2019年9月20日
日鉄ステンレス、Ni系線材大幅値上げ
9─11契、2万5000円
コストアップ要因増え、次期ベース上げか

 日鉄ステンレスはステンレス線材の9─11月契約(10─12月ロール)価格を改定する。ニッケル系で前期比2万5千円上げ、クロム系で5千円下げる。ベース価格はニッケル、クロム系ともに据え置き、今回の価格改定はアロイ価格だけとなる。クロム系は前期にアロイリンクにより5千円値上げしていた。
 今回は、ニッケル系ステンレス線材だけ大幅値上げとなった。ニッケルのLME価格が夏場に急上昇したためだ。平均値で見ると6月をボトムに7月から上昇を続け、9月現在も8j台を維持している。前期の契約時点では5j台だったことから、今回は大幅な価格転嫁が必要となったもの。一方のクロム系は、クロム原料価格がピークアウトしていることを踏まえこれを反映させた。
 特殊鋼種の値上げ幅はSUSXM7とSUS303が2万5千円、SUS316が3万5千円、SUS310Sが6万5千円となっている。310Sはニッケル含有が高いため値上幅が大きくなっている。
 今回の注目はニッケル系値上げ幅もあるが、もう1つはベース価格を据え置いている点だ。アロイ価格を久々に大幅に引き上げるため、敢えてベースを据え置いた。次回はニッケル・クロム系ともにベース値上げの可能性が高くなった。主原料以外の諸コスト上昇が収まらない中、サウジの原油プラント火災の影響で原油価格上昇の公算は大きく、製造コストや物流費増加につながりかねない。影響は特殊鋼メーカーを含め電炉全体に及ぶ可能性も出ている。製品価格上昇の流れが強まるなか、懸念されるのが輸入材だ。いまだに高い入荷水準であり、国内伸線メーカーの在庫調整にめどがつきつつあるものの、輸入量の動向が注目される。
2019年9月19日
日鉄ステンレス、二相スクラップ体制強化
集荷網拡大、周知に注力
リーン二相鋼など独自製品の普及加速へ

 日鉄ステンレスは、販路を拡大している二相系鋼種のスクラップ集荷体制を構築・強化しており、さらに集荷ネットワークの拡大や周知活動に注力している。日鉄ステンレスのステンレススクラップ集荷・加工拠点のジェイエスプロセッシング(JSP)では、二相系スクラップを主要発生地近くで集荷し、効率的にリサイクルするプロセスを持つ。日鉄ステンレスは日本最大のステンレススクラップ集荷網を活かし、リサイクル面でも強みを持つリーン二相鋼などオリジナル商品の普及につなげたい方向だ。
 リーン二相鋼のSUS821L1(NSSTS2120)はじめ、日鉄ステンレスは二相系鋼種の優れた性能や品質を建材や食品設備、水処理設備、船舶など各方面へPRし、着実に適用事例も増えている。ただ、スクラップ業界などに向けて、二相系スクラップを適正価値で買取りを行っていることの周知が必要となっている。リーン二相からスーパー二相鋼種まで、いずれもクロム比率が高く(SUS821L1は21%)、一般のクロム系スクラップと一緒にされる懸念もあり、対応が求められていた。ギロチンプレスなどを備えるJSPも活用して輸送効率を向上し、社内発生スクラップは基本製鋼でフル活用中だ。最近では、中国による雑品スクラップの輸入制限により、不純物の付いたスクラップが国内に広まる恐れがあり、メーカー側も検品を強化。日鉄ステンレスは「環境に配慮し、貴重な国内発生原料であるスクラップを国内で地産地消するのが大事」という。
 日鉄ステンレス発足に伴い、旧会社の原料購買部門を統合、シナジーが期待されている。二相系鋼種スクラップ受け入れのヤードも拡張し、顧客の問い合わせも広く受け付けている。同社としては、集荷体制の周知強化の意向。ライフサイクルアセスメント面からトータルな顧客支援していく。
2019年9月18日
東京製鉄10契、全品種で値下げ
H形・ホット2000円、溝形3000円
国内市況低迷を背景に

