2020年4月3日
価格ノミナル化マーケット不全
今期生産計画「破綻」か
釜山向けスクラップ2万円に下落

 鋼材価格は3月期末からノミナル化がさらに進行し、新年度の商談の駆引きが混沌としている。4─5月積みロール編成は、高炉、電炉、リローラーともに減産を覚悟しているとはいえ、出荷明細は不確定という。輸出商談が進まないホットコイルだけでなく、国内建材品種も4月ロールの蓋が閉まらない。大手在庫流通には発注催促が続き、価格ネゴの水準が切り下がっているもようだ。すでに高炉各社が2月までに提示してきた目標価格はノミナル化し、電炉品種も契約実態価格が潜航した。
 昨秋から表面化した鋼材需要の減少トレンドは、2月以降、コロナ禍による自動車生産台数の下方修正など具体化が進み、策定していた4─6月見通し作業をやり直す破目に陥った。近く発表される経産省の鉄鋼需要見通しは修正活動水準を一定程度、織り込むものとなるが、ミル・商社各社の実務部隊は4月ロール計画の修正・5─6月編成の条件整備にアタマを抱えている。折からのテレワークなどもあって対面ネゴにも支障が生じ、電炉品種はスクラップ価格の先行きの前提が定まらない。工事休止の予定から備蓄生産に入ったミルなどでも、リスクの拡大を最小化する方策に苦吟している。
 高炉主原料価格は4─6月の感触が固まり、目先、世界の鉄鋼需要が増加する見通しになく上昇リスク織り込みは不要という。一方、スクラップ価格は東京製鉄の購入価格が田原工場2万円以外は宇都宮1万9千円、九州1万7500円、岡山1万8500円(4月2日)で、下げ基調がさらに進行。海外も韓国・釜山向け2万円(H2・FOB)となり、現代製鉄の2万1千円のビッドはノミナル化している。関西電炉のスクラップ炉前価格は2万円だが、5月GWまで2万円割れを回避できるとの見方は少ない。このスクラップ基調に乖離した製品価格にはノミナル感が拡大し、発注も敬遠されている。
2020年4月2日
薄板3品在庫、ウイルス影響出る
2月末448万dで異例の増
サプライチェーン混乱、問屋在庫膨れる

 薄板3品の2月末在庫は448万4千dで前月比4万d増となった。例年では1月から2月にかけて7万d程度減少するところだが、今回は新型コロナウイルス影響が国内サプライチェーンに波及し始めたことで異例の増加となった。自動車をはじめとする製造業分野、建設分野の動きがもともと低迷していたところにウイルス影響が直撃した形だ。在庫率は2・90まで上昇、熱延や冷延は3カ月以上の在庫率を示すに至った。表面処理鋼板は2・19で3品の中では低位にとどまったが、これは主に中国からの輸入減が作用したものと見られる。
 4万dの在庫増の大部分は問屋在庫の増加によるものだ。メーカー在庫は205万7千dで1万4千d減、問屋在庫は93万6千dで4万7千d増、コイルセンター在庫は149万dで8千d増となった。メーカーは期末を控え在庫処理を促進したと見られ、またコイルセンターは在庫のはけが悪くなり引き取りが厳しくなっていることから、問屋在庫、つまり商社在庫の積み上がりにつながったと見られる。だが商社も期末在庫圧縮が必須となるため、3月末では三者の在庫配分は変化することだろう。
 今回、3品在庫ではじめてウイルス影響が顕著に表れたわけだが、ポイントとなるのは輸入鋼材の減少とその内訳。2月3品輸入24万3千dで2万5千d減。1年5カ月ぶりに25万dを割った。中国からアジアにサプライチェーン阻害は波及しているためだ。品種別では表面処理鋼板の減少が目立つがこれは、中国からの溶融亜鉛めっき鋼板の数量減によるもの。武漢などの都市封鎖や輸送網の混乱により、中国からの輸入は1月2万4千dに対し、2月は1万4千dに落ち込んだ。3品在庫で表面処理鋼板の在庫のみが減少しているが、少なくとも輸入鋼材の減少は作用していると見られる。
2020年4月1日
波乱の2020新年度が幕開け
全治数年? 傷痕は深く
急変したエネルギー、自動車産業

