2024年9月13日
鉄筋の出直し製販とも手探り
足くじく高所からの着地
スプレッド流通還元で「適正化」

 (大阪)鉄筋各社の10月販価が大きな焦点となってきた。来週には関西小棒各社、九州地区小棒各社の10月積み販売スタンスが明瞭になるが、急激なスクラップ価格の下落と下期政策の位置づけに困惑している。8月までスクラップは弱基調ながらも5万円中心に推移したのが、1週間ほどで7千円の下落となり、製販が出直しの着地価格を見失った。秋工事スタンバイの中小建築物件の引き合いは引っ込み、来年の着工案件も商談が消えた。
 「出直しが必要と思うが、どの辺が適正なのか苦慮している」(メーカー筋)という声が多い。「先が見えないから指値できない」(問屋筋)と「整地」を待つ格好だ。従来なら、スクラップ価格の下落に沿ってオファーを引き下げ、新価格帯での商いに移るのだが、これまでスクラップの値下がりを無視し、社会コストなどの上昇を理由に製品価格の「据置き」を続けた。表裏のない次元はなく、この間にはさまざま実行価格も指摘された。「スクラップに連動しない」鉄筋の世界へと上昇するかのような思いのなかで、西日本地区はベース10万円アップの市況を提示し続けた。無論、9万円台の実勢取引も散見されたが、関東地区、中京地区の11万円高値にも牽引されて高所に陣を張ってきた。
 この10万円の楼閣がさすがに下期は持ち堪えられそうにない。商社・問屋筋が指値を出せない状況は「底が見えない」ということであり、鉄筋各社もスプレッドをあまり吐き出したくない。4万3千円のスクラップなら東京製鉄の9万8千円という建値は不適切となるが、9万円なら適切という論理性もない。「高所から下手に跳び下りれば足をくじく」というものの、階段の準備はない。かくて週初めから、鉄筋は暗闇の手探りにも似た攻防を迎えた。
2024年9月12日
関東鉄源鉄スクラップ、9契輸出入札
4万2000円台、25カ月ぶり安値
電炉過去最低生産、海外市場も低迷

 関東鉄源協同組合は11日、9月契約の鉄スクラップ輸出入札を行った。落札は1番札のみで、価格は4万2720円、1万5千dだった。向け先はバングラデシュと見られる。4万2千円台に下落したのは25カ月ぶりで、前月比5236円安。円高に振れた影響はもちろんのこと、世界的な製品需要の低迷が挙げられる。
 応札量は11万8千dで14社15件だった。1社は時間切れだったという。今回2番札は1番札とかなり近い水準だったという。数量は1万dあった。1番札のみとしたのは、8月契約の船積みがまだ終わっていないためだ。台風の影響でベトナムからの配船が間に合わない。船積みは10月にまたがるといわれている。9月契約分の船積みはこの後になるため、スケジュールを考えて見送った。
 浜値はすでに4万円を切っている。建築需要低迷と輸出市場の悪化で、電炉各社の操業は低下しており、次月以降の入札に与える影響は大きい。関東電炉の8月生産量は28万dとなり、過去最低まで落ち込んだという。メーカーは荷受け制限や荷止めを行い凌いでいる。関東に限らず国内の鉄スクラップ需要は減少傾向にある。10月以降もこの傾向は変わらない。建築需要に回復の芽はなく、かと言ってメーカーにとって調整弁となる輸出も有効ではなくなった。中国が半製品をあちこちにばらまいており、日本製ビレットは価格面で太刀打ちできない。中国製ビレットはベトナムにも大量に輸出されており、ベトナム国内の需給にも影響を及ぼしている。
 国内の鉄スクラップ市況は新たなステージを迎えつつある。関東鉄源の入札結果はその流れを加速させる。スプレッド縮小を踏まえ、メーカーが販価設定をどうするか。9月の東鉄売り出しに再び注目が集まる。
2024年9月11日
アジア市場さらに混沌、輸出も下落
鞍鋼、10月国内HC250元下げ
ミル9月増産で市中先安感強まる

