2025年2月14日 |
薄板汎用品市場の構造変化明確 ミルトラブルも影響限定 需要低迷でも安価な輸入材が定着 高炉の設備トラブルが流通業界にもたらす影響は、自動車分野に限定されたものになりそうだ。薄板3品在庫は380万dまで圧縮されたが、汎用品分野は輸入材に浸食され、薄板需要全般が低調なため市中の需給がタイト化する事態までには至らないとの見方が市場の大勢を占めている。 先日、一部高炉の設備不調が明らかになったが設備修理後、再開するまでには少し時間を要する見通しとなっていた。自動車分野などのひも付きに影響が出る公算が大きいと見て、流通関係者は対応に追われた。厳密な納期があるものなので、ミル・商社・コイルセンターには緊張感が走ったが、それが薄板業界全体に広がるものではないという。本来ならば流通が在庫温存に動いたり市中価格が反応したりするものだが、この一大事にあっても流通関係者の反応は冷静すぎる。ミルが機動的対応を行えているからという指摘もあるが、もはや国内ミルの設備トラブルや事故が生じても、市場が反応しにくくなったという実態がある。 数年前にさかのぼれば高炉の設備が少々止まっただけで、市中には過敏すぎるほどの反応が出た。それがなくなったということに、市場構造の変化を指摘する業界関係者の声は多い。高炉の国内設備合理化と、収益重視による価格政策により内外格差が拡大。輸入材がこれまでにないスピードで増加した。中国の輸出による需給調整と、主要国の通商対策影響を受けた環流玉により中国材の増加は突出したものになった。3品については毎月、中国材を含めた輸入材が30万d規模で入着している。国内需要が低迷するなかで、生き残りを賭けて、ユーザーも流通も輸入材を求めた。この流れが汎用品市場の構造を変えた。国内ミルが汎用品市場で主導権を失ったことをトラブル影響が端的に表している。 |
2025年2月13日 |
関東鉄源、鉄スクラップ輸出入札 2契1600円安も4万3000円台維持 為替や海外市場の弱さが影響、想定内とも 関東鉄源協同組合(南光司理事長=ミナミ社長)は12日、2月契約の鉄スクラップ輸出入札を行った。落札は1番札のみで1万5千d。価格は4万3200円で前回比1610円下落した。向け先はベトナムかバングラデシュと見られる。 応札量は13万5900dで18件だった。辞退はゼロ。値下がりの理由について南理事長は「為替が円高に振れたこと、海外市場の基調の弱さが反映されたもの」としている。為替については前回159円だったが今回は154円弱となり円高に振れた。ただ、これだけの容認ならば1千円以上の値下がりとはならない。南理事長はアジアの製品市場の低迷などを踏まえ下げが進んだと見る。値下げ幅は「想定内」だと言う。アジアは春節を明けたばかりで動きが鈍い。 今回の成約を1番札のみとするには葛藤があったようだ。同組合では3万dを目標水準に置いており、2番札をとれば3万dに達する可能性があった。1月契約の船積みは2月18日から3月1日。2月契約の船積みのスケジュールを考慮すると3万dの規模をこなすのは難しかったと南理事長は見る。 足元の浜値は3万9千円台。関東鉄源のブランド力が上乗せされての4万3千円台の価格だ。国内の製品需要が依然として低迷していること、海外も良いところがなく、米国のトランプ政権による追加関税の問題で電炉製品の環流が増える。鉄スクラップ価格の先行きも決して明るいものではない。関東鉄源の価格水準は奇跡的な高値が維持できていると言える。国内の電炉メーカーは今回の落札価格が4万円台の大台を維持したことで安堵しているのではないだろうか。輸出用半製品や製品の動向が一段と不透明になり、電炉は減産を余儀なくされる。製品価格政策は厳しさを増す。 |
2025年2月12日 |
北米市場の新関税リスク顕在化 日系の事業本格化に逆風 メキシコ、カナダ「25%」なら打撃 日本スチール、JFEスチールなどの北米事業の「トランプ・リスク」が実体として突き出され、混迷のふちに立たされた。トランプ大統領が米国への鉄鋼製品の25%関税を打ち出したため、メキシコ、カナダなどに展開する日本の鉄鋼業の現地事業の2025年の操業が揺さぶられている。JFEスチールのメキシコの自動車鋼板製造事業はニューコアとの折半出資のため、この関税を回避できると見られるが、メキシコで生産し米国へ輸出している日系自動車メーカー、および関連部品会社や、メキシコを経由して米国の鉄鋼製品調達に便宜を供与している日系や韓国の鉄鋼メーカーが「25%関税」の洗礼を受けることになる。以前、カナダとメキシコが関税対象から外されたこともあるが、今回の事態は当時より重い印象があり、トランプ政権に与えるべき取引の対価も見当たらない。 鉄鋼各社は今3四半期の決算で対米リスクの業績影響に触れていないが、関税の実施から25年度の業績が「従来同様」で落ち着く可能性はほとんどない。下り坂の米国市場が25%関税もものともしない高値の輸入品を購入して成長できる可能性は低く、労働市場の賃金上昇とともに大きなハザードとなるに違いない。トランプといえども、ここにきて詭弁を弄することは名誉に関わるだけに、その実施細目が注目されるところだ。 |
