2025年11月14日
経産省、鉄鋼生産計画普通鋼が増加
3Q粗鋼見通し、2083万dに
今期需要見通し比3%増、関税リスク薄れる

 経済産業省は13日、第3四半期の鉄鋼生産計画をまとめた。粗鋼生産計画は2083万dで需要見通し比3・0%増加した。前期比は4・5%増だった。第1四半期と第2四半期の実績と合わせると6091万dになる。前年同期は6256万d。今年度の水準の低さがうかがえる。
 鋼材生産計画は1803万dで前期比2・4%増となる。普通鋼の増加によるものだ。とくに国内向けが増える。建設向けを中心に需要が改善したわけではないが、生産計画が上回ったのは、単純に実需の水準が低すぎるのではないか。普通鋼について国内向けは908万dで前月比8・9%増、輸出向けは511万dで4・5%減少した。国内向けの伸びが大きい。建設向けで来年に向けて大型案件の動きが出てきたことや。一部自動車メーカーの生産回復などが挙げられる。
 米国関税の影響が改めて見直されたことも背景にある。高炉各社の業績見通しでは米国関税の影響について、期初はかなり悲観的な見方が目立っていた。想定ほどのマイナス現象が見られないことも数量増につながったのではないか。
 普通鋼輸出は前期比・前年同期比ともにマイナス。自動車分野の動きがパッとしない影響もあるだろう。それを裏付けるように、特殊鋼鋼材については98万dで前期比8・9%減、前年同期比5・6%減になる。
 品種別ではH形鋼が76万dで前月比18・0%増、前年同期比2・0%増。小形棒鋼は162万dで前期比7・5%増、前年同期比2・2%減だった。H形鋼の増加は稼働日効果と、大型の基礎が動き始めたことが大きいと見られる。ただ、2ケタでの増加は久しぶりのことだ。小形棒鋼の増加は日数回復のみか。
2025年11月13日
関西形鋼流通・大型在庫店が売り腰強化
月央から3000円値上げへ
「早急に採算性の改善が必要」と判断

 (大阪)大型在庫流通がいよいよ形鋼の値上げに本格的に取り組む。形鋼メーカーの値上げラッシュを受け、大型流通在庫店は売値の引き上げを必達としてきた。複数の大型在庫店が来週からH形鋼、アングル、チャンネル、平鋼の3千円値上げに動き、すでにユーザーへの周知も進めている。
 関西の形鋼流通は10月初め頃から市況の是正を図りたい意向にあったが、マーケット環境のもたつきから唱え上げが遅れた。関西は大型在庫店の影響力が強く7、8社の販売姿勢が市況水準に大きく関与してきた。その他の複数の流通でも値上げの取組みが見られたが、マーケットでの高値と安値の混在は容易に解消されず市況の底上げは立ち遅れていた。この1年4カ月ほど弱含みの基調が続き、建築需要も低迷。スクラップ価格も弱基調が続くなか、競合の激しい一部地域を中心に安売りによる陥没価格も見られた、この間、流通各社は限界に近い、あるいはそれ以上のスプレッド悪化の下で不採算改善の機をうかがいつつ、先行きの不透明さと需要低迷に阻まれていた。
 しかし、ここ2、3カ月で底値が固まり、慎重な仕入れによる需給バランスのタイト化や、在庫の仕入れ時期がメーカーの10契値上げ分と重なったことなどから、メーカー値上げ分の価格転嫁として複数の流通が値上げを決意。ユーザー間でも足元の市況を踏まえ先安感が薄れている傾向にあり、今回の値上げを想定済みのものとして受けとめるところも出てきたという。
 下期に入り、インフレの進行に伴う諸コストの増加、またスクラップも4万円台半ばへ高止まりする予測となってきた。流通・メーカーともに市況の値下がりは再販可能ラインを越え、各所で「早急に必要」と不採算の改善に向けて決意の一歩を踏み出した。12月契約のメーカー売出し価格によっては、各社でさらなる値上げに踏み切る可能性もありそうだ。
2025年11月12日
関東鉄源、鉄スクラップ輸出入札
11契落札4万4960円、今年最高
浜値スポットも上昇、需給タイト薄れず