 東京製鉄は10月契約分の製品販価を2千─3千円値下げする。H形鋼8万3千円、厚板7万7千円、ホットコイル6万7千円、異形棒鋼6万2千円などに改定する。米中貿易摩擦を受けて海外鋼材市況が下落し、市況が弱含む国内市場の現状に販価を合わせるとした。
 全面値下げは3千─5千円下げた7月契約分以来、3カ月ぶり。今村清志常務は「海外価格の急落が国内マーケットに少なからず影響を与えている」と話す。こうした状況は「1─2カ月スパンにとどまらず、やや長引く可能性がある」と指摘。その一方で、インバウンド関連含め国内建材需要が引き続き堅調と見られることや、世界経済自体が後退しているわけではなく、中国の鋼材輸出レベルも前年比で落ちており海外市場を大きく崩す懸念が小さいことなどから、引き続き販価改善のタイミングをうかがっていく考えだ。
 下げ幅2千円としたのはH形鋼、縞H形鋼、I形鋼、角形鋼管、U形鋼矢板、異形棒鋼、厚板、ホットコイル、縞コイル、酸洗コイル、溶融亜鉛めっきコイル。下げ幅3千円としたのは溝形鋼、熱延鋼板、縞鋼板、酸洗鋼板。岡山工場や宇都宮工場ではこの1カ月で鉄スクラップ購入価格を3千円引き下げているが、今村常務は「販価は鉄スクラップ相場とは全く関係ない」と強調。鉄スクラップについては「鉄鉱石が90jに回復するなか、割安感が強くなっており、とりわけ日本のスクラップは一段さらに安いところにある」とし、需給がひっ迫していないことから、すぐに反発しないと見る。
 同社が直前まで鉄スクラップ購入価格を下げていたことで、建値見直しについてはある程度流通は織り込み済。だが実行販価の動きを見極めるまで流通は静観だ。底値を誘発するには小幅すぎる下げとも言える。(本紙2面に販価表、3面に関連記事
2019年9月17日
関東地区鉄筋受注量、増加の兆し
棒鋼メーカー、大量明細に備え
鉄スクラップ相場下落受け

 関東地区の鉄筋の引き合いは落ち込んだままだが、鉄スクラップ相場の下落を受けて流通・ゼネコンが動く環境が整ってきた。流通が安値で受けて棒鋼メーカーにつないでいない案件が相当量あると見られ、流通がメーカーにつなぎやすくなれば明細投入量30万dレベルに急増する可能性がある。安値が付けばゼネコンも手配にかかる。その一方で、棒鋼メーカーは流通・ゼネコンが一斉に動くタイミングに備え、鉄筋製品販価維持の姿勢を強める。収益悪化懸念が高まる流通側と収益改善を加速・維持したいメーカー側との価格についての駆け引きは今後、激しくなっていきそうだ。
 8月の関東地区棒鋼メーカーの鉄筋受注量(明細投入量)は17万7千dで、うちベースサイズ10万8千d、細物サイズ6万9千dにとどまったもようだ。前月から2万d増えたことから「休みが多かった割にはよかった」(流通筋)と言えるが、昨年度月間平均20万dを5カ月連続で下回った格好。今年度の鉄筋需要は微減が見込まれるが、前年度平均との比較では、この5カ月で約20万d分が溜まっている計算だ。従来通りゼネコンが鉄スクラップ相場を睨んで発注のタイミングを見計らっているとすれば、鉄スクラップ相場が底に付くタイミングで手控えていた分が出てくることになる。
 ただ、ゼネコンにとって足元の鉄筋市況はまだ高いとの認識だ。鉄筋市況はトン6万8千円を付けるが、今年のピーク比で鉄スクラップ市況は1万円超下げたのに対し、鉄筋市況の下げ幅は5千円程度、トン1千円値上げした鋼種エキストラ改定分を含めると実質4千円程度にとどまる。鉄筋市況について流通・ゼネコンはもっと下がるだろうと見ている。他方、棒鋼メーカーには安値契約残に苦しんだ反省や、主原料以外のコスト上昇分を反映させたい思いがあり「鉄スクラップ相場だけじゃない」と訴える。
2019年9月13日
ステンレス流通が値上げ促進へ
9月帳破まず1万円
阪和工材は2段階で2万円値上げ

 (大阪)ステンレス流通に値上げ機運が広がるなか、大手問屋の阪和工材は9月帳破からニッケル系1万円の値上げ実施を打ち出した。12日までに全国の営業拠点に本社の方針を周知、1万円の販価底上げを図る。さらに10月も1万円の値上げを実施し、合計2万円の価格改善を追求する。
 「在庫調整も着実に進み、適正レベルに近づいてきた。ニッケル価格は6j台対応から8j台対応へと急変し、メーカーの値上げ意思は固い。今回のメーカー値上げは1万5千円だが、流通としては1万5千円では被ってきたものをカバーできない」(阪和工材)という。(本紙4面に関連記事
 【解説】 ニッケル系ステンレス鋼板を取り巻く環境は、LME価格の高騰から7月頃と相貌を異にしている。日鉄ステンレスは5日、9月国内契約販価でニッケル系薄板、厚中板の1万5千円値上げを発表。流通各社は早急に値上げ転嫁を迫られる情勢となった。
 2カ月前の7月時点ではアロイリンクで5千円値下げし、諸コスト上昇分でベース5千円値上げという価格相殺で販価を据え置いた経緯がある。増加した市中在庫を圧縮するために果断に引き受けスキップを実施(6月)した後でもあり、ニッケル安が製品市況に波及するのを抑止する狙いもうかがわれた。こうして7月のステンレス市場はニッケル値下がりの情勢下ながら落ち着きを取り戻した。それからわずか2カ月とはいえ、情勢は急変し、ミル・流通の双方でコスト圧迫に直面するようになった。「物流費など諸コスト上昇5千円」の市況転嫁は一気呵成に進まず、ステンレス流通の市況防衛線に綻びも指摘された。日鉄ステンレスはひも付き価格の改善にも取り組んでいるが、問屋筋はユーザーに理解を求めるための阪和工材の2段階値上げに注目しつつ、ひも付き価格での変化も見守っている。
2019年9月12日
日本製鉄、土木用建材値上げへ
第3四半期で5000円
輸送関連エキストラ見直し踏み切る

