2021年2月25日
新年度スクラップ4万円ゾーン
一歩も退けない電炉品
東鉄「風林火山」のごとし騎馬ぞろえ

 (大阪)東京製鉄が九州工場を除き、全工場のスクラップ購入価格を4万円に引き上げたことで電炉各社は緊張感を露わにしている。「上げたり下げたり迷惑だが、風林火山のごとき騎馬ぞろえは天晴」という声も高い。中国の情勢など5月労働節までの経済は順調に推移するものと見られ、鉄鋼需給・スクラップ動向も現況を維持するとの見方が強い。そうした視点から電炉各社も「スクラップ高」に肚をくくったもようだ。
 東鉄は連日500円刻みで4万円のスクラップポジションを構築し、この間の値上げ値下げの緩急が上手く作動している。「スクラップ担当が代わったんじゃないか」という声も聞かれるほど、2月はツボにはまった観がある。とくに宇都宮工場で3万円割れを実現し、3契売り出しの前に元の高値に戻した手腕に見習う点があるとされ、3月収益の好転が予想されている。
 鉄筋丸棒こそ7万3千円を据え置き業界のひんしゅくを買っているものの、H形鋼は9万3千円と業界リード価格を打ち出し、新年度の価格ステージの演出に高炉と歩調をそろえている。これは、値上げ転嫁を進めている流通市場にも安心感をもたらしており、厚板への鉄源配分も含めて絶妙といわれる。
 スクラップ価格がどこで落ち着くかは今年の鉄鋼業界の大きな関心事であり、これまで「3万5千円前後」が目安とされたのに対し、年度末で「4万円ゾーン」が頭に入った」という。これは新年度の鉄鋼価格ステージの橋頭保として市場の共感性を形成し、当面の商いの目安としても落ち着きをもって臨める水準といえそうだ。先週から今週の関西市場は、スクラップの入荷が順調に推移し、東鉄・岡山への追随も三々五々リーズナブルで、全般に安堵感が広がっている。
2021年2月24日
東京製鉄、3契販価全品種を据置き
H形とHC生産緩急で対応
海外向けは遠国もの引合い増

 東京製鉄は3月契約販価において、全品種据え置きとした。鉄スクラップ価格の反転と共に同社がどのような動きに出るか業界関係者は注目していたが、既に1月契約で超大幅値上げを実施していることもあり、今回は様子見になった。物件、在庫販売価格についてはH形鋼9万3千円、異形棒鋼7万3千円、厚板8万7千円としている。
 東鉄としては中国の春節明けの商いの滑り出しが良いこと、中央政府の増値税還付率が見直されることなどを踏まえ、アジア鋼材市況の上昇が見込めることや、国内市場もメーカー値上げ転嫁が進んでいることなどから品種により生産量に緩急をつけながら対応していく構え。2月の生産計画は全体で19万d。そのうちH形鋼は6万5千d、ホットコイルは9万5千d、厚板は1万5千dとなっている。前回、厚板生産はゼロとしていたことから、厚板については数量がまとまり次第まとめてロールしている模様。
 ホットコイルは輸出を積極的に受注しているという。最近ではアジア向けよりも遠国向けの引き合いが増加してきたという。輸出向けは国内向けと比べかなりの割高になっており、供給全体のバランスを見ながら調整していく構えだ。H形鋼は6万5千dで抑制を利かせている。
 主要地区は中小物件の低迷で流通各社が非常に苦戦しており、そのなかでメーカー値上げの転嫁を行っている状況だ。鉄スクラップ価格が反転し急ピッチで上昇していることを踏まえると、東鉄としても製品価格優先で数量を抑えざるを得ないと見られる。東鉄の姿勢は固いようだが実行価格に流通は注目している。ホットコイルは関東地区では供給はやや改善したがタイト感が継続、関西地区では輸入コイル減少が響き関東よりタイト感が強いため東鉄への申し込みがどう影響するか注目どころだ。
2021年2月22日
薄板需給、ひっ迫続きに潮目
酸洗中心に落ち着き
自動車「減産」ほか需給双方の複合要因で

