2024年10月22日
アジアミルのHC価格動向を意識
東鉄、11契全品販価を据置き
12契で田原、広幅酸洗コイル本格発売

 東京製鉄は11月契約販価を全品据置きとした。前回の大幅値下げ以後、東鉄は国内外の市場動向を見極めていたが、ホットコイル価格については、底が近づいたとの認識を持っているという。流通関係者は、11月契約の据え置きを確認して今後の価格スタンスを決めようという向きが強い。締め切りは23日。
 10月生産は25万dの計画。内訳はH形鋼9万d、ホットコイル11万d(輸出5千d)、厚板3万5千d。物件や在庫販売価格は前月比横ばいとした。同社ではアジア市場について底入れが近づいたと前向きな解釈をしている。中国や台湾、ベトナムミルが国内外向けにおいて値上げに動いたことがポイントだという。先行きに不透明感はあるが、悪い材料はひととおり出尽くしたとの認識がある由。対日向けの価格について中国などが大幅値上げを打ち出したこともポジティブに捉えている。国内についてはホットコイルなど薄板類が底値に近いとの見方。H形鋼など条鋼類も市中価格は連動すると見ている。
 同社は12月契約から田原工場の酸洗コイルを本格的に売り出す。現在、広幅についてサンプル確認の最中という。広幅対応が可能となることで流通向けはもちろん、ユーザー向け拡販に弾みがつく。同社はホットコイル市況の底を探っていたのも、田原の広幅酸洗の販売と無縁とは言えない。ただ、先行き市況形成において懸念材料は残る。現在の流通の価格競争はメーカー販価由来ではなく単純なシェア競争によるものだ。東鉄の値下げ玉の倉入れは12月頃。市中の値下げが先行している。輸入材の値上げはオファー段階でのもので、着地したわけではない。稼働優先のミルもある。底入れは近いようで遠い。
2024年10月21日
H形鋼流通、市況形成が正念場に
下げ局面落としどころ探る
東鉄の11契見極めそれぞれ思惑

 (東京)H形鋼の市中価格形成が正念場だ。足元は12万円台前半から半ばで推移。だが、上下の格差は徐々に広がり、このままいけば12万円台の維持も難しくなる。これから年末に向かって流通は数量優先の商売をしなければならない。東鉄の11月契約販価と実行価格の行方が1つのポイントになるという。妥協点を見出し、落としどころを探るという関係者もいる。
 東鉄の値下げ玉が実際に流入するまで猶予期間がある。すでに市場は流入前に下げムードが強くなっており「時間を稼げない」と危機感を持つ声もあがる。今まさに流通は製品価格と非連動の値下げを強いられている。これまで積み上げてきた諸コストや輸送費など吹き飛んでしまう。
 それが分かってはいるが、食べるためには一定量の月次販売量は必要だ。関東では東鉄シンパが増えたが、購入量のランクで仕入れに格差は出るのは避けられない。本来であれば成り立たない同業者間の競争を、流通関係者は強いられている。東鉄の11月契約を確認して今後の方針を決めるという店もある。東鉄は一発勝負で値下げしているため、だらだらと改定する可能性は低い。
 だが、どうしても実行価格の部分が心配だと言う声もある。鉄スクラップ価格の動向は依然として不透明だ。だが4万円から4万円台前半を想定するならば、下げ代はあまり残されていない。東鉄だけでなく国内メーカーの価格動向は腹の空き具合による。国内がダメなら輸出という選択肢がある。8月のH形鋼輸出は2万4千d。この約半分は韓国向けだった。1─8月までの累計で韓国向けは10万5千dに及ぶ。韓国も日本同様に内需が冷え込んでいる。輸入規制が本格化すればひとたまりもない。警戒が必要だ。
2024年10月18日
薄板流通、在庫処分にめどつかず
年末に向け市況じり安続くか
東鉄ショックと中国材影響で焦燥感

