2024年6月17日
形鋼市況形成、いよいよ転換期に
アイ・テック5000円浸透を徹底
相次ぐ大手の表明が萎えたマインドに喝

 H形鋼やコラムを中心とする形鋼市況形成が、大きな転機を迎えている。在庫商社や大手流通が輸送費や労務費などの「流通コスト」の完全な転嫁に本腰をいれたためだ。先日は阪和興業が、全社レベルの流通コスト5千円浸透に向けて強いメッセージを発信した。そして今度は、アイ・テックが「消耗戦を続ける猶予はない、負のスパイラルから脱却すべき」と声を上げ、転嫁の徹底を表明した。独立系流通の雄である同社の取り組みインパクトは大きい。
 アイ・テックは、メーカー業界がコスト上昇要因を踏まえ製品値上げする一方で、サプライチェーンの下流に位置する流通は転嫁がままならず収益が悪化していることに言及。鋼材流通業界を健全なものにしていくためにも、流通コストの完全転嫁しかないとコメントしている。同社は3月の受注分からロールコラムについて、メーカー値上げ分と流通コストをあわせ1万5千円の値上げを打ち出したのを皮切りに建材品種の値上げに取り組んでいる。
 全国的に形鋼類における流通コスト分の転嫁は、2千円から3千円の浸透が確認できる。だが、それでは流通の実質赤字は解消されない。阪和興業やアイ・テックが言及する5千円の値上げ幅は、流通各社が絶対に勝ち取らねばならない、ぎりぎりの妥協ラインといえるのだ。本来ならば、まだ値上げが必要なはずだ。
 中小建築需要の長期低迷影響は、ここにきてさらに色濃くなった。5月の連休明けから各地において荷動きは悪化している。多くの流通が連休明けから6月にかけて、さらなる値上げに心を奮い立たせていた時期だった。大手が危機感を訴えることで流通はまた立ち上がることができる。安値競争の局地戦もようやく鳴りを潜めた。市場は潮目を迎えた。
2024年6月14日
関東鉄源、鉄スクラップ輸出成約量2万5000万d
6契5万1000円台、3カ月連続大台維持
西送りゼロのイレギュラーでも高値圏

 関東鉄源協同組合は13日、6月契約の鉄スクラップ輸出入札を行った。今回の成約は2022年2月以来の2万d超えの規模となった。1番札は5万1510円で1万d、2番札は5万1267円で1万5千dだった。平均落札単価は5万1364円だった。前月比1226円の下落。ピークアウトした感はあるが、3カ月連続で5万円台を維持した。
 向け先については、1番札がベトナム、2番札はバングラデシュと見られる。海外の鋼材需要が低迷していることや、国内もメーカーの生産状況がいまひとつで鉄スクラップ需給にタイト感はない。東鉄の田原工場の製鋼がトラブルで1カ月休止することなどから、西送りの内航船ゼロというイレギュラーな事態が起きている。今回の5万1千円台での落札は、こうしたネガティブな環境下にあっても、5万円台が維持できることを示した。以前の思惑とは異なる動きだ。
 応札の辞退は今回もゼロ。締め切りが間に合わないものが一部あったというが辞退は出ていない。応札数量は10万8800dだった。
 組合役員の話では7月は休みも多いため荷積みの手間を考えると、2番札まで取るには逡巡もあったという。だが1万5千dから2万d程度は対外的な影響力を考慮し、成約すべしとの判断が働いたようだ。関東鉄源ブランドは、海外でも注目を集めている。
 今回の落札結果を受けて国内鉄スクラップ市況はやや下押しすると見られる。ちなみに浜値は5万円に下落した。電炉メーカーはここからさらに値上げとはいかないが、足元の鉄スクラップ価格を踏まえる限り、下げの選択肢はない。製品価格のツッパリには有利に働く。市中のムードは悪いが、メーカーとしては安堵できるだろう。
2024年6月13日
JFES、超ハイテン材適用拡大に一手
スプリングバック抑制で新技術
大手自動車向けの骨格部品に採用