 関東鉄源協同組合は11日、鉄スクラップ輸出の11月契約分の入札を行った。落札は1番札のみで4万4960円、前月比644円高だった。今回も一船2万dでの契約となる。落札価格は今年の最高値だった。
 応札量は12万1100dで辞退はなかった。船積みは、現在10月契約が11月13日から29日までとなっているため、それ以降となる。夏場に比べ発生は改善されたものの、数量面でのインパクトは小さいという。浜値はFAS4万3500円から4万4500円へ上昇。スポットでは4万5千円の取引もあるとしている。こうしたなか、今回の入札でも4万5千円台が出る可能性もあった。
 向け先はベトナムと見られる。ベトナムはインフラ整備が活発化しており、年末も迫っていることから手当てに動く可能性がある。ベトナム国内の建設需要はあたま打ちになっているが、品質とデリバリーを考慮すれば、関東鉄源ブランドの鉄スクラップを確保しておきたいという思惑もあるのではないかという見方もある。現時点では船積み作業が集中しており、浜値が4万5千円よりに近付く可能性も出ている。
 関東地区において建設解体工事は少し増えているが、製造業の活動が停滞しており工場発生が減っているという。電炉メーカーの生産状況は、建築需要低迷により思わしくない。11月の関東電炉の生産は29万dで、30万dに満たない低い水準が続く。電炉の操業状態と連動しない形で鉄スクラップの価格が上昇している。製品価格は改善の途上にあり、電炉にとって原料主体のコストアップに追い付いていない。鉄スクラップ需給のタイト感継続はメーカーには苦しい局面。鉄スクラップ業者の注目はますます海外へと向くと見られる。
2025年11月11日
高炉3社の25年度上半期連結業績
トランプ関税リスク見直しへ
内需低迷と販価下落の苦境は変わらず

 神戸製鋼所が10日、2025年度上半期業績を公表し、高炉3社の業績が出そろった。在庫評価の影響は、前回8月見通しから修正したものの、各社の通期の見通しに最も効いたのは、トランプ関税などの先の読めないリスクの見直しだった。自動車や相互関税が確定する前に策定した予想であり、各社最も厳しい読みをしたため、今回の予想ではその揺り戻しがあった。
 神戸製鋼所は前回予想では通期業績に与える米国関税影響を50億円と設定。今回は影響を30億円と軽減した。直接輸出と間接輸出の両方で見方を改めた。前回予想は直接輸出20億円、間接輸出25億円の影響と見たが、今回は直接輸出10億円、間接輸出15億円とした。上半期ではすでに10億円の影響。下半期は20億円とする。下半期は建設機械の追加関税の台数想定差、素材系事業の米国向け完成車輸出減少リスクが縮小すると見ている。
 上半期の連結業績は売上高1兆1814億円、営業利益625億円、経常利益576億円だった。前年同期比減収減益。売上高は4・6%減、営業利益は19・6%減だった。経常利益は18・8%減。経常利益の減益はコスト増と在庫評価影響の悪化による。機械部門の売り上げ増や、素材系事業の価格転嫁などのプラス要素だけではカバーできなかった。マイナスは主力の鉄鋼事業が最も大く、鉄鋼のセグメント益は85億円。54・8%の超大幅減に。
2025年11月10日
中山製鋼グループが関東地区強化
ひたちなか物流センター
北関東や東北の安定供給、販売拡大めざす

 中山製鋼所は4日、茨城県に物流センターを開設した。ひたちなか市に中山製鋼グループの関東(北関東)、東北拠点として配置。供給安定、販売量の拡大をめざす狙い。内藤伸彦社長が就任時から言及してきた「関東の強化」へお膳立てが整った。
 開設された「ひたちなか物流センター」は、中山製鋼所グループとして鋼板製品の小ロット、短納期対応などのデリバリーサービスの向上および強化を目的とした新たな中継地となり、コロナ禍での事業自粛・シェア逸失の巻き返しを担う。
 同物流センターは、国際海上コンテナターミナルを有する常陸那珂港区に位置し、置場面積900坪、最大置場能力6千d(ホットコイル4千d、他製品2千d)での運用を想定している。立地の選定にあたっては、北関東自動車道・圏央道に直結した物流ネットワークの充実、並びに京浜港の地理的な代替地(災害時の事業継続計画上の回避港)であることも考慮した。常陸那珂常陸那珂港区における沿岸荷役、ひたちなか物流センターの倉庫運用は、三星海運(大阪市、角野康治社長)を通じて東洋埠頭(東京都中央区、原匡史社長)に委託して進める。
2025年11月7日
JFEHD、上期はエンジのみ増益
通期粗鋼2150万dに上方修正
米国関税影響縮小で想定比50万d増

