2025年12月9日
日鉄、店売り向け炭素鋼鋼管全種
2月製造分から5%上げ
大型案件本格化備え、コスト転嫁急ぐ

 日本製鉄は、国内店売り向け炭素鋼鋼管全品種を、来年2月製造分から現行価格比5%値上げする。値上げは、2024年4月ロールで実施した10%上げ以来2年ぶりだ。すでに流通各社には申し入れを始めたという。大型案件の本格化などを踏まえ、原料以外の諸コスト上昇を着実に転嫁、再生産が実現可能な価格帯を目指す。
 足元の国内需要は依然低調さが拭えないものの、この先は案件の動きが見えている。半導体工場や大型のデータセンターなどの着工が予定されているほか、首都圏や地方都市などの大型再開発案件における工事や材料手当てが本格化する。大阪のIR(総合型リゾート)は基礎工事が始まっており、関連案件も含めた動きに期待が集まる。建設分野だけにとどまらない。製造業分野では造船分野の工事ピッチアップが注目されている。
 需要分野が変化していくなか、鋼管の供給側としては課題を残したままになっている。労務費や設備修繕費、物流費などの大幅な上昇にいまだに苦しんでいる。鋼管サプライチェーンにおいては輸送効率が問題となるが、これまでのコスト転嫁の取り組みを経ても、充分な収益を得るには至っていない。
 今回の値上げについて日鉄は、将来にわたって安定供給体制維持のために、確実に浸透させる必要があるという。状況いかんで追加値上げも検討するという。担当者は「足元の環境が厳しいことは十分理解しているが、さらなるコストアップは避けられない。理解を得られるようにお客様には丁寧に説明していきたい」と語る。高炉の値上げがこのタイミングで表明されることで、年明けに向けてマーケットの空気も締まってこよう。マーケットでは鋼管市況の上昇が他品種に比べかなり遅れる。使用用途によってモノが動くタイミングがずれる。諸コスト転嫁が消化不良となることも珍しいことではない。
2025年12月8日
日鉄、低圧液化CO2タンク向け新鋼材
三菱造船と熱処理省略技術開発
CCUSバリューチェーン構築に協業

 日本製鉄はこのほど、三菱重工グループの三菱造船と共に低圧液化CO2タンクについて溶接後の熱処理を省略する技術を開発した。溶接部の健全性評価(ECA)に基づき、熱処理省略の妥当性を示した。新技術に関して既に日本海事協会から一般設計承認を得た。
 熱処理省略技術開発のため、日鉄ではNK規格のKF460を踏まえつつ、さらに優れた低温特性と高強度をもち、経済性にも優れた新たな鋼材を開発した。両社の技術シナジーが実り、承認取得に結びついたもの。
 三菱造船では大型の低圧液化CO2輸送船の共通化や標準化について、業界横断的な取り組みを行っている。この取り組みのなかで両社の協業が実現した。
 大型の低圧液化タンクは、経済性に優れた高強度炭素マンガン鋼を使用する場合、溶接部の熱処理工程が必要だった。この熱処理は、溶接後の構造物を再加熱し、応力を低減し溶接継手部の品質改善を行うものだ。だが、大型のタンクが収容できる熱処理炉は限られるため、大型化や量産化において課題となっていた。
 カーボンニュートラル社会に向けた取り組みが社会的に加速しているなかで、CCUSのバリューチェーン構築は必須であり、大型タンク製造のプロセス効率化は極めて重要だ。
 日鉄はカーボンニュートラル対応において、高機能製品・ソリューション技術である「NSカーボレックスソリューション」を展開、このなかの低合金・省工程鋼(TMCP鋼)に今回の新鋼材は該当するという。素材から一貫したソリューション提案により、日鉄では需要家との脱炭素に関する協業を着々と拡大している。
2025年12月5日
JFES、JSWとブーシャンで合弁
印に一貫製鉄所、2700億円投資
粗鋼能力を拡張、30年に1000万d

