2022年5月24日
中国発、アジア市場混乱の行方
市況大底局面到達か
上海都市封鎖解除秒読みで

 アジアの鋼材市況が大底局面にきている。中国では5月第3週時点でホットコイルの7─8月積みオファー価格が前週より30j強値下がりし、FOB745jとなった。アジアミルも値下げはしているが、700j台中ごろの水準にとどまっており、中国の上海ロックダウン解除如何でこの流れは変わるだろう。鉄鋼主原料価格も底打ちしており、収益面を考慮するならば、アジアの各ミルはこの低価格での輸出競争は回避したいところだ。
 中国では6月に上海ロックダウン解除を模索し動いており、製造業の活動水準も徐々に上向き始めている。自動車部品の在庫も増えてきており、組立ラインの稼働率が上昇すれば、鋼材需給のアンバランスも解消される。中国国内におけるミルの主要品種在庫は770万d台にとどまっており、需要産業の活動水準が低レベルに抑えられている中で健闘している。
 主要ミルは輸出で一時的なガス抜きをしており、これが700j台のホットコイルの価格の背景にある。中国の月間輸出は500万d程度となっており、アジア市場の脅威と呼べるものではない。ただ、韓国・台湾・ベトナムミルの輸出価格の基準となっているだけに、中国ミルの輸出価格について慎重な見方が必要だ。
 今後のカギになるのは、自動車産業の動きだ。中国だけでなく半導体が不足しているという点では目先が立ってきたという業界関係者もいる。日本の自動車メーカーについても同様で、アキレス腱になりうるのは、半導体よりむしろ樹脂関連の部品だという。以前、新型コロナ感染拡大で東南アジアの部品メーカーの稼働が停止した際に、この分野の部品の調達が最も問題になった経緯がある。こうしたリスクを含めてアジアの鋼材需給の次なる変化を見る必要がある。
2022年5月23日
ビレット商談も消滅で困った!
アジア市場は様子見
スクラップ安で暗転する小棒電炉

 スクラップ急落のなか、アジアのビレット商談が姿を消した。これまでビレット輸出で固定費負担を軽減してきた小棒ミルにとって、今後6月以降の採算好転に黄信号といえる。鉄筋市況を11万円前後まで押し上げ、スクラップ安でスプレッドを稼ぐことができれば6月以降の小棒ミル経営に明るい灯がともるのだが、足元はスクラップ安が追い風になりそうにない。
 小棒電炉の契約残は商慣習見直し・長期契約の洗い直しなど改善活動もあって、販売単価は改善が進んだ。しかし、4月前半までのスクラップ急騰でスプレッドが急速に悪化し、電力、副資材、輸送費などのコストアップも続いている。これまでならスクラップが急落すればスプレッドが改善し、収益好転のサイクルに入るところだが、今回は事情が違うという。
 鉄筋各社は、これまでに形成した10万─11万円の販価を維持するため懸命だが、マーケットは九州地区を除き、いぜん沈滞し数量拡大が見込める情勢にない。スクラップ安を背景にゼネコン筋など市況の値下がりを予想する向きも多く、そうした声を食い止める「防衛戦」の局面となっている。これまで、内需不振の下でも操業固定費の軽減に貢献してきたのがビレット輸出で、3月まで月間数千dの輸出でも収益貢献度は小さくなかった。
 アジアのビレット市況はFOB日本で9万円台まで上伸し、6万円のスクラップでも収益を挙げられたが、スクラップ急落下で新規商談はすべて止まった。スクラップ輸出商談も止まるなか、底値は見当がつかず、商社も動きようがない状態という。鉄筋各社にとっては契約残のボリュームも減少し、新規成約物件もないなかで「耐久戦」を強いられる事態といえる。ビレット商談は、いわば「ボーナス」のようなプラス要因となってきただけに、6月以降の操業コスト上昇が響く。
2022年5月20日
スクラップ急落で揺らぐ鉄筋市況
市場へ歯止め効果如何
共英「12万円据置」で市況崩落食止めく