 中国大手ミルは10月積み国内価格をさらに値下げした。鞍鋼はホットコイルや厚板について200元から250元の値下げを行うとした。今回は宝鋼の公表前に方針を明確にした。珍しいケースだ。9月第1週の国内市況は大きく崩れた。前週比でホットコイルは190元、厚板は130元も値下がりした。ホットコイルはついに3千元台際にきた。
 鋼材主力品種の週生産は890万d。2カ月ぶりに増加。増えたのは鉄筋とホットコイルだった。8月下旬の段階で市況が一時戻したため、ミルは9月から増産モードに。秋の需要期に入ったが市中の動きは冴えず、ミル増産で先行きに弱気も出て9月第1週は主要品種全てで市況が大きく下落することになった。大手ミルは8─9月積み連続で値下げしている。鞍鋼が3カ月連続下げとしたが、これに追随する動きが増えるだろう。8月の粗鋼生産はまだ公表されていないが、輸出は949万dで前月比220万d増加した。増産、値下げの悪しきスパイラルに陥っている。
 中国国内市況はホットが190元下げたのに対し、冷延は160元下げにとどまった。ホットと冷延・めっきについては下げ幅に温度差がある。ただ、薄板の品種間での値差が圧縮されており、次月以降のミルの価格対応が注目されるところだ。ミルは国内価格を下げており、輸出価格も下落。10月、11月積みについてホットコイルベースで460jまで下げた。足元の高炉原料価格では追いつけない水準。もう下げ代はないはずだが、果敢に攻めてくる。こうなるとアジアのホットコイル市況は400j台後半さえ維持できず、400j前半へと移行していく。原料価格の下落で日本や他国のミルは価格競争にさらされながらも少し息をついていた。だが、中国はさらなるチキンレースに世界を巻き込もうとしている。
2024年9月10日
ステンレス製品価格形成、防戦一方に
Ni値下がりと需要減、Wパンチ
薄板は輸入増加が下げ圧力拍車

 ステンレス流通の値上げの動きがついに頭打ちとなった。主原料価格の値下がりと為替の円高により、製品価格設定のあり方が一変した。流通関係者は需要低迷の最中で、販売先からの値下げ圧力にさらされている。中間期決算が迫っており、流通にとって価格水準を守るのは相当高いハードルとなる。
 8月までは値上げに対して、流通の強気な声が聞こえてきていた。世界経済の停滞と中国経済の低迷が状況を変えた。主原料価格も値下がりした。製品相場への影響はすぐに表れた。Ni系薄板では6月からトン3万円程度ベース材相場が上昇した。ところが、最後の仕上げとなる1万、2万円値上げは通せないまま流れが変わった。Ni系棒鋼は、流通の値上げ自体が空振りに終わった。タイミングをつかめなかった。メーカー筋は「大手ミルが値上げに動かず、今後の値上げは難しくなった」とサジを投げる。
 Ni系薄板は7月頃までは最大5万円の値上げを標榜する流通もいたが、慢性化している輸入材の悪影響に加えて、LMEのNi価格が下落したことがダメージに。半導体関連や産機向けなど回復はいまひとつだ。中心相場は夏場に61万円程度まで上がってストップした。全国ステンレスコイルセンター工業会の在庫統計などから市中在庫に過剰感はないが、国内市場の輸入材比率(Ni系)は流通市場で過半数を超えたともいわれ、国内材の転嫁の障害になった。Ni系棒鋼は、ミルや流通の値上げの腰が重い。販価引き上げの意志は流通によってそれなりにあったが、ミルの値上げ姿勢にばらつきがあったり、Ni価格も下落したりでうやむやになってしまった。
 薄板について中国ミルの輸出シフトにより、アジアでの需給バランスはいっそう悪化。海外とは対照的に高値に到達した日本市場は魅力だ。輸入材の入着は高水準のまま推移する。流通は大きな潮目の変化に直面している。
2024年9月9日
日鉄、次世代自動車コンセプト進化PR
ECO3軽量化・CO2削減推進
複数部品の一体化技術、岡本氏講演

 日本製鉄は次世代製自動車コンセプト「NSafe―AutoConcept」の軽量化技術を更に進化させたECO3(エコキュービック)をオートモーティブワールドで大々的にPRした。ECO3はカーボンニュートラル社会の実現に向けた新たなコンセプト。エコノミー(コスト低減)、エコロジー(軽量化・環境対応)、エコシステム(最適量産システム)を要素としている。展示会では講演会が開催され、同社の岡本力・技術開発本部鉄鋼研究所鋼材ソリューション研究第一部長が、自動車業界を取り巻く環境変化に合わせ、新たなる進化を遂げる同社のソリューションを説明した。
 岡本部長は昨今話題のアルミギガキャストについても言及。「数十個の部品が1つの部品として一括成形できる点で変化を与えた技術だ。複数部品の一体化は自動車メーカーの最近のトレンドだ。こうしたことを背景に我々も開発を進めてきた」として冷間プレスによる一体化を紹介。「複数部品の一体化を実現。これは乗務員を保護しつつ、車体の軽量化において非常に強い提案となる」と話した。
 ホットスタンプによる大規模な部品一体化も紹介、1つひとつの部品に対する異なる要求に応え得る一体化部品を提案できるとした。自動車メーカーはEVシフトを進めるなかで、ガソリン車よりも重くなる車体の軽量化について、あらゆる観点から技術的アプローチを行っている。  日鉄としては素材と利用技術を抱き合わせたソリューション営業を展開、複雑な要望に応えている。今回の講演ではそうした技術開発力の強みを大々的にアピールする良い機会になった。リサイクル性と言う点で鉄は他素材に比較し優れている。岡本部長はリサイクル時の材質低下が生じにくいことも大きな強みとした。
2024年9月6日
薄板3品在庫7カ月ぶりに大台割れ
7月末在庫394万d、製販共大幅減
高まる輸入材リスク、ついに34万d