 日本製鉄は土木用建材について、第3四半期において5千円の値上げを行う。コスト上昇が著しいことから輸送関連エキストラの見直しも同時に実施する。鋼矢板や鋼管杭などの土木用建材については主原料や市況原料、資材費上昇が確実なことからベース値上げに踏み切らざるを得ない状況にある。同社としては年内には新価格の浸透を目指す構えだ。
 鋼矢板、鋼管杭ともに2019年度は40万dを超える需要規模が見込まれている。政府の国土強靭化対策のための総額7兆円に及ぶ3カ年緊急対策措置に伴う関連需要出現は必至だ。都市内部河川護岸工事や新名神、中部地区湾港に関するプロジェクトなどが具体化しており、足元で兆候ともいえる現象が出始めている。同社ではグループ一丸となって国土強靭化ワーキンググループを立ち上げ、多様化する災害ニーズや短工期化あるいは省力化という地域に即したニーズへの対応を行っている。素材の安定的供給などを含め同社がこうした取り組むなかで、コスト上昇による採算悪化の対処は避けて通れない。今回5千円の値上げを行うが、不退転の姿勢を鮮明にしている。第4四半期においてもベース価格改定を打ち出す方針だともいう。土木用建材において、こうして値上げを打ち出すのは今期としては初めてのこと。
 輸送エキストラについては鋼矢板は地域エキストラを設けていたが、これに加えるもの。具体的には長さ12bから25b以下のものはトン当たり2千円から3千円加算する。鋼管杭についてはもともと地域エキストラを設定していたが11年間改定を行っていなかった。今回は平均して2割価格を引き上げることにした。プロジェクト案件の場合、細かな仕様が多く輸送にも手間がかかる。運ぶエリアによってコストがかさむため昨年来改定は喫緊の課題となっていた経緯がある。
2019年9月11日
日本製鉄、8月ときわ会H形在庫4%減
7カ月ぶりに19万d台
出庫が回復する9月以降に値上げ検討

 日本製鉄がまとめた、ときわ会調べによる8月末のH形鋼流通在庫は前月比8400d減(4・1%減)の19万8千dとなり、7カ月ぶりに19万d台となった。入庫は流通の仕入れ抑制とメーカーの定期修繕の影響を受けて8600d減(12・5%減)の6万dと極めて低い水準。出庫は稼働日数が5日減の17日となったことから1万4千d減(17・0%減)の6万8400dとなったが、日当たりでは半年ぶりの4千d台だった。
 この状況を踏まえて日本製鉄は、9月契約の店売り向け販売価格を据え置いた。引き受けについては、流通各社の在庫・出庫などを精査して慎重に対応し、プロジェクト向けも含めてコストの状況について理解を求めていく。日鉄スチールも同じスタンスだ。在庫調整はめどがつきつつあるという認識で、出庫が回復すればバランスが取れるとみている。マーケットでは一部で歯抜けが出ており、盆明けは見積もり・引き合いとも芳しくなかったが、9月に入って徐々に増えつつあるという。9月は稼働日数が増えることから、出庫が回復するため、値上げを検討するとコメントした。
 堅調な建築需要と、鋼矢板を含む土木分野が需要期を迎えることから、メーカーロールは充足していく見通しだ。スクラップ市況は海外経済動向からくる不透明さはあるものの、今後国内では需要期を迎えることもあり、現行水準から上昇する可能性がある。輸送コストや副資材価格が構造的な高値状況にあることに加えて、製造設備の老朽化への投資が必要となっているメーカーとしては、採算の改善は大きな課題となっている。
 2019年度も例年通り秋需の季節トレンドを迎えるなかで「流通とメーカー双方が再生可能なマージンを意識して、販売姿勢を改めて確認してもらいたい」(日本製鉄)としている。(本紙2面に関連記事