是正に取り組んでおり相当な覚悟が感じられる。それだけにひも付き値上げへの取り組みは業界にも大きなインパクトにつながる。
2020年9月25日
関西地区鉄筋市況いよいよ浮揚
6万3000─5000円攻防
適寸対応タイト化も背景に唱え上げ

 (大阪)関西小棒各社の10契値上げ、全国的なスクラップ高を背景に商社・問屋筋の鉄筋丸棒の売腰が引き締まってきた。市中実勢は異形ベース6万1千円を固め、6万2千─6万3千円の揉み合いになってきた。「先週から潮目が変わり、現状(24日現在)6万2千円の引き合いもメーカーにつなげないので断っている」(問屋筋)と言う。来週から10月にかけて異形ベース6万3千円が実勢化しそうだ。
 共英製鋼をはじめ関西小棒各社は10契販価を実行ベースで3千円値上げする方針を打ち出し、中山鋼業などベースミルの値上げ姿勢が出揃った。10月以降の中小建築物件の発注に増加の勢いはないが、地場ベースミルの岸和田製鋼が10月末まで圧延ラインを工事休止している影響も見られる。同社の直送デリバリーのサイズ・長さが荷揃えしにくく、中山鋼業にもタイト感が波及している。また、阪和興業が新規受注を止めていることも地場物件の流れに影響し、問屋筋の中小口引き合いへの対応を引き締めている。
 関西小棒各社はスクラップ価格の炉前現勢2万7千円を踏まえスプレッド3万8千円を確保する姿勢であり、現状ベース6万3千円の商談にも応じない。ゼネコン筋も6万3千円まで購買単価を引上げているが、商社・問屋は鉄筋ミルにつなげず留保。6万3千─6万5千円をどう整理するか、月内はスクラップ動向を見極めながら思案に明け暮れる様子だ。
 流通サイドとしては既契約が逆ザヤ化するなか、鉄筋メーカー主導の局面のなかで唱え上がるほかなく、主力商社も「リスクは犯せない」という。目先、スクラップ情勢から目を離せないが、10月一杯は関西小棒各社に腰折れの気配はなく、ベース6万5千円が実勢化する機運だ。形鋼市況に先行する鉄筋の秋相場リードに注目が集まる。
2020年9月24日
流通団体第3Q経産省ヒアリング
建築需要先行き不安
全鉄連、全国CCが厳しい見解

 経済産業省は23日、全国鉄鋼販売業連合会、全国コイルセンター工業組合と第3四半期見通しについてヒアリングを行った。全国厚板シヤリング工業組合は24日に行う予定。今回の2団体のヒアリングで浮き彫りになったのが、建築関連需要の先行きに対する見方の厳しさだ。
 特に全鉄連は会員企業が同分野を主対象としているため、危機感が非常に強い。土木分野に関しては多少の回復ありとみているものの、建築分野は中小物件の工事遅れや計画見直しで需要減を危惧する見解を示している。阪上正章全鉄連会長は来年施工案件でゼネコンの受注競争が激化していること、大手ファブにおいては来年施工工程にまだ空きがあることから、鉄骨受注単価の値下がりが顕著になっている厳しい実情を訴えている。「秋需の期待感もなく全く先が見えない」という悲痛な声が会員企業から挙がっている。メーカーの値上げにより再販価格上昇の局面にはあるものの、流通の扱い数量に与える効果は、ほぼないということになる。
 全国コイルセンター工業組合は第3四半期の出荷は323万dで第2四半期比で約20万d増加すると見ているが、これでも前年同期の8割相当のレベルでしかない。新型コロナウイルスの影響は第2四半期が底となったが、以降の回復がコロナ以前のレベルまで届くかどうか懐疑的な見方を示している。新たな生活様式が定着していくことで、比較的堅調だった建築需要は縮小するという予測も出している。店舗や工場向け、宿泊施設などの投資見直しあるいは停止がどのようなインパクトをもたらすのか注視するとしている。同分野について物流倉庫の好調さは継続すると見ている。薄板3品在庫が3年ぶりに400万dを切りタイト化したが、高炉減産と輸入減によるところが大きいとした。
2020年9月23日
JFEスチール、建材全品種値上げ
新規契約から5000円
聖域なき改定のインパクト

 JFEスチールは、土木・建築品種すべてで新規契約分から5千円値上げする。対象となる品種は鋼管杭、鋼矢板、厚板、外法H形鋼、ロールコラム、H形鋼。足元、鉄鉱石価格が高止まりしているが、原料炭価格も上昇に転じていることから、今後の動向次第では追加値上げの可能性もあるとしている。同社ではすでに先行してH形鋼の値上げを同幅で行っており、早期完遂を目指している。
 今回の値上げは鉄鉱石価格の上昇による影響が大きいが、もともと物流費や資材費など諸コストが高止まりしているなかで主原料コスト負担が増加したことにより、同社としてもこれらを自助努力だけで吸収していくことは非常に困難な状況にあるとしている。今後の安定的な供給体制を維持するためには適正マージン確保は不可欠であり、この値上げについて不退転の意思で取り組む構えを見せている。
 同社が建材主力品種全てに、物件・店売りにかかわらず値上げを打ち出すことの意義は大きい。業界的にみれば、これらの品種でメーカーは値上げに舵を切る傾向にはあるものの、よりウエートの大きい物件対応も含めた部分で値上げを表明することはゼネコン業界に対して強いインパクトを与えることになるからだ。需要の端境期に直面しゼネコン業界では受注合戦に突入することもいとわない傾向も見受けられ、このままいけばファブやメーカー、流通に至るまで痛手が避けられなくなる。鉄骨単価の下落がその象徴といえる現象で、素材を含めた諸コスト上昇に逆行したことが起きている。この歪みの構図を是正するには、メーカーがきちんと声を上げることが効果的。下期は製造業向けの需要の回復により、高炉供給はタイト化する。コロナ禍で需給と価格の感覚が麻痺した需要業界には頭の切り替えが必要だ。