 薄板流通の在庫処分の動きがいっこうにおさまらない。年末に向け在庫が打たれるのを最小にとどめようとしている。東京製鉄の10月契約の大幅値下げの影響が実際に出るのは年末近く。倉入れする頃にはホットコイルだけでなく薄板全般において流通の販価に作用する。東鉄材扱いの如何にかかわらず、流通各社に自衛本能が働いている。
 東鉄が建値を大胆に修正したのは輸入材への対抗の意味合いがある。この輸入材の動きにも流通は気を配っている。溶融亜鉛めっき鋼板だけでなく、酸洗鋼板や冷延薄板でも中国材の躍進が目立つが、東鉄は中国材も想定して販価設定を行っている。
 流通関係者は中国ミルの価格設定に神経を尖らせている。10月現時点の対日向けはホットコイルで1万円を超える値上げが打診されているというが、これは交渉の余地ありと見ている流通関係者もいる。韓国材や台湾材は実際の中国材の価格を基準に今後の対日価格が決まっていくだろう。流通関係者の多くは輸入材全般において先安と見ている。東鉄の値下げ対応も含め「赤字幅が小さいうちに処分を」と動いているという。
 早く在庫処分してしまいたいが、そうもいかない事情もある。建築・製造業共に需要分野の動きが悪い。とくに建築分野の低迷は幅広い品種に影響を与えている。少々の値引きどころでは在庫は裁けない。市況の下落が厳しい環境ながらも緩やかなのはモノが売れないせいでもある。「真っ先に切り込んで価格を下げたくはない。周囲を見ながらそろそろと合わせる。先行きが見えない以上、気持ちの悪い値下がり局面が続く」と流通幹部は自嘲気味に話す。東鉄の11月契約についてはこれ以上の下げはないと見るが、それでも見届けないと安心できないという関係者の声もある。
2024年10月17日
浦安鉄鋼団地9月景況、売上増が2割
鋼材流通、販売低迷大底脱す
東鉄大幅下げで競争激化の指摘

 流通業界の商いは数量面では底を脱したもようだ。浦安鉄鋼団地協同組合の9月景況実感調査において、売上数量が前月比で「増加した」が全体の2割を超えた。7─8月にかけて荷動き不振が深刻だったが、その状況は若干の改善を見た。加工設備の稼働率も「上昇した」が12・5%となり前月比3ポイント増加している。
 調査によると、売上高について「10%以上増加した」が9・4%、「やや増加した」が12・3%だった。「横ばい」32・6%、「やや減少」24・6%、「10%以上減少」21・0%だった。「横ばい」は前月比3・5ポイント増加。建築や製造分野における需要低迷は変わらないが、悪いなかでも商売上は改善が見られるようになったということだ。品種別では薄板について自動車関連は景気の踊り場を抜けて持ち直しの動きが見られるとのコメントが出ている。
 粗利についても「増加した」が24・6%になった。前月は17・2%だった。浦安鉄鋼団地内は素材販売よりも加工を施した需要家向けの販売ウエートが増えている。コストや物流費の転嫁が進展しているとも言えるだろう。
 だが、販売量にやや改善は見られたものの、鋼材市況動向への不安は逆行するように強くなっている。東京製鉄が10月契約で大幅値下げを実行したためだ。東鉄の製造品種とそうでないものとでは温度差があるが、流通業者間での価格競争を招いているという指摘もある。
 鋼板類や形鋼扱いで危機感を高める関係者は多いと聞く。電炉品種においては鉄スクラップ市況の変動影響も販売価格に影響を及ぼしているという指摘がある。3カ月後の景況予想「横ばい」が61・8%で圧倒的。注目すべきは「悪化する」が28・6%に及んでいることだ。流通の先行きに対する懸念が反映されている。
2024年10月16日
世界粗鋼短期見通し、アセアン・アフリカ期待
25年17億7000万dで底打ちか
中国は24─25年連続減、経済低迷長期化で

 世界鉄鋼協会(WS)見通しによると、2025年の世界粗鋼需要は17億7150万dで24年比1・2%増、23年比では0・2%の微増となる。WSではコロナ禍以降、新興国の需要増がより鮮明になること、先進国は緩やかな回復基調をたどるとの見解を示した。だが、中国が24─25年は引き続き減少するとの見方で世界需要の伸びにもパンチがない。インドが力強い成長を示し際立った。
 24年の見通しは17億5090万dだった。前年比0・9%減だった。世界的な経済の減速や地政学リスクの影響を受け、新型コロナ禍以降のボトムと見ている。ただ、EUや中南米に比較的高めの需要増を想定しているがこれは楽観的と言わざるを得ない。ASEANや中東、北アフリカは23年を超える伸びが期待されている。中国という牽引車が不在であるなかで、これらの地区に高い期待を寄せているのが分かる。
 EUは24年1億3660万d、25年1億4140万dを想定。25年は前年比3・5%の伸びを予測。中南米は24年4560万d、25年4780万dの見込み。アフリカは24年3710万d、25年3890万dの見込みとなった。アジア・オセアニアは24年12億4050万d、25年12億4910万dだった。圧倒的な市場であるが、中国影響からなかなか逃れられない。
 今回興味深かったのは中国の粗鋼生産減だ。23年8億9570万d、24年8億6880万d、25年8億6010万dと推移すると見られている。国内の経済低迷が長期的に継続するとの認識だ。不動産分野の低迷要因は根深く、地方債発行も対処療法に過ぎない。躍進著しいのがインドだ。23年1億3280万d、24年1億4340万d、25年1億5560万dと予想されている。
2024年10月15日
日鉄、NSSCを来年4月に吸収合併
鉄源プロセス転換で大きな一手
20年ぶりステン部隊復帰に市場の反応は

