2020年2月27日
鋼材市況主力品種、局所戦頻発
マーケット混乱の極み
始まった在庫処分の動き

 (東京)H形鋼、薄板、厚板など市況主力品種を中心に局所的な安売りが相次ぎ、マーケットは混乱に陥っている。年明け以降、荷動きの不調は一層鮮明になりリスク軽減のため在庫圧縮の動きが流通内で活発化してきているのが要因だ。流通各社はメーカーからの仕入れ値が下がるのを予測し、今ある在庫を出来る限り圧縮しようと腐心している。2月中のマーケット悪化は流通関係者がある程度想定していたことだが、販売減に加速度がついていることから、想定を超す頻度で安値が横行するようになってきている。こうした動きは3月に入っても継続すると見られており、採算割れしても底値に行き着かないという異常事態となっている。
 今最も市況悪化が目立つのは厚板だ。店売り分野では高炉・電炉を含め数量集めを優先し、価格を下げて対応するケースが散見され始めている。だが契約残を抱え、在庫処分に苦慮する流通としては「少々の安値を提示されても買えない」と冷めた受け止め方をしている。輸入鋼材の価格水準がターゲットにされているが、それでも流通は「買えない」とかたくなだ。H形鋼も同様で、メーカーの価格姿勢が軟化しても「在庫補充すらしたくない。とにかく在庫を軽くすることだけに専念する」という声が市中から上がる。流通から見ると、高炉も電炉も価格対応がまだ「あからさまではない」と言う。高炉にとっては高すぎた店売り価格是正のハードルは高く、また電炉にとっても鉄スクラップの価格動向が先行き不透明でイレギュラー化し思い切った価格を打てないでいる。3月のメーカー側の水面下での対応に流通は注目している。市中の混乱を制するにはメーカーの底値演出が必要になるだろう。だが1つ間違えば底割れを起こし、4月以降惨憺たるマーケットとなる。今のマーケットの混乱は序章に過ぎないのかもしれない。
2020年2月26日
中国国内在庫、ついに2000万d台突入
HCや線材など2、3倍増
輸出価格更に下落、国内需給悪化で

 中国の市中在庫の積み上がりが止まらない。2月後半に差し掛かった段階で全国在庫は2千万d台に突入。1月のミル増産や新型肺炎騒ぎによる荷動き低迷で一段と在庫が増加する結果となった。増勢が特に目立つのはホットコイルと線材、棒鋼でホットは年初と比べ2倍、線材と棒鋼は3倍に膨れ上がっている。製造業の工場が約1カ月にわたって操業休止し、人の動きが制限されたことで建設工事遅延にもつながったため出荷量が大幅に減少したことによる。日系企業をはじめ外資を中心に製造業分野の工場は稼働を再開しているが、物流ネックを抱えたままだ。材料や部品在庫の状況に応じての操業のため低操業を強いられていることなどから、容易に市中在庫はさばけないと見られる。年初の全国在庫は900万d強にとどまっていた。
 中国ミルはこうした状況を憂慮してか輸出価格の連続値下げに踏み切っている。4月積みのオファーはホットコイルでFOB460j近辺まで下落、わずか1週間で20jも値下がりした。480j近辺のときは買い手側も静観していたが、ここにきて値ごろ感が出たためか、相当量がまとまったようだ。鉄鉱石のスポット価格がやや上昇していることなどを踏まえ、ミルがどこまで価格に応じるかは不透明だが、国内在庫水準が上昇を止めるのに抜本的な策が見いだせない。輸出の向け先での引き取り拒否問題なども生じており、今後も輸出に関しては態度を軟化せざるを得ないのではなかろうか。
 中国国内の価格は品種によって上げ下げが混在している。製造業の工場操業再開が好感されたのか、ホットコイルなど一部品種は小反発しているものの、一方で冷延や溶融亜鉛メッキコイル、形鋼などは小幅下げが続いている。中国国内が感染拡大防止の非常時対応となっているうちは国内市況の本格回復は望めず、輸出シフトリスクは高いままだろう。
2020年2月25日
伊藤製鉄、筑波工場で労働環境改善
「夜間操業」から脱却へ
電力契約変更で操業体制見直し