 2020年度の世界経済は新型コロナの打撃を受けて重苦しく始動した。門出の祝辞は弾まず、採用を取り消されて暗い4月から始めなければならない人生も少なくない。わが鉄鋼業界においては、日本製鉄が昨年に打ち出した製鉄所合理化に加え、JFEスチールの東日本製鉄所京浜地区の高炉休止が「扇島」の夢にとどめを刺す。21年度の呉製鉄所高炉休止、23年度の京浜地区高炉休止など鉄源・上工程のシャットダウンにより地域の鉄鋼すそ野産業・産業全般に大きな打撃が広がる。一方、コロナ禍による個人消費の減少、生産打撃からの回復は容易でなく、各国政府の緊急経済対策に要する財源捻出への展望は皆無だ。
 かのトヨタ自動車がメーンバンクに1兆円のコミットメントラインを申し入れたというニュースは、NTTとの提携、CASE対応なども視野に入れたものとはいえ、先行きの資金ショートに備える構えであろう。12年前のリーマンショックは世界最大のGMを直撃したし、トヨタといえども債権・債務のバランスに大きな余裕があるわけではないという。油価下落によるエネルギー産業分野の損失も大きい。1カ月後に発表される大手企業の決算は減損のパレードとなることが濃厚で、その窮状が新年度に克服されるとの計算は成り立たない。
 日本政府は60兆円もの規模の経済対策を大型補正予算編成として示唆しているが、税収の落ち込み、消費減少、事業意欲の低下などマイナス材料のなかで増大する赤字国債は長期にわたって国民生活を圧迫する。
 売上・需要の減少に伴う資金難の連鎖は一層の経済循環の収縮につながり、この事態をいかに防衛し、しのぎきるか、一変するステージでの生き残り策は厳しい。
2020年3月31日
阪和、インドネシアの高炉に出資
年間100万dの取扱いへ
青山実業グループとの連携を深化

 阪和興業は30日、中国2社とインドネシア1社が出資している高炉一貫普通鋼メーカーの徳信鋼鉄に、10%の比率で出資参画したと発表した。阪和興業が海外の普通鋼一貫高炉に出資するのは初めてとなる。29日には第1高炉の出銑に成功した。徳信鋼鉄は、徳龍鋼鉄グループ(中国)、青山実業グループ(同)の上海鼎信集団、インドネシア・モロワリ・インダストリアル・パーク社の3社が合弁で2017年8月に設立した。
 徳信鋼鉄が立地するインドネシア・モロワリ・インダストリアル・パークでは、青山実業グループが投資するニッケル銑鉄・ステンレス精錬と圧延工場(熱延能力300万d)がある。電気自動車向けの2次電池の正極材に必要なニッケルやコバルトの化合物を製造するプロジェクトにも事業展開を図っており、阪和興業も一部出資参画している。
 同プロジェクトも同工業園区内に建設され、既存インフラを活用した製鉄所となる。販売面では現在インドネシアが輸入している鉄鋼半製品500万―600万dの代替需要の捕捉を中心に、一部輸出も目指している。阪和興業の取り組みとしては、最低100万dの製品・半製品を取り扱うほか、合金鉄などの製鉄原料の供給にも貢献していく。
 徳信鋼鉄は高炉一貫でスラブ、ビレット、丸棒、線材の普通鋼を製造する。年間生産能力は350万d(予定)で、第1高炉の稼働は20年3月、第2高炉は20年5月を予定している。同プロジェクトでは生産能力をさらに500万dへ増強する計画がある。
 阪和興業は、中期経営計画で「第2の阪和を東南アジアに」をコンセプトに地域戦略を推し進めており、これらのプロジェクトがその一翼を担っていくものと期待しているという。
2020年3月30日
JFEスチール、京浜高炉23年度休止へ
粗鋼能力400万d削減
千葉・京浜両地区減損2200億円に

 JFEスチールは27日、国内最適生産体制構築のための構造改革を発表、その目玉として東日本製鉄所の大幅な体制見直しを行うとした。具体的には京浜地区の高炉をはじめとする上工程設備を2023年度をめどに休止、酸洗・スキンパスを除く熱延設備を19年度末を目途に休止する。酸洗・特殊鋼を除く一部の薄板は千葉地区に集約する。千葉地区では23年度をめどに高炉改修を行い、自動車やエネルギー向けなどを中心とした付加価値の高い製品作りに集中する。同社では高炉8基から7基体制とすることで粗鋼生産能力を400万d削減、年間2500万─2600万dをMAXとした生産体制とする。これらの構造改革による減損は京浜地区で900億円、千葉地区で1300億円、合計2200億円となる見通し。このことにより、JFEホールディングスは19年度連結通期業績見通しを修正、当期損失1900億円とした。
 JFE誕生以来の大規模改革について北野嘉久社長は「鋼材市況低迷、中国など粗鋼生産増加に伴う原料高・製品安の傾向、将来的な内需減、設備の機能維持のための投資など、現状の事業環境は今後も継続すると判断した」とし、03年の発足時以降、10億dにも及ぶ中国の粗鋼生産規模の大きさと、それが引き起こす原料高・製品安という現象が業界環境を激変させてしまったことについて言及した。
 2月に東日本地区の下工程設備合理化について発表してから時間差があるが、これについて北野社長は「汎用品は海外市場で厳しい競争にさらされるリスクがある。この生産能力を確保すべきか随分議論し決断した」とした。京浜の高炉休止を選択した理由については劣化更新設備の比率が高いためとコメントした。
2020年3月27日
鉄鋼全メーカー、減産時期逸す
ウイルス影響で体制見直し
需要低迷長期化のシナリオ