 (大阪)共英製鋼が19日、6月契約の異形棒鋼販価を前月の12万円に据え置くと発表したが、スクラップ急落で浮足立つ市場ムードを食い止めることができるか節目を迎えた。共英があえて「12万円」据置きと発表したのを裏返せば、すでにマーケットで「あり得ない」との認識が広がっているのを打ち消す狙いだといえる。この思惑が市場に通用するかが当面の焦点となってきた。
 スクラップ価格は東京製鉄が4月の高値6万6500(宇都宮)から19日までの1カ月で6千円の買値引き下げを行い、さらに20日からの1千円引き下げに動き状況が急転した。不振の海外環境を受けたもので、ウクライナ危機でイレギュラーに高値振れした部分も剥がれて6万円割れとなった。GW明けにスクラップ価格の退潮が明らかになると、ゼネコン、商社・問屋・特約店など鉄筋市場は見積もり依頼が途絶え、この10日間、まったく商談がなくなった。
 引き潮のなかでの東鉄の6契売り出しは5契据置きとされたが、これで大方の方向は決した。鉄筋市場に占める東鉄のシェアは大きくないが、7契で下方修正となればゼネコンは相応の口実を得ることになる。
 実際、このところ西日本では鉄筋の一切の引き合いが消滅し、ベース11万円の実勢化は成らなかった。関西では10万5千円どころまでの成約は散見されたが、10万8千円は「おまけ」。実態は10万2千─10万3千円の東鉄建値止まりと見る向きが多い。  共英の「12万円据え置き」は、こうした事態に敢えて異を唱え値崩れを防止するのが意図だが、長年の鉄筋市場の本能的態勢は電炉各社とスクラップの国際需給を見定めるまで相場観に蓋をしたまま帳破を迎える。
2022年5月19日
日鉄、物件H形価格値上げ加速
22年度累計2万円幅
外法はエキストラ入れ3万円に

 日本製鉄は建築物件対応のH形鋼で大幅な値上げを行う。すでに4月からこうした動きを本格化しており、これをさらに進展させる形。2020年度末と比べ2万円の上げ幅になる。同社では外法H形鋼については20年度末比でベース2万円上げに加え、拡大サイズエキストラとして1万円とし合計3万円の値上げとする。
 日鉄では店売りサイズ対応は、東日本地域において日鉄スチールに製販とも任せているが、大型の再開発案件や物流倉庫案件などプロジェクト向けは引き続き日鉄が供給を担っている。日鉄としては日鉄スチールとグループ連携を強化し、建築市場における価格の適正化を目指していく方針。
 先日は土木商品について値上げ方針が明らかになったが、建築物件対応において値上げ幅を鮮明にして値上げ方針を出すのは同社としては初めてのことだ。物件ごとの交渉となるため、価格是正を進めるのは非常に難しさの伴うものだったが、今回の日鉄の価格是正に対する強いメッセージ性と具体的な取り組みは、建設業界にインパクトになる。
 日鉄スチールは6月積みについてH形鋼店売り販価を据え置きとしたが、定期修理影響を理由として2カ月連続で引き受け削減を行っている。5月積みで従来比5割カットを行ったが、6月積みもその方針を継続する。グループとして物件・店売り分野において取り組み姿勢をはっきりさせたことで、市場も好意的に受け止めそうだ。
 店売りの市場価格は間接的に物件対応価格の水準に影響される。この点において日鉄の方針はプラスに働く。大型サイズを手掛ける東京製鉄やヤマトスチールにおいても、日鉄の動きは刺激になる。今回は日鉄グループの新手といえそうだ。(本紙2面に関連記事
2022年5月18日
関東H形鋼、市況形成にピンチ
連休明け12万円固めならず
転嫁が追い付かず苦渋の関係者

 (東京)H形鋼主力流通がピンチに陥っている。5月後半戦に入ったがまだ12万円大台を固め切れていない。背景にあるのは販売量回復の遅れと、鉄スクラップ価格の下落だ。大型案件は別として中小案件の回復度合いがなかなか進まない。関係者によれば5月末に12万円台半ばの水準に達していなければメーカー値上げを捕捉するめどすらつかなくなる。地区の流通構造の変化により、仕切り役が不在であることが流通全体を窮地に陥れている。
 大手流通は値上げに積極的に取り組んでいるが、店によって価格差がそのまま残っていることがネックだという。仕入れの事情は異なるため、各自の販価に差は生じて当然だが、それが5千─6千円離れているとなると、流通全体の価格ピッチは上がらなくなる。H形鋼に関しては収益の状況が苦しいことから、メーカーは数量と安値を引き換えにするほど余裕はないはずだが、流通業者の資金力の違いからなのか、この販売価格の格差は歴然と残っている。
 関東地区は商社系列の増加と、一部大手流通のシェア拡大により、市況の行方は一握りの流通が圧倒的な力を持つようになった。競争論理がより強く働くようになり、その他の流通が売腰強化に挑もうともなかなか窮状を抜けだせない。苦労しているところに鉄スクラップ価格の下落に直面したのだ。だが、メーカー値上げがこれで一段落するとみるのは早計だ。
 鉄スクラップ価格は海外情勢に左右されており、その中心にあるのが中国だ。中国政府は6月からは上海を中心にロックダウンを解除し、経済正常化を優先するという話も出ている。このまま転嫁が未達のままでは流通は逆ザヤ商売を引きずるだけだ。市況形成の在り方を大手各社がもっと真剣に捉えるべきだろう。
2022年5月17日
東京製鉄、6月販価に冷静な反応
4カ月振り全品据置き
高炉大幅上げ背景に受注集中か

