2024年4月24日
一般形、大鉄のEX改定のカンフル
市況形成立て直しの鍵に
流通コスト転嫁、依然難航するなか

 大阪製鉄が5月契約において、エキストラ改定を表明した。等辺山形鋼の75×12以上の大形サイズについて従来比7千円値上げするもの。3月契約ではJFE条鋼がエキストラ改定に着手しており、主力2社のベクトルが揃ったことで、流通の市況形成に追い風となるか業界の注目が集まる。
 形鋼流通は3月から流通段階でのコスト転嫁に全力を挙げている。大阪製鉄、JFE条鋼ともにベース値上げ表明は済ませているが、エキストラについては主力2社がどこまで本気で取り組むか、マーケットは様子を見ている状況にある。
 一般形鋼については、H形鋼よりも市況形成が困難になっている。需要が低調ななかで各社が一定の販売数量確保を行わなければならないためだ。コストがかかる品種でありながら、ロットのまとまるH形鋼に引きずられ採算悪化に悩む流通関係者は多い。店ごとの価格帯の開きも要因の1つにある。こうした難局から脱出しようと、この2カ月間主力流通は価格の立て直しに取り組んでいた。主力2社のベース値上げやエキストラ改定は、流通の価格転嫁の動きを下支えするものだ。だからこそ両社のベクトルを気にする向きが強かった。
 運賃や人件費など製品以外の流通コスト転嫁が、大型連休前の課題だった。ところが実態は思わしくない。連休入り直前でも市中はべた凪状態にある。流通筋の話では「連休明けはそろそろ製品値上げの転嫁に着手したかったが、その前段階が整わない」と悩ましげ。
 大阪製鉄がこのタイミングでベースは据え置きつつもエキストラ改定を表明したのは、こうした市中へのカンフル効果を狙ったものと見られる。流通各社の反応は休み明けに持ち越しだ。(本紙2面に関連記事
2024年4月23日
鉄流懇、低調な景況4─6月も継続
ニューノーマルとなる可能性(赤木会長)
中小企業にしわ寄せ(全鉄連井上会長)

 鉄鋼流通問題懇談会が22日に開催され、終了後記者会見が行われた。赤木純一会長(JFEスチール常務執行役員)は足元の需要環境について内需の厳しい現実を語り「今年はこれがニューノーマルとなり得るかもしれない」との見解を示した。
 赤木会長は「経済産業省見通しにもあるように、2023年度鋼材内需は4100万d台での着地となるだろう。とくに1─3月の動きが悪かった。建築に加え、自動車メーカーの不正問題や部品不足に起因して同分野の回復が遅れた」とし、24年度4─6月鋼材内需は1千万d割れで低調さが続くとの見方を示した。赤木会長は続けて、この日の議題に取り上げられた人手不足問題について触れ「鋼材流通に限らず日本の製造業は総じて賃金水準が低い。OECD38カ国で25位。00年当時、日本は第1位だった。問題に対応するには社会全体での負担が必要。これは需要家の皆さんにどうしてもお願いしなければならないことだと思う」との見解を示した。
 全国鉄鋼販売業連合会の井上憲二会長(明治鋼業会長)は、低調な需要について「人手不足が要因となりさまざまな影響をもたらしている。住宅・非住宅需要の減少だけでなく、ほかの分野にも及ぶ。それだけに根が深い問題だ」とした。また、人手不足問題について会員の議論を総括して「全鉄連の会員は規模も小さく、人の不足について大層なお金をかける余裕がない。メーカーや商社のIT化の取り組みは参考にはなるが、会員企業に完全にマッチするものでもない。そこが難しい。現場設備の合理化や事務処理の合理化、賃上げ、価格転嫁など複合的に作用している」と分析した。澁井信之副会長(澁井鋼材社長)は「人材についてじっくり話ができたことは良かった。若手人材の確保など将来を見据えた取り組みが必要」とコメントした。
2024年4月22日
メタルワン、店売り分野DX戦略
Metal] UP対象拡大
厚板に加え薄板や線材品種へ