 JFEホールディングスは6日、2025年度通期単独粗鋼生産量を前回公表比50万d増の2150万d程度(上期1080万d・下期1070万d)に上方修正した。米国関税の影響などを織り込み100万dの減産を計画したが、関税の影響が身構えていたほどではなかったため引き上げた。ただ、事業利益は粗鋼生産計画の上振れ分を含めても、国内外の鋼材市況の悪化に加え、輸入スラブにかかる関税が響く米国カリフォルニア・スチール・インダストリーズ(CSI)といった海外グループ会社の収益悪化分などが相殺する見込みで、前回予想の通期事業利益1400億円(前期比3・4%増)は据え置いた。棚卸資産評価差などを除く通期事業利益は前回公表比100億円低い1900億円とした。為替が円安に振れることも影響する。
 25年度上期業績をセグメント別にみると、鉄鋼事業は売上収益1兆5374億円(前年同期比1919億円減)・利益53億円の赤字(398億円減)、エンジニアリング事業は売上収益2870億円(175億円増)・利益126億円(37億円増)、商社事業は6475億円(680億円減)・利益219億円(5億円減)だった。寺畑雅史副社長は鉄鋼事業について「中国の過剰生産・大量輸出による需給バランスの崩れや市況の低迷が世界各国・地域に波及している」と説明。「当社グループでも国内外のスプレッド縮小、海外事業環境の悪化を見込んでいる」と語った。粗鋼生産計画の修正については米国関税リスクを50万d分と見ていたが、政府間交渉が進んだこともあって現時点で減産分は20万d弱程度に縮まるとした。
 商社事業は鋼材市況下落などの影響で売上収益が計画比で下振れるが、エンジニアリング事業は堅調に推移する見込み。廃棄物処理施設案件などで通期受注額7千億円(前期比1205億円増)を予定する。
2025年11月6日
日鉄、25年度通期実力益6800億円見通し
上期事業益は2275億円、下期横ばい
USスチール分は織り込まず

 日本製鉄の2025年度通期見通しについて、連結事業利益4500億円とした。前年実績比で34・2%減となる。8月の見通しからはわずか300億円の下方修正にとどめた。実力ベースの事業利益は6800億円で8月見通しから300億円上積みした。上半期事業利益は2275億円で、見通しから475億円上方修正となった。
 6800億円の中にはUSスチールの利益を織り込まなかった。USスチールの設備トラブルなど一過性のコスト悪化や米国市場の不透明感を見越してのものだという。8月見通し時は800億円の利益貢献を見込んでいた。実力ベースの事業利益が300億円上積みされたのは、米国の関税の影響が当初予想より緩和されたことによるものだ。環境悪化でマイナス200億円、コスト低減でプラス200億円となっておりこれらは相殺。USスチールについては、800億円の利益貢献を見込んでいたものの、今回織り込まなかったのは、環境・マージン悪化で500億円のマイナス、設備トラブルなど一過性要因で200億円のマイナスがあったためだという。日鉄はUSスチールを通じて中期経営計画を公表。28年度までに110億jの投資をするとの方針を示した。
 すでに26年度にはビッグリヴァーの無方向性電磁鋼板増強設備の立ち上げによる、品種拡大と構成改善効果や操業改善によるマージン改善、関税効果による国内市況回復などを見込んでいる。26年度は連結が9カ月から12カ月になる効果もある。なおUSスチールの110億円投資の内容として、新たにビッグリバーでのGO設備の新設、フェアフィールドでの鋼管処理設備新設、モンバレーでの熱延設備更新、ゲーリーでの高炉改修や製鋼工程など更新が盛り込まれた。