 新型コロナウイルス影響は、高炉をはじめメーカーの生産体制に強力なダメージを与えそうだ。受注量の減少に合わせた減産程度では間に合わないほど事態は混迷を迎えつつある。高炉に関しては輸出によるガス抜きが非常に厳しくなっていること、国内製造分野でのウイルス影響による稼働水準の低下などにより供給調整ののり代が限りなく狭まっている状況にある。高炉休風などが有効策として取り上げられているが、ウイルス禍の影響は数カ月の短期で済むものではなく、年間を通じて後遺症を残すものになる公算が大きい。生産調整どころか、足元から設備体制そのものの抜本的見直しを迫られるような事態まで追いつめられてきたと言える。高炉だけでない。電炉メーカーにしても直面する状況に変わりはない。いずれにせよ緊急避難的措置では解決できなくなっている。
 パンデミックの中心は中国から欧米へとシフトしつつある。アジア圏でも中国周辺の地域に感染者増加が顕著になりつつある。また北半球から南半球へと感染拡大がシフトすれば、後遺症からの立ち直りはさらに遅れることになる。高炉の輸出は契約ベースでFOB400j割れを起こしているケースも見受けられる。だが、これは日本だけでなく、韓国ミルでも起きているケースだ。今のところ遠国向けに限定されるが、ウイルス禍の影響による需要混乱により、主力のアジア市場に安値合戦が飛び火するのは容易だ。そして国内は、大手自動車メーカーのケースにもあるように現場社員に感染リスクが高まり設備休止にまでおい込まれる事例が多発するリスクが高まっている。国内需要分野も当面は混乱の極みだ。供給先の確保はままならず、調整弁的役割を流通業界に求めるにしても、既に過去2─3年の値上げ対策により流通の体力は奪われている。減産対策も時期を逸してしまった。
2020年3月26日
新型コロナ影響、リーマン超えも
「大きさ計り知れず」(鉄鋼連盟北野会長)
高炉、一時的休風も選択肢に生産調整

 日本鉄鋼連盟の北野嘉久会長(JFEスチール社長)は25日の定例会見で、世界各国で広がる新型コロナウイルス感染が日本鉄鋼業に及ぼす影響について「その大きさは計り知れない」と述べ、減産計画を打ち出した自動車産業など需要家の生産動向を注視していく必要があるとした。鉄鋼需要や鋼材市況が大きく落ち込んだリーマンショックと比べても影響が甚大になる可能性があるとも指摘。「リーマンショックではその後、中国経済が伸びるなど割と一時的なものだったが、今回は欧米などで外出禁止令が出るなど人の動きが止まった。これまで経験したことがない厳しい状況になる」ことから、需要家の引き取り量に見合った生産が重要になると強調した。
 中国の需給バランスも要注意だ。中国の1─2月の鋼材輸出は前年同期比27・0%減の781万dにとどまったが、粗鋼生産は前年同期比3・1%増の1億5470万dに伸び、鋼材在庫が高止まりする。他方、国内鉄鋼業界も生産調整に迫られる。高炉各社の生産状況について会長としてのコメントを控えた北野会長だが、JFEスチール個社では「高炉のバンキング(休風)は決めていない」としつつも、出銑比を下げることや一時的休風は選択肢にあるとした。同社では中国合弁会社への自動車用鋼板輸出量が減少するなか「今後の動向を見ながら数量を元に戻していくことになるが、現時点ではその段階にない」とし、今後の粗鋼生産量を見極めていく考えだ。
 鉄鉱石や石炭の調達では足元、新型コロナ禍の影響は出ていない。北野会長は「原料の物流面での停滞は目立ってない」と話した。「東京五輪開催延期」を受けた建設市場への影響は「現時点では明確なことは言えない」とした。新型コロナ感染の終息時期は見通せない。国内外の鉄鋼需要の下げ幅を読めない状況はしばらく続きそうだ。(本紙4面に関連記事