 伊藤製鉄所は4月1日から、筑波工場(茨城県つくば市)の電力契約変更に伴い同工場の操業体制を見直し、土曜日定休化や夜間勤務の減少といった労働環境改善につなげる。東京電力エナジーパートナーとの電力契約を従来の「時間帯別調整契約」から「負担平準型契約」に変更する。これまで電力料金が安い土日や夜間に稼働してきたが、電力料金の平準化を契機に「フクロウ操業」からの脱却を図る。操業体制の改善で、生産効率の向上にも結び付けていく考えだ。今回の電力契約の変更は、電力会社からの提案を受けたもの。電力契約メニューは電力会社によって異なるが、石巻工場(宮城県石巻市)でも同様の提案があれば検討の余地はあるという。
 筑波工場では現在、平日が夜間操業、土日祝日は昼夜連続操業の体制を取っているが、4月からは日曜から木曜が昼夜連続操業、金曜・土曜は不稼働日(休日)の体制にする。稼働日の生産・出荷が24時間体制となることで、これまで別々の時間帯で行ってきた業務を同時間帯でこなせる。スタッフの働き方への考え方の違いもあり体制変更に伴う課題はあったが、将来を見据えて今回の決断に至った。「土曜日の休日化」「夜間勤務減少」を歓迎する声は多く、人材確保面でも効果が期待できそうだ。平日の昼間操業が増えることで工場内のコミュニケーション醸成につなげられ、連続操業による製造コスト削減効果も見込める。
 電力契約変更に伴う操業体制見直しの動きは今後、電炉業界で広がっていく可能性がある。電炉業界の電力依存度は製造業平均比で約11倍に上り、製造コストを抑制するため休日・夜間操業を強いられてきた。東京電力はこうした状況改善につながる契約を電炉各社に提案してきており、業界内での関心は高い。すでに今年度から見直しを実施したところもある。
2020年2月21日
中国ミル、輸出向けドライブも
国内在庫増、輸出契約にも難問
4月オファー値下りも静観か

 中国の鋼材輸出ドライブが近々のリスクとして迫ってきた。1月の生産増と新型肺炎騒ぎで国内在庫の積み上がりに加速がかかっていることに加え、幾つかの国で新型肺炎の感染拡大を理由に既契約の見直しなどが始まっているためである。中国国内は湖北省を中心に戦時体制に近い統制が敷かれているため、物流が機能せず製造業現場の混乱が継続しており、在庫積み上がりを解消できる見込みはない。2月新型肺炎影響で多くの鉄鋼メーカーが減産となるが、春先に向けて主力メーカーは再び増産する兆候を示しており、需要家の操業や置き場の状況によって、輸出で思い切ったガス抜きを行う必要に迫られてきている。中国材を引き取り拒否する国もあるが、日本のように輸入に寛容な国を選んで輸出ドライブをかけざるをえない。
 中国の鋼材輸出は2018年暦年で6900万dだった。19年は6400万dにとどまり、国内需要基盤の創出により年々輸出量は減少する傾向にあった。19年12月単月も470万d弱という低水準であり、業界では懸念を残しつつも中国内需による鋼材消化に一定の評価を示す声は多かった。だが、新型肺炎感染影響が一気に広がったことで、内需消化の前提は崩れたと言って良いだろう。
 直近の中国ミルの4月積みオファーはFOBで480j近辺となっている。厚板と同水準にまでオファー価格は低下している。だが中国材引き取りに関する問題が広がるなかで、さらに値下がりを見越して商談の成立は困難になるのは必至だ。日本ミルは海外マーケット環境が安定したことから1─3月は輸出注力する向きが目立っており、こうした情勢変化の影響は少なくない。今のところ引き取り問題が生じているのは中国材だけだが、中国に次ぎ感染者数が多い日本が輸入制限の対象とならないとは限らない。
2020年2月20日
関西地区の電炉鋼材市場の行方
先安観と逆張り機会
スクラップ業界は懸命に歯止め策

 (大阪)関西の鉄鋼市場の大勢は先安観に支配されているが、商機をつかめないまま受け身に終始すれば新年度も浮かばれないことから、打開策を手探りしている。目先の焦点は電炉各社の3契実行価格と年度末の別船だが、新年度上期の需給バランスがまったく見えないなかで買いと売りをどう織り込むか、流通各社の経営スタンスが分岐点を迎えそうだ。
 3、4月にかけての視界が靄(もや)っているのは、スクラップ価格が続落するのか、底入れするのか、誰も確信を持てないことが大きい。関東の2万円割れを横目に、関西のスクラップ市況は19日現在、弱基調ながら2万円(H2)を維持。姫路地区からの流入も見られるが台割れに抵抗を続けている。関西鉄源連合会は先週の共同商談に続き、今週も3千dの入札を行い、マーケットの総崩れを回避したい意向だ。先週の2万2750円より安くとも、需給ギャップを拡大させないよう歯止め策に懸命のようだ。
 一方、小棒流通業界はスクラップ安の還元をミル各社に要求し、対ゼネコン収支を改善したい表情。H形鋼なども4月以降は利ザヤを取りたい。
 熱延コイルに関しても、高炉コイルは逆ザヤ販売でコイルセンターの赤字が続いているが、電炉・輸入コイルは採算ラインを何とか維持してきた。4月以降は高炉材の赤字を解消し、平均収支のつじつまを合わせたいところ。新年度上期の需要増加は期待薄ながら、供給サイドの事情が様変わりする可能性もあり、底値を探る機会は到来する。目下は内外ミルが売り気のまま走っており、目先のロールもアイドル状態。アジアのホット市況に逆張りできる素地もなしとしない。大手リローラーやレベラー筋が積極的なヘゲモニーを発揮できる最後の場面かもしれない。
 当面、水面下の売りと買いの駆引きが注目される年度末を迎えた。
2020年2月19日
中国コロナ禍でトルコ玉オーダー
中東への振替が進行
中国の生産減─輸出減で「新事態」