 JFEスチールは、インドにおいてJSWスチールと一貫製鉄所の合弁事業を行う。現在JSWスチールのグループ会社となっているブーシャン・パワー・アンド・スチール(BPSL社)と折半で保有し、国内の旺盛な需要に応えていく。JFEスチールの出資分は日本円で約2700億円。合弁会社では2030年までに粗鋼生産能力を1千万dまで高める。将来は1500万dを目指す。
 JFEスチールは海外展開を強化しており、現在推進中の第8次中期経営計画において4千億円プラスアルファの投資を計画している。このうちのかなりの部分がインド事業に充てられる。インドと米国は同社の海外事業の主軸だ。同社は東日本製鉄所・西日本製鉄所に次ぐ『第3の一貫製鉄所』として今回の合弁事業を位置付けている。インドにおけるインフラ需要向けに電磁鋼板供給態勢の整備に取り組むなどすでに着々と対策を講じている。
 同社ではインド市場がすでに急成長期に入ったと見ている。1人当たりの鋼材消費が100`cを超えると800`cに達するまでの20年間で急速な鋼材需要拡大が生じる。この間に将来の市場成長に合わせた供給体制整備が早期に必要になるとしている。現状ではインド国内の設備拡張をすべて足し合わせても内需に追いつかないと同社では試算している。ちなみにJSWでは数年おきに500万dペースで能力拡張を行っているという。これは国内ではハイペースの拡張になる。
 BPSL社はインド東部のオディシャ州に一貫製鉄所を持ち、同じ東部のコルカタと北部のチャンディーガルに下工程の製造拠点を持つ。オディシャは現在450万dの粗鋼能力を持ち、この工場敷地が1300エーカーある。隣接地には買収した700エーカーの土地があり、ここでは高炉などさらなる拡張が可能となる。(本紙2面に続く
2025年12月4日
薄板3品在庫、3カ月ぶりに400万d割れ
10月393万d、流通在庫中心に減る
溶融亜鉛めっきでAD調査効果も

 10月の薄板3品在庫が再び400万dを割った。393万7千dで前月比10万5千d減少した。これは問屋とコイルセンター在庫の減少によるものだ。メーカー在庫が170万2千dで前月比2万9千d増、問屋在庫が76万7千dで8万7千d減、コイルセンター在庫が146万8千dで4万7千d減少した。流通在庫の減少は輸入材の入着減や、市中価格が下げ止まってきたことと関連すると見られる。
 今回はメーカー在庫が10─12月の期初に増えたことが特徴。一部ではあるが自動車メーカーの生産回復も要因の1つといえる。またメーカー自らが需給の調整弁になっている面もある。品種別の在庫率は熱延が3・19から3・06へ低下、冷延は3・37から3・55へ上昇。溶融亜鉛めっきは2・60から2・47へ低下した。溶融亜鉛めっきの在庫率低下はAD調査開始の効果による輸入減によるもの。中国材は9月に7万d近く輸入されたがこちらは駆け込み要素があった。その反動もあり10月は減少した。溶融亜鉛めっきについて中国材は減ったが、それでも輸入全体でみれば高い比率を維持していることに変わりはない。関係筋でも今後の推移を見守る必要があるという。
 輸入については熱延と酸洗について韓国材と台湾材が増加した。両国とも各国の通商措置で輸出市場で苦戦している。また国内においても需要喚起に有効的な対策を打てずにいる。対日向けの供給は高い水準で持続していくと見られる。
 今回メーカーの在庫が増えていることを踏まえると、今後の在庫動向はまだ予断ならない。流通段階で抑制が効いていても、メーカー在庫に負荷がかかっている。3品全体でひとまず大台を割ったが、このまま年末まで維持できるか。
2025年12月3日
阪和工材、Ni系を1万円値上げ
久しぶり相場上伸へ
12月帳破明け、物流費など重荷

 大手ステンレス流通・阪和工材は12月帳破明けから、ニッケル系ステンレス薄板の販売価格をトン1万円値上げする。物流コストが上昇して、利益を圧迫。労務費も増加していく背景があるなかで、国内ステンレスメーカーの値上げトレンドもあり、販価改善を推し進める。足元、阪和工材はじめ各大手・有力流通では値上げ機運が徐々に盛り上がっており、他社も値上げを志向する話題が聞かれる。
 国内材だけでなく、海外材もすでに下値が切り上がり、値上げの好機。久しぶりの相場上伸が、年末年始前後に見込めそうだ。田川竜介社長は「荷動きも少しずつ改善している。需給も締まりつつあるのではないか」とする。流通各社のスタンスにもよるが、近年は余計な在庫を持たずに、引き合いに直接対応できる在庫のみを持つ流れがあり、以前よりタイト感が出やすい環境にある。
 品種や仕様の多様化といった要素もあるが、需要は11月以降、各分野で回復ムードが強まりつつあり、流通在庫も今後しばらくは過剰に膨れることはなさそうだ。2025年度で見た場合「年度末まで悪くなるイメージはない」といった声もある。阪和工材は今後、クロム系薄板も同様の値上げを考えていく。
 国内メーカーは、日本製鉄が店売り向け冷薄価格を8月以降、ニッケル系で累計1万5千円値上げしており、流通サイドも適正マージン確保のため価格転嫁は待ったなしになりつつある。50万円台半ばまで下落した国内材相場の中心が反発しそうだ。海外材の値段も、原料価格が若干持ち直したことや、採算改善の機運が海外ミルにも出始めたこと、今後の需給引き締まりの懸念もあってか、底を打っている。
2025年12月2日
H形鋼輸入、10月中国材再び1万d超え
単価8万円台も値差大きく
日本の建設市場標的、今後もリスク