 薄板需給ひっ迫も一段落の様相になってきた。品種によって濃淡があり、溶融亜鉛めっき鋼板については依然強いタイト感はあるが、酸洗鋼板、黒皮の順に市中枯渇状態は改善されてきていると言える。これには背景があって、需要そのものが減少したことも大きいという。
 材料不足のため、流通は受注に慎重になり一方のユーザーも高値の材料手当て込み発注に限界を感じるようになっていた。これが市中の動きが鈍ってきた一要因だ。そこで高炉の団子出荷で市中在庫は補充されていく。需給双方の要因により酸洗を中心に極端だった需給バランスがアジャストされる方向へと進みだしている。
 酸洗、冷延ともに9万円台で取引されており、こうした高値がすぐに落ち着くわけではない。ましてや表面処理鋼板については転嫁の本番がこれからなのでコイルセンターの売腰は依然として強いまま。だが、同じ薄板マーケットにありながらも需給の点においては温度差が生じ始めているのも事実だ。高炉の超大幅値上げが仕入れに本格的に効いてくるのはこれからだ。材料枯渇による仮需ブームで特価が出たのは良いが、流通としては、仕入れとバランスした販価を保っていく必要がある。行き過ぎた価格帯はのちの反動を招くため、コイルセンター関係者も価格設定に慎重な姿勢を示すようになっている。
 高炉供給のタイト化、輸入材入着減で仕入れの選択肢がなくなり、薄板店売りマーケットは異常な加熱ぶりを示した。今ようやく冷静な状態に戻ったといえるのではないか。一部では「なかったはずの在庫ができてきた」という声もある。複合的要因で正常化にむかいつつある需給だが、ベース市況の在り方も流通各社が見直す必要が出で来るのではないか。
2021年2月19日
原料炭価格動向読めない展開に
中国の豪州炭受入れで
欧州は豪雪で独ミル生産中断の影響も

 中国由来の原料価格の変動に不透明感が強くなってきている。中国の豪州炭輸入問題解消の糸口が見えてきた影響が読めないためだ。昨年に続き一部の港で豪州炭受け入れの動きが出ており、80万d規模の受け入れ規模になる模様。原料炭需給の変動がもたらす日欧鉄鋼業への価格・コスト影響から目を離せない。豪州との通商問題により昨年10月から中国は豪州炭受け入れを拒んでいるが、これによる滞船で海上にある石炭の数量規模は200万─300万d規模に及ぶといわれる。10月以前に到着し滞船しているケースも多く、新型コロナ禍で船員も疲弊している。中央政府が人道上の措置を大義名分とし、今後なし崩し的に豪州炭の受け入れを拡大する公算が大きいと関係筋は見る。中国が豪州炭輸入を正式に解禁すると、豪州炭は需給環境の変化から価格が上昇し、中国炭・モンゴル炭は下落する。
 中国の原料炭スポット価格はCFR210j超えで、豪州炭受け入れ拒否のダメージは国内ミルに広がっており、政府としてもこちらの対応も急がねばならない状況にあった。豪州炭との価格差は50─60jほどある。こうした中国側の対処の変化で中国国内の原料炭価格が少し落ち着くとは見られるが、問題はミルの生産動向に再び影響を与える可能性が高いことだ。
 中国の2020年輸出は5300万d強だった。8年ぶりに6千万dを下回る水準になったが、昨秋以降月単位の輸出は少しずつ増加してきており予断は許さない。中国ミルの輸出対応も変化していてかつてのように無謀な投げ売りはしない。国家政策である一帯一路の考え方をベースとし決め打ちで販売するようになっているため、表面化しにくい面がある。中国以外では欧州の数年ぶりの豪雪被害も原料市況に影響を与える可能性も。独ミルは交通網混乱で製品出荷できない状況に陥り生産中断している。
2021年2月18日
「粗鋼9000万d時代」の流通整備
造船鋼材など限界水域
鋼材値上げに逆行する鉄骨・鉄筋加工賃

 日本製鉄、JFEスチールが粗鋼9千万d時代を見据えた生産構造改革を進めるなかで、鋼材流通市場にも淘汰の嵐が吹きつけそうだ。製造業、建設の分野を問わず、生存市場圏のなかで事業転換を迫られる鋼材流通業者が増えそうだ。すでに厚板販売加工業者や鋼管流通などで適者生存の法則から販売・加工業からの撤退が積み重なってきたが、これまでは一部の受け皿になってきた商社・問屋も吸収の余地をなくしており、寒風に吹きさらされるケースが避けられそうにない。これまで大手・中堅の鋼材特約店で資産勘定が成り立つケースでは倉庫業への転身なども見られたが、財務内容の悪化が進むと資産活用の道も閉ざされる。
 鉄鋼流通の時代の波は、伝統を誇った老舗の問屋業が新興の都市型特約店に市場を食われていき、大型在庫ツールを活用して覇を競った大型店も直送「空中戦」営業の過当競争の前に機能を落とした。その間、厚板シャーや鋼管流通などで興亡を繰り返しながら商社系・独立系の鋼材流通が1億d時代を担ってきた。しかし、昨年来の高炉生産構造改革は高炉、厚板ミルの休止など市場に大波となって押し寄せている。
 なかでも造船鋼材の不振は厚板だけでなく平鋼、形鋼、鋼管などの需要縮小を招き、関連流通に打撃を与えている。縮小する鉄骨、鉄筋市場では昨年来、ファブ加工賃、鉄筋加工賃の切り下げ圧力が強まり、鋼材値上げに逆行する動きとなっている。専門的に分化し生産能率を改善したファブや、鉄骨商社としての生存SCMを構築して生き残ってきた業者が再び苛烈な生存競争に直面している。これからの1年は「粗鋼9千万d時代」の適不適を具体的に突き出すものとなり、心身の陶冶を怠った流通に退場が迫られることになりそうだ。
2021年2月17日
再び鉄スクラップ高値圏入り
やはり4万円圏か
東鉄の販価引下げ観測は後退