 メタルワンは、鋼材流通業務革新を実現するデジタル・プラットフォーム「MetalX UP」(メタルエックス・ユーピー)のサービスを拡大、厚板のほかに薄板や線材分野にも対象を広げた。同社の同デジタルサービスは店売り分野を主たる対象としてアプローチしている。2次流通の営業に関する管理業務の大幅な効率化に寄与するものだ。
 川中に向けさまざまなメニューを充実させているのは、業界では同社が初めてだ。三菱商事と双日という株主会社をもち、鋼材の世界では長年突出した営業基盤を築いてきたのがメタルワンだ。その歴史の中で培われたノウハウが、サービス機能に反映されている。機能はミルシートの電子化、工程進捗管理、WEB請求書、注文履歴、受発注、債権債務の自動照合などが挙げられる。顧客は煩雑な業務を新たなコミュニケーション手段に変えることで、効率化できる。ミルシート電子化や工程進捗、WEB請求書などはその最たるケースだろう。例えば工程進捗についてはチャット機能を備えており、これまで電話で問い合わせていた部分を同システムに置き換えることで、時間を選ばずリアルタイムに打ち合わせができる。(本紙2面に続く
2024年4月19日
「円安」頼みのスクラップ地合い
東アジア建設市場は奈落
日韓台中の需要「底割れ」模様

 (大阪)中国の実質GDPが5・3%増(1─3月)と報じられても、東アジア市場に明るさは見えない。4─6月の鋼材輸出商談はほとんどスキップの気配で、韓国メーカーはビレット輸入商談を4カ月連続で見送った足で台湾に向かい、震災見舞いを兼ねた復旧視察に赴いた。西日本の電炉のなかにも台湾の震災復旧リサーチへの動きが見られ、東アジア市場がいつ需要閉塞感から脱するか藁をもつかむ動静だ。
 大手電炉の今年度の鉄筋販売計画は前年度を下回る水準で策定され、需要回復を望めないとする見方が現実感を持ち始めた。スクラップ輸出商談もバングラデシュ、ベトナム向けなど限定的となりつつあり、1j154円の円安が辛うじて「5万円割れ」の堤防となっている始末。危うい中東情勢からラマダン明けのトルコ向けスクラップ価格もCFR383j前後に低迷。東アジアのビレット市況は高値510jから先安気配を呈している。
 新年度入りした日本市場の電炉条鋼市場は、物流費、電力料金などのコストアップから市中唱えに移行したが、需要規模はジリ貧の感触。製鋼スプレッド130jでは「限界利益割れ」との声も聞かれ、物流・電力・諸資材の上昇に「減産コスト」も加えると上期決算への圧迫感は強まる一方という。
 中国市場は建設・不動産投資の着工面積のマイナスが続き、韓国市場も金利高・物価高から新築建設需要の低下が続き、この度の総選挙の与党大敗につながった。当面の景況予測に好材料はなく、今年1、2月頃の期待感はすべて失われた。台湾の景況観も悪化をたどり、CSCが1、2月に見せた国内販価の切り上げが交替。鋼板市況は実勢下押し場面に入った。日本市場は円安効果から鋼材市況が高値圏を維持しているものの、この「ドル高」堤防が決壊すれば丸裸のスプレッドが露呈しかねない。
2024年4月18日
23年の月平均上回るハイペース
中国の3月粗鋼生産8800万d
ミルや流通在庫調整矛先は輸出

 中国の3月粗鋼生産が8827万dで前月比400万d強増加した。4月も生産ペースが落ちる様子は見られず、需給調整を背景とした高水準の輸出量が継続することが懸念される。2023年累計の粗鋼は10億2025万d。月平均は8500万dで3月生産分はこれを上回っている。
 政府は経済促進政策を発表する一方、大手鉄鋼メーカーの生産動向を注視する動きを見せており、鋼材需給調整の対策を講じている。だが、この生産状況では政府の対策に実行力があるとは信じ難い。主力鋼材品種の週生産は4月第2週目にして960万dを維持。3月の週生産推移と比較し目立った変化は見られない。ミル在庫と全国流通在庫は減少傾向にあることを踏まえると、輸出による需給調整で凌いでいることがうかがえる。
 流通在庫が大幅に減少しているのは条鋼品だ。鉄筋と線材によるもの。4月第2週市況は鉄筋と線材が160元上昇した。政府の対策を好感して先物や現物の価格が上昇したが、実需に基づくものではないため安定しないと見る関係者もいる。
 条鋼品については中小のメーカーが多いため、果たして政府の統制がどこまで効くのか疑問符がつく。中国では不動産分野の低迷が長期化しており、地方政府の資金繰りも苦しくなっている。メーカーの減産だけでは需給調整の道筋はつけられず、輸出ドライブを選択するしかない。対日輸出においても、最近は鋼板類だけでなく条鋼品でも増加の傾向が出てきている。
 中国の減産統制は、23年末も効果は表れなかった。大手メーカーも一部設備で休止など手は打ったものの、形式だけの対応が目についたという。4月も生産にブレーキが効かない限り、需給調整の課題は先送りされたものといえる。
2024年4月17日
高値受注繰り越し効果も大きく
棒鋼メーカー23年度決算及第点
次年度は物流や労務費負担で課題山積