 東京製鉄は6月販価について全品据え置きとした。全品据え置きは4カ月振り。鉄スクラップ市況がピークアウトしており、東鉄自体も直近で購買価格をトータル3500円値下げしていたことから、据え置きは流通関係者の予想の範疇といえる。高炉の値上げにより薄板類を中心に同社への申し込みが集中していると見られ、据え置き様子見にも余裕が感じられる。
 5月の生産計画は全体で27万dとした。ホットコイル12万d(このうち輸出3万d)、H形鋼11万dなど。6月も国内高炉の大幅値上げを背景に、受注が増えそうだ。同社が期待しているのは国内の建材需要だ。製造業など非住宅分野の健闘や、首都圏や地方主要都市の再開発案件の活発化で、今下期以降、当分は建設需要は一定のボリュームで推移すると見ている。
 薄板について3品在庫は減少に転じたものの、絶対量としてはまだ高めと見て、製品価格には慎重になったもようだ。
 東鉄の据え置きは、市況にマイナス影響をもたらすことはないと、流通関係者は見ている。高炉の大幅値上げが先行したこと、鋼板類を中心にして店売り供給を自重しているように見受けられることなどから、店売りマーケットは徐々に整備されていくという見方が強い。薄板流通も保険をかけていて、東鉄の契約残消化と、自動車など関連需要回復のタイミングを見計らっている。
 鉄スクラップのピークアウトも、東鉄にとってはスプレットの拡大につながる。鉄スクラップの国際マーケットは、中国の上海ロックダウン動向次第ではあるが、一時的な変動も東鉄にはプラスに働く。鉄鉱石のスポット価格など、鉄鋼主原料の値下がりは限定的。鉄スクラップが先行して値下がりしたが、下げ止めもそう遠くはなさそうだ。(本紙2面に関連記事
2022年5月16日
日本製鉄、厚板エキストラ見直し
7契から薄物・幅狭対象
建値に対しプラス最大6000円

 日本製鉄は、厚板のサイズエキストラを抜本的に見直す。取引先に対し7月契約分から薄物や幅狭なものについて最大6千円のエキストラを設けるほか、今後も板厚や板幅などを対象とした改定に取り組み、商品価値と製造コストを踏まえ、適正な価格体系を構築していく。全分野を対象にエキストラを見直す。
 7月契約から建値に対し最大6千円の値上げとなるのは、板厚6_以下の薄物、また板幅2千_以下の幅狭のものが対象。なお、板厚4・5_、あるいは6_以下で板幅が2千_を超えるものは従来の建値通りで販売する。今回のエキストラ見直しの背景にあるのは、同社の厚板ラインの集約である。厳しい構造改革を実施するなか、同社は直近では名古屋のミル休止も決断し2024年末には2ライン体制となる。長引く造船不況と不安定なエネルギー需要動向は、厚板の世界に確固たる存在を示し君臨してきた日鉄に、大きな方向転換を決意させたのである。2ライン体制ではこれまでのような供給実現は厳しい。2ラインだけでいかに効率化し、できるだけ多くの供給量を確保するには、製造のストライクゾーンを絞り込むしかない。
 こうしたことが今回のエキストラ大幅見直しにつながったが、板厚と板幅でマトリックスにエキストラ設定するというのも、海外では当たり前であり日鉄が国際スタンダードに合わせたという部分もある。
 日鉄では取引先に対し理解を求めているが、製造設備集約が決定した時点で、業界としてもこれは想定されたことだろう。最終需要家に至るまでの中間加工工程を担う厚板シャーにおいては、材料発注や物流体制の見直しも懸案になっていくと見られる。加工流通としても新たな時代に生きるメーカーへスピード感を持って対応することが必要になる。