 JFEスチールは12日、1180MPa級超ハイテン材を活用した「壁折リストライク工法」が、国内大手自動車メーカー向け車両の骨格部品に採用されたと発表した。採用対象となった骨格部品はロッカーインナー。これはドアの車両下部に配置されるものだ。この部品は協豊製作所で量産している。今回、JFEでは協豊製作所と共同で開発することで、新技術の量産金型への適用を実現している。同部品は側面と前面からの衝突時に乗員を守る役割があるため、超高張力鋼を使用し高い強度を持たせる必要がある。
 JFEでは、CO2排出量削減や燃費向上を目的とした車体軽量化ニーズの高まりを踏まえ、超ハイテンの拡販を行っている。プレス成形時においては、金型からプレス品を取り出す際に、元の形に復元するスプリングバックと呼ばれる現象への対応が必要になる。超ハイテンはプレス成形時の応力が通常の鋼板に比べて高い。新技術はこの問題を解決する画期的なものだ。超ハイテンは車体軽量化に大きく貢献する素材だが、通常の鋼板に比べプレス成形時の応力が高く、スプリングバック量が大きい。発生すると、目標と異なる形状となり部品同士の接合が困難になるため課題解決が急務だった。
 新技術の活用により、プレス成形時に材料に残る応力を低減する、またはプレス部品にスプリングバックの要因応力を相殺させる応力を付与することでスプリングバックは小さくなる。プレス工程の前工程形状を最適化し、スプリングバックの要因応力を相殺する応力を付与することができる。
 同社では自動車開発の初期段階から顧客と協業するEVI活動を積極的に展開している。自動車用鋼板の独自利用技術JESOLVAとして体系化し、総合的なソリューションを提案している。今回の新技術開発もこうした取り組みの一環だ。
2024年6月12日
阪和興業、建材主力品種対象に
プラス5000円完全浸透狙う
物流改革にも企業枠超え尽力

 阪和興業は建材主力品種全てを対象に、メーカー値上げ分プラス5千円を徹底させる。同社では今年4月から流通コストを転嫁させるプラス5千円の値上げに取り組んでいる。この完全浸透を狙って一段と売り腰を強める。
 同社がこのタイミングで転嫁の完全浸透を強調するのは、5月の連休明け以降の市中の動きが低迷しているためだ。主要地区を中心に各地で流通コスト転嫁の動きが広まっているが、荷動き低迷により、流通各社がもう一段上の価格水準を狙えずにいる。同社は、グループ会社も含め全社ベースで継続した値上げへの取り組み姿勢を示すことで、市場のムードに喝を入れる。
 中小案件の長期低迷による販売減から、市中のムードは悪くなっている。メーカーの設備トラブルや休止に対する流通の反応が極めて薄いのは、こうした背景があるためだ。本来であれば、先行き需給タイト化への不安で市況が急上昇してもおかしくない。無反応ともいえる状況に、流通業者のなかでは深刻な事態だと危機感を抱く人も多い。
 このムードを長引かせていては、流通収益は悪化する一方だ。今春からは人件費や輸送費上昇が顕著となり、流通負担はいっそう膨らんだ。流れを変えなくてはいけない。阪和興業の中島純一理事(東京・条鋼部門管掌)はロールコラムを皮切りに建材品種値上げの成果について触れつつ「これでは、まだまだ道半ばだ。コストを適正な形で販価に反映させるにはプラス5千円を着実に浸透させなければならない」と決意を示す。阪和興業はグループ会社と連携して、効率的な輸送体制を整備している。質の良いサービスに対してふさわしい対価が必要だ。中島理事はこの点に妥協はないという。これからの物流改革は、自社だけでなく企業の垣根を超えた業界としての取組の必要性を感じており、その流れのなかで中心的な役割を担っていきたいと語る。
2024年6月11日
ステ協、NSSC井上社長が会長に
技術力が強み、需要開拓を
中国猛威、輸入材対応の検討深化

 ステンレス協会の2024年度(第88回)の定時総会が10日に都内の鉄鋼会館で開かれ、新たに日鉄ステンレス(NSSC)の井上昭彦社長が新会長に選出された。10日の記者会見で井上新会長は「技術力が日本の強み。今後に向け高機能かつ低価格の製品に開発余地があるとみている。新たな需要開拓ができれば良い」と述べた。
 近年、増加傾向にある中国や台湾などの輸入材への対応についても検討を深めていく。さまざまな検討を進めるなか、井上新会長は「今はあまり踏み込んだことはいえない」という。さらに「世界マーケットで需要も供給も約60%を中国が占めており、中国を除いた残り40%のマーケットでどう生きていくか。中国国内の需給が崩れたままだと玉がどうしても外に出てくる。商品の差別化に関して高級鋼だけでミルのロールを埋めるのも難しく、大きな課題」とした。需要開拓において、社会的なカーボンニュートラル対応、国内の少子化トレンドも好機・追い風になりうると伝えた。世界ステンレス協会の会長職と兼任となり、輸出に加速がかかる中国勢、明確な市場・需給対策などの方向性が見えにくい欧州勢など混沌とする世界市場もフォローする。
 コロナショック後の相場高騰局面、海外材問題深刻化の時期に会長をまっとうした久保田尚志前会長(日本冶金工業社長)は「一にも二にも需要開拓。任期中はいろいろとやることがあったが、良いタイミングで井上さんに引き継げた」と振り返った。新副会長には、島田文男氏(JFEスチール常務執行役員)と青山雅雄氏(全国ステンレス流通協会連合会会長・スチール社長)がそれぞれ就いた。任期は1期2年間となる。
2024年6月10日
中国5月鋼材輸出、3カ月連続900万d台
国内市況下落のなか、ミル増産
日本の汎用市場で看過できない浸食も