 日本製鉄は日鉄ステンレスを来年4月1日付で吸収合併する。日鉄ステンレスは日鉄の100%子会社。2003年に旧新日本製鉄と旧住友金属工業2社のステンレス事業を統合し新日鉄住金ステンレスとして発足。以降は厳しい環境に直面しながらも安定した収益体質を確立。連結経営に貢献していた。今回の合併の目的として日鉄は、九州製鉄所・瀬戸内製鉄所をまたぐ電炉プロセス転換政策の推進を掲げている。
 日鉄は国のGX推進法に基づくエネルギー・製造プロセス転換支援事業に応募することを決めている。八幡の高炉から大型電炉プロセス転換、広畑の電炉増設、日鉄ステンレスの周南における電炉再稼働を含めた高級鋼製造拠点での鉄源プロセス転換の実装化を目指してのものだ。
 日鉄ステンレスはクロム系ステンレス鋼片について八幡から供給を受けている。設備集約のため第6電気炉をすでに休止し、クロム系の鉄源についても八幡一本に絞っていた。
 今回は休止中の電炉再開につながるもの。日鉄は八幡の大型電炉化を、カーボンニュートラルの取り組み推進の目玉としている。すでに稼働している広畑の電炉も含め、グループ一体になって鉄源プロセス転換を早期に実現する必要がある。
 日鉄はカーボンニュートラルだけでなく、今後の戦略展開のために人的資源の充実を求めている。同じ遺伝子をもつ直系子会社の吸収合併は、必然とも言える。ただ、国内ステンレス市場においてトップメーカーとして重しを効かせてきた日鉄ステンレスが、再び日鉄本体に戻ることは、重要な意味を持つ。専業ではなく、高炉のステンレス品種としての立ち位置がどうなるのか、業界関係者の注目が集まるところだろう。
2024年10月11日
経産省需要見通し、国内外とも低調
3Q粗鋼は2130万d、前年同期割れ
通期も23年度8600万dに届かぬレベルか

 経済産業省は10日、第3四半期の鋼材需要見通しをまとめた。粗鋼需要見通しは2130万dで前期比0・9%の微増。前年同期比では1・4%減。第1─3Q累計は6366万dの見通し。2023年度通期の粗鋼生産実績は8682万dだったので、24年度通期はこの水準を下回る可能性が高い。経済産業省では第3Qまでの見通ししか出していないが、第4Qで国内外の需要動向に大きな変化が生じる可能性は低いとコメントしており、3期連続で前年割れする公算が大きい。新型コロナの影響を受けた20年度通期実績は8278万dだった。内需水準の低さを第3Qの見通しは浮彫りにした。
 鋼材需要見通しは1931万dで前期比1・6%増、前年同期比2・1%減。前期比増の要因はゆるやかに回復する自動車分野の需要と、土木需要の下支えだ。輸出は640万dで前期比1・5%減、前年同期比0・3%の微減。前期比では一部を除き主要な需要分野は前期を上回る見通しだ。だが、増加幅はわずかなもので力強さはない。裾野の広い建設分野の低迷が響く。建築向けは前期比1・4%増。下期偏重の傾向はすっかり薄れている。
 今回の見通しの注目は輸出の減少だ。普通鋼は530万dで前期比1・9%減、前年同期比0・7%減だった。中国に起因する世界市場の悪化が背景にある。一方、特殊鋼は110万dで前期比0・4%増、前年同期比1・7%増だった。自動車需要回復は海外においても遅々としていることを裏付けている。