 H形鋼の輸入が再び増加した。10月輸入は1万4600dだった。中国材は1万4300dでこの大半を占めている。中国材輸入は1─10月累計で10万1700dだった。中国国内の需要低迷を背景に今年は建材品種の輸出が増えている。大手ミルと異なり減産政策は徹底されない。余剰が日本の建設市場をめがけて放出されている。
 これまでH形鋼輸入については安価な製品価格が問題視されてきた。間接的に日本国内市況にも悪影響を及ぼすためだ。10月の中国材は平均単価が8万3千円だった。前月の7万6700円と比べると大きく値上がりした。国内メーカーの最安値と比べても、中国材の価格水準には追い付けない。1万円近い値差を保ちつつ日本向けの供給を増やした。
 中国ミルはこれから日本国内で大型案件が本格化することに狙いを定めている。首都圏にとどまらず地方都市でも少なからず再開発需要はある。これからは月次で1万dを超えることが常態化するのではないか。ちなみに今年は1万d超えが4回、近い数値が2回あった。中国のH形鋼は連壁材に用いられる。土木向けがターゲットである。鋼矢板とセットで売り込みをかけるようになると、さらに日本市場での浸食は進む。
 今後の供給圧力が強まる要因となるのが、ミルが系列の商社を使って販売を強化していることだ。ゼネコンが輸入材を活用するのは既に常態化したが、それでもそこには日系の商社が介在していた。今は身内に拡販を任せるようになるなど、自発的な動きが目立つようになっている。
 中国国内では内需の立て直しが根本的な対処に欠けるため、条鋼品種市況が変動を繰り返し安定しない。輸出による調整は不可欠であり、量も価格も含めて依然としてリスクは大きいといえる。
2025年12月1日
GIやステン薄板減少もめげない一手
10月中国材輸入、条鋼類が急増
大型案件など建築向け拡大が狙いか

 普通鋼・特殊鋼などすべての中国材の10月輸入量は12万7900dで前月比18・1%減だった。前年同月比は14・9%減。この1年では2月の9万7千dに次ぐ水準。鋼板類やステンレス鋼の減少によるもの。薄板類ではとくに溶融亜鉛めっき鋼板が41・2%減、ステンレス鋼は40・0%減だった。あきらかにAD調査対象となった効果だ。
 だが、こうした一面があるなか、問題点も浮き彫りになった。半製品・形鋼・棒鋼が急増しているのだ。半製品は4800dで6・8倍に増加。昨年10月からの推移を見ると多くても4千dをわずかに超えるまでだった。今年10月は5千dに近づいた。形鋼は1万6千d超え。今年最高値になった。大半がH形鋼だ。棒鋼も1700dで10倍以上に増えた。棒鋼はこれまで数百d水準にとどまっていた。
 厚板やホット・冷延・溶融亜鉛めっき鋼板など目につきやすいところは減少したが、条鋼類は増加傾向を示した。首都圏を中心とした都市部の再開発案件は、来年以降の建築需要回復の目玉となる。地下部の工事は始まっており、材料手当ては動き出している。国内メーカーも受注活動に必死だが、中国もこの動きを見逃さない。イタチごっこのように、中国ミルは日本市場攻略に手を変えて挑んでいる。AD調査の対象は溶融亜鉛めっき鋼板とニッケル冷延ステンレス薄板以外にも広げる必要がある。中国の柔軟な攻め手は警戒しなくてはならない。
 目下、価格の立て直しに注力している電炉メーカーは輸入動向に神経をとがらせているはずだ。10月に全鉄鋼の輸入は59万dで前月比5・7%減だった。普通鋼については37万2千dで5・4%減。形鋼・棒鋼・ホットコイルが増加。ホットは韓国・台湾が増えた。