 中国の5月の鋼材輸出が963万dで3カ月連続900万dの大台となった。前月比では40万d減だったが、減産統制がとれているとは言い難い。1─5月累計は4465万d。需給調整は輸出頼みに変わりはない。
 政府は省エネと低炭素に関する行動案を発表したが、市中の反応は複雑だった。5月もメーカー生産増加が続き、市中価格は下落。ひと月を通じてミル在庫に変化が見られないことから、輸出でガス抜きを図るしかない状況だ。7─8月積み輸出のオファー価格はホットコイルがわずかに上昇したのみで、冷延・めっき・厚板は横ばい。ホットコイルはFOB540j。底入れとは言い切れないレベルだ。
 中国国内の市況は5月末時点で鋼板も条鋼類も下落。ホットコイルは40元下げ、鉄筋は70元下げだった。政府の住宅分野の支援発表後も建設資材の市況は不安定なままだ。メーカー増産は条鋼類にも及んでおり、国内余剰を生み出している。
 中国ミルの輸出偏重はこれからも続く。日本においては4月の通関実績で鋼板類を中心とした輸入が大幅増となった。中国の輸出により韓国・台湾材も玉突きで対日向けを増やしており、日本市場への影響は単純に中国材の増加だけにとどまらない。こうした流れは円安為替をものともしない。
 日本国内では外資系商社の飛び込み営業が増えているという。もちろん、中国系商社の動きも目立つという。流通関係者によれば、一時的な調整ではなく、本腰で日本市場に浸透させようという意欲が感じられるという。内外格差を利用して、汎用分野では輸入材の浸食が進行する。国内メーカーの設備トラブルも最近では市中で話題にならない。荷動きの悪化だけでなく、市場を侵食する輸入材の存在は無視できないものになっている。
2024年6月7日
NSSC、6月店売りさらに値上げ
Ni系2万5000円、Cr系5000円
周南製鋼再稼働に1カ月、市中に緊張も

 日鉄ステンレスは国内向けステンレス冷延薄板と厚中板について、6月契約でニッケル系薄板と厚中板で2万5千円、クロム系薄板で5千円値上げする。全てアロイリンクによるもの。原料要因でニッケル系は4カ月連続、アロイ系は2か月連続値上げとなった。
 今回のアロイリンクは、原料の値上がりだけでなく為替の円安化が大きく影響した。為替は4─5月平均で3─4月平均に対し3・29円も円安となった。原料についてはニッケルが0・47j、クロムが4k上昇。原料・為替動向により、次月以降もアロイリンクで値上げの可能性がありそうだ。
 国内外ともミルが値上げに動いており、市中では流通が価格転嫁の真っただ中にある。政府の肝入れにより、住設分野で省エネ需要が動いており、薄板需要の支えになっている。全国ステンレスコイルセンター工業会統計によると4月の薄板販売量は5万d強で前月比微減となったが、ニッケル系薄板は微増となっており堅調。
 5月末に、日鉄ステンレスの山口製造所・周南エリアでダクト部分が破裂する事故が起きたが、これについて同社は製鋼工程の稼働再開に約1カ月かかると見込んでいる。取引先に対する調整を行っており、他事業所からの振替えなどの選択肢も踏まえ、大きな支障が出ないようにしている。市中在庫に余力があるため、今のところ目立った混乱は起きていないが、主力メーカーの供給に関わるだけに、流通の中で強気な価格姿勢が台頭してくる可能性もある。
 4月の冷延鋼材の輸入は2万d強だった。前月比6千d近く増えた。2022年6月以来の高水準で過去2番目。既に海外ミルは値上げしており安値時の手当てと見られる。中国材の増加が目立つという。