 棒鋼メーカー各社の2023年度決算は及第点をとれそうだ。販売数量は精彩を欠いたが、鉄スクラップ相場とエネルギー価格が想定以下にとどまるなか、製品販価維持したことによるもの。高値のキャリーオーバーも大きかった。共英製鋼は営業利益200億円(前期比35・0%増)、合同製鉄は同170億円(22・2%増)、東京鉄鋼は同100億円(129・6%増)を見込む。
 24年度は状況が一変する。人手不足と資材コスト上昇などの影響で物件需要は前年を下回る可能性がある。最近は現場の人件費上昇もバカにならない。関東地区の棒鋼メーカー筋は「収益が23年度並みとなら御の字」だと言う。鉄スクラップ以外の諸コストが上昇するほか、足元ではイランがイスラエル攻撃をするなど中東情勢が悪化していること、為替動向が不透明なことなどがエネルギーコスト上昇要因につながる公算も大きい。
 足元、トン5万円付近の鉄スクラップ相場への警戒感もある。23年度は5万円中心に比較的安定的な価格推移だった。国内の発生が少ないことや輸出価格が国内鉄スクラップ市況をけん引したためだ。足元でアジアの鋼材市況は下落している。中国のインフラ分野の需要低迷で、同国からの条鋼品種の輸出増加が目立ってきた。ビレット市況にも当然影響が出る。鉄スクラップは脱炭素化の流れを背景に、一定の価格水準で推移するとの見方が業界で大半を占めるが、アジアの不安定な条鋼品種の市況はマイナス要因につながる。
 23年度は需要が低迷するなかで、メーカーは販価維持に努めた。ベクトルもある程度揃っていた。これが24年度も継続できるかどうか、メーカー業界は試されている。需給バランスに即した生産に徹することができるか。輸出市場は調整弁として期待できない。ポイントとなるのは決算発表時における各社の第1Qの想定だ。今年度は序盤の苦しさが軽減されることはない。
2024年4月16日
東鉄5契販価、全品種で据置き
中国要因で輸入対抗意識
宇都宮のトラブル、他工場でカバー

 東京製鉄は、5月契約分の鋼材製品販価を据え置いた。販価据え置きは3カ月連続。国内外ともに市場環境が整わないため、今回の据え置きは業界の想定どおりといえる。海外については、中国大手ミルが国内向けを値下げし、それに連動した輸出価格の下落でアジア市場の混乱が予想される。対日という点では鋼板類だけでなく建材品種についても中国からの輸入は増加しており、こうした動きは近国ミルを刺激するため、東鉄は輸入材動向に緊張感を高めている。国内について小松ア裕司取締役常務執行役員は「地域ごとの価格改善の動きは前月よりも進展した」と受け止めつつも、メーカー値上げや流通コスト転嫁の浸透はまだ道半ばとの印象を抱いているという。
 2024年度の国内需要環境について小松ア常務は「上期は建設業の残業規制強化の影響もあって厳しいが、下期に少し上向くのではないか。通期では23年度並みになる」と展望した。鋼板類の需給バランスはメーカー各社が慎重な供給姿勢を続けているため「崩れるとは想定していない」ものの、価格は中国の輸出・価格動向が大きく左右すると見る。鉄スクラップ価格については「足元は円安で輸出価格が上がっているが、海外からの引き合いは低調で、目先も同様だろう」とした。
 4月生産計画はH形鋼9万d、ホットコイル15万d(うち輸出3万5千d)、厚板3万5千dの計29万d。H形鋼の24年4─6月の引き合いは小松ア常務が「良くなかった」と振り返る1─3月と同水準になる見込みだ。ホットコイルは「先高感もあって余分に入ってきているものもある」という。他方、H形鋼の生産拠点である宇都宮工場で今月、製鋼設備のトラブルが発生した。月末までに復旧を予定しているが、宇都宮工場の製鋼ライン再開までは九州工場や岡山工場で生産をカバーしていく。