 中国の春節明けとともに鉄スクラップ価格が再び高値圏に入ってきた。この間の東京製鉄のドラスチックな上げ下げが、17日からの再引き上げへとつながり、3契売り出しを前に東鉄販価の下方修正の観測は退いた。
 電炉各社にとってスクラップの急激な上げ下げは二重の刃で、コストに良ければ販価に悪いというジレンマ。昨12月から1月のスクラップ急騰で製品販価の大幅値上げ環境ができた途端、スクラップ急落で元の木阿弥と鋼材市場の心理はスクラップの乱高下に振り回されてきた。関東と西日本では価格水準が異なるものの、宇都宮の急落・急騰は人騒がせな事態となった。H形鋼の製造コストに関わるだけに、この動向は市場の関心を集めた。
 しかし、宇都宮の買い値が3万7千円となったことで、当面のスクラップ価格の安定ゾーンと目された「3万5千円ライン」は下限となる公算が大きくなった。この間、西日本では3万7千円どころで下げ一服となり、再び東鉄が引き上げる状況を迎えた。九州地区が3万8千円に戻されたことで、地場電炉は再び4万円の鉄源コストで3月商いに乗り出す。関西でも東鉄・岡山の3万8500円は大阪湾岸価格を引っ張り上げる効果を持ち、西日本全域に1契製品値上げの浸透を促す材料となってきた。
 1月、2月の「鉄スクラップの乱」は、やはり中国の鋼材生産増加・スクラップ輸入の拡大に導かれ、またASEAN・東アジア全域の市場活性化に落ち着いていくようだ。つれて、国際ビレット市場なども強含み、コロナ収束・経済活性化の道を進みそうだ。  いわば、この1カ月のためらいの時から、21年度の新ステージが明瞭になってきたといえる。3契売り出しを前に、ミル・流通とも既定路線を追求する場面だろう。
2021年2月16日
鉄連が「ゼロカーボン」基本方針策定
超革新技術「支援必要」訴え
カーボンプライシング導入は反対

 日本鉄鋼連盟は15日、CO排出量の実質ゼロを目指すカーボンニュートラルについて「ゼロカーボン・スチールの実現に向けて果敢に挑戦する」などとする日本鉄鋼業の基本方針を策定した。CO排出量を約3割削減する「COURSE50」確立に加えて、超革新的技術開発「水素還元製鉄」の実現などに向けても取り組む。一方で、ゼロカーボン・スチール実現には「ゼロエミ水素、ゼロエミ電力の大量かつ安価安定供給」「経済合理的なCCUS(CO回収・有効利用・貯留)の研究開発・社会実装」が欠かせない。政府には国家戦略の構築や財政的支援などを訴えた。
 政府が掲げた2050年「脱炭素社会」実現に向けては課題が山積し、鉄鋼業界だけの取り組みには限界がある。鉄連は政府の「野心的な方針」に賛同するとの立場を示し「技術、商品で貢献する」「生産プロセスにおけるCO排出削減に取り組んでいく」とした。ただ、ゼロカーボン・スチールの実現に向けては「極めてハードルの高い挑戦」には変わりはない。当面は「スクラップ利用拡大」「中低温等未利用廃熱・バイオマス活用」など様々な手段を組み合わせて対応していく考えだ。
 期待される水素還元製鉄は「有史以来数千年の歳月をかけて人類がたどり着いた高炉法とは全く異なる製鉄プロセス」で、実現にはかなり高いハードルがある。追加される莫大な研究開発コストは素材性能や生産性の向上に寄与しないという問題もある。その点については政府・国民の理解・負担や、国際競争上不利にならない条件も不可欠になる。鉄連は、炭素税や排出量取引制度などの追加的なカーボンプライシング施策の導入は技術開発・設備投資の原資を奪うもので「イノベーションを阻害し、結果的にゼロカーボン・スチールの実現に逆行する施策」と強調。政府に冷静な判断を求めていく。