 新型コロナウイルス被害が自動車SCMへの支障にとどまらず、鉄鋼生産・需給にも波及し始めた。中国の1月産業活動水準統計はまだ上がってこないが、春節休暇の「延長」も含め、生産活動に障害が出ている。2月前半も事態の改善がなく、鉄鋼生産の落ち込みも進んでいるもようだ。このため、米国向けも含めて中国玉の輸出が滞り、ノンデリ状態に陥り始めた。
 中東地域では、中国玉の納入・出回りが途絶え気味となり、トルコミルの生産が拡大している。このため、トルコのスクラップ買いも増加し、米国のトルコ向けスクラップ価格は高値278jまで上昇した。
 中国玉は中東だけでなく、アフリカ、アジア、北米、南米にまで市場を広げてきた経緯から、コロナ禍に伴う減産が長期化すれば、国際市況にも大きな影響を及ぼす。中国の鋼材市況は年初から一進一退で推移し、コロナ禍の需要減、在庫増が市況の1千円ほどの下押し材料になっているが、需要産業活動の低下に遅れながらも鉄鋼生産が減少し、内外で供給の遅滞が表面化すれば中国相場の「囃し」材料と化す。
 鉄鉱石価格の行方もからみ先行き不透明ではあるが、足元で中国材の海外供給が中断する事態の進行に目を向けなければならない。それだけでなく、耐火レンガ、電極、合金鉄など「世界の工場」からの出荷が止まれば、中国ミルにとどまらず世界の鉄鋼ミルが生産の持続不能に陥る。自動車SCMの寸断より深刻な事態が想定され、コロナ禍の長期化が世界経済を大きく揺さぶる可能性が強まってきた。
 とりわけ耐火レンガが供給不全に陥れば、操業再開の困難度はアッセンブリー産業の工場停止とは比較にならず、中国の電炉各社のレンガ争奪戦に日本ミルの敗退は必至。製販がそうした事態を念頭に置く来期となる。
2020年2月18日
伊藤忠丸紅特殊鋼、新CC稼働
将来の「受け皿」にも
拡張余地あり、加工能力月間4000d

 伊藤忠丸紅特殊鋼は、群馬県伊勢崎市のステンレスセンターを移転し、桐生市の桐生武井西工業団地に建屋を新設した。敷地面積は約2万7790平方b、建屋面積は工場・事務所棟合わせ6900平方bと広い敷地で、将来的にコイルセンター(CC)・流通業界がさらに再編されていく場合に「主要な立場でかかわるための受け皿」(野坂哲嗣社長)という意味がある。ヤードなどの拡張余地を残している。投資額は約18億円でスリッター、レベラーラインをそれぞれ3基ずつ備えている。2月初めから稼働を始めており、加工能力は月間4千d程度、足元では約3千─3500dの加工量で操業している。
 工場内のレイアウトは正面から見て左側がレベラー、右側がスリッターラインとなっており、基本的に直線に出口までラインが続く整流化された工場だ。レベラーラインは、途中で定尺物と小板に分かれて出荷するレイアウトになっている。隣にはステンレスセンターの物流を担う平井産業運輸の倉庫があり、効率的な入出荷ができるようになっている。一部自動車関連ユーザーの工場も近くにできるなど、メリットは多い。アクセス面は北関東自動車道の伊勢崎インターチェンジ、波志江スマートインターチェンジから、自動車で約15分となっている。
 ステンレス鋼板流通は国内需要の減少傾向や製鋼メーカーの減少などにより、再編の機運が高まっている。有力CCが集まる北関東エリアも例外ではなく、複数のCCや流通が今後の再編にかかわると見られている。親会社の伊藤忠丸紅鉄鋼も、(本紙2面に続く