 7月の薄板3品在庫は394万6千dで7カ月ぶりに400万dの大台を割った。前月比12万8千d減、前年同月比1万1千d増。7月はメーカー・問屋・コイルセンターの全てで在庫が減った。メーカーは6万5千d、問屋は3万8千d、コイルセンターは2万5千dそれぞれ減少した。在庫減少幅の拡大は稼働日数の増加による効果のほか、市中で盆前後始まった在庫圧縮の動きが影響したようだ。
 メーカーの在庫は熱延を除き、冷延と表面処理鋼板で減少した。自動車向けの回復効果と見られる。コイルセンターの場合は、熱延・冷延・表面処理全てにおいて在庫減となった。内外格差の影響で市中における輸入材比率が上昇。東西の港で滞船問題を引き起こすまでに至っている。
 今後、内需の回復は遅々としたものになる。その中で輸入材の存在はさらにリスキーなものとなる。7月の3品輸入は34万1400dだった。5・6月は31万d台で推移したが、ここへきて大きく増加した。韓国材は冷延・GA・GIで増加、中国材は黒皮・酸洗・GIで増加している。絶対値としては韓国材が最も多いが、中国材の増加は近年目覚ましいものがあり、今年は中国ミルの輸出シフトでさらに増勢が拡大した。
 高炉周辺ではこれまでにないほど、輸入材の問題に対する厳しい見解が出ている。とくに中国材に関しては今後も簡単に増勢が収まらない以上、通商措置の必要性を追求する声も上がり始めた。中国材の影響は世界に拡散し、それが元で日本向けの輸入材が増加する悪循環に陥っている。薄板3品在庫の動向に確実にネガティブな影響をもたらしている。市中はその流れに巻き込まれている。ノーガードだった日本もADだけでなくSGも視野に入れ対策を急ぐ時期に来ている。
2024年9月5日
薄板市況不透明感漂う中で唯一の支え
高炉、店売り調整を我慢
原料コスト低減で輸出シフト継続

 薄板国内市況形成において、高炉のツッパリが寄与している。輸入材や国内電炉とは一線を画した価格水準を貫くことで、市中価格下落を抑えている。内需不振で高炉は余剰玉のリスクを抱えているが、国内放出には強い抵抗を示し耐えている。原料価格の下落に対して市況品価格は連動する。流通業界は、そこにある種の期待を持っていた。だが、実際の高炉の対応は堅かった。
 国内外の需要不振により、高炉各社は実質減産となっている。第1四半期業績公表時の通期予想では前年度に比べ粗鋼生産量を落としている。日本製鉄とJFEスチールの見通し修正分は合わせて90万dに及ぶ。為替の変動と原料価格の下落、そして国内外の製品市場低迷に見舞われ、高炉は今最も苦しい環境に置かれている。流通関係者の想定では店売りに対して強力な売り圧力が働くと見られていた。どこのメーカーも流通に対して多少なりとも数量を増やして欲しい、との要望を強めている。
 だが、価格に関する部分はこれまでの路線から逸脱する姿勢が見られないと流通関係者はいう。「輸入材が増えて、国内電炉もそれに対抗する。ここに高炉は決して立ち入らない。数量は欲しいが同じ次元に価格を下げる必要はないと考えているようだ」。内外格差が拡大したため、輸入材の価格水準を射程にいれるならば、高炉は相当な収益悪化を避けられない。現段階で高炉は輸出シフトで切り抜けている。原料コスト低減によりまだ競争力はある。店売り分野の安値に敢えて参戦はしない。もちろん例外のケースはある。9月の中間決算対策で市中が騒がしくなっているのは、もっぱら流通業者由来のものだ。先の見通しが効かないなかで、高炉の踏ん張りが支えになっている。