2025年2月10日 |
経産省24年度粗鋼生産見通し深刻に 下期苦戦で8300万dの低水準 中国輸出増と通商措置で輸出減に 経済産業省まとめによると、2024年度の粗鋼生産計画は8307万dで前年度比376万dの減少となる見通しだ。3年連続の8千万d台。新型コロナの影響を最も受けた20年度の8278万dに限りなく近づく低水準となった。第4四半期見通しは2051万d。四半期の水準として極めて深刻なものになる。 第4四半期の粗鋼生産見通しは、前期比1・0%減、需要見通し比2・0%減だった。輸出の減少が大きく響いている。主要国の通商措置と海外市場の悪化により、輸出が一段と減退。ボトムと見られるが、底這い状態をいつ抜け出せるのか見通しが効かない。鋼材生産の見通しについては1833万dで前期比0・9%減、前年同期比2・1%減。普通鋼鋼材は1419万dで前期比0・1%減、前年同期比4・4%減。普通鋼鋼材がほぼ前期比横ばいだったのは、国内向け生産の回復によるもの。自動車認証問題の正常化効果が要因の1つ。特殊鋼は414万dで前期比4・3%増、前年同期比7・0%増となっており、この効果が波及していることが分かる。また建設向け鋼材が前期比やや増加しており、これも下支えになっているようだ。 輸出向けは649万dで前期比1・0%減、前年同期比1・6%減少。こちらも普通鋼鋼材の減少によるところが大きい。ホットコイルを中心とした薄板類の数量減が主要因。 品種別の生産見通しについて、H形鋼が77万dで前期比3・2%増、前年同期比6・1%減。小形棒鋼が169万dで前期比2・0%増、前年同期比5・2%減となる。H形鋼については、月平均では25万d強。本来であれば30万d近い水準のはずだが、それに遠く及ばない。前年同期比ではマイナスになっており、建設需要の落ち込みが依然として続く。 |
2025年2月7日 |
高炉2社24年度通期連結見通しに明暗 日鉄、事業益6700億円で据置く強さ JFEHDは製鉄悪化で500億円下方修正 日本製鉄の2024年度通期連結業績見通しは、事業利益6700億円でこれまでの予想を据え置いた。同社では第4四半期の利益をボトムに見ており、第2四半期までに先行して確保した利益を温存した格好だ。森高弘副会長兼副社長は「減益となるメーカーが多い中で見通しを堅持できたことは当社の強さ」とし、構造改革と厚みある事業体制による収益力の高さを強調した。 だが、第4四半期の事業利益はわずか1039億円に過ぎず、生産出荷の減少と、販価下落によるマージン悪化、海外事業の収益悪化の影響は大きい。24年度通期見通しと23年度実績を比較すると、製鉄事業において2千億円悪化見通しのうち、悪化要因は生産出荷200億円、マージン悪化300億円、本体海外事業570億円、鉄グループ360億円となっている。好転要因はコスト改善400億円、原料事業130億円、在庫評価200億円などとなっている。製鉄事業において前回と変化したのはマージンのプラス50億円、海外事業のマイナス50億円で差し引きゼロとなった。通期見通しの単独粗鋼生産は3450万dで予想を据置き、平均販売単価は予想より1千円プラスの14万3千円とした。 JFEホールディングスは24年度通期業績を修正し、売上収益4兆9千億円(前期比5・3%減)、事業利益1150億円(61・4%減)、税引前利益1400億円(47・8%減)、当期利益950億円(51・9%減)になるとした。前回見通し比で事業利益は450億円、当期利益は350億円下振れる。セグメント利益は鉄鋼事業260億円(前期実績比1767億円減)、エンジニアリング事業200億円(43億円減)、商社事業450億円(39億円減)となる見込みだ。年間粗鋼生産量(JFEスチール単独)は前回公表比40万d減の2200万d程度を見込む。(本紙2面に続く) |
2025年2月6日 |
特殊鋼の藤田商事が東金属を買収 後継者問題に対応 愛知製鋼系流通の再編側面も 特殊鋼加工流通の藤田商事(千葉県浦安市、藤田憲義社長)は、4日付で老舗特殊鋼加工流通・東金属(東京都江戸川区)を完全子会社化した。藤田商事は売上高107億円(2024年8月期)で、愛知製鋼の資本も入る。愛知材の1次商機能も持つ関東エリアでは大手といえる流通だ。後継者不在や商流の整流化など、メーカーから流通、加工業者までをも包含する特殊鋼業界の課題を象徴し、諸課題を改善するためのM&Aといえそうで、同様の事象は今後も起こる可能性がある。 藤田商事と、後継者が定まらなかった東金属は先代を含めて数十年以上の取引があり、愛知製鋼の愛鋼会や全日本特殊鋼流通協会などで経営者同士の交流も深い。愛知製鋼系の商社流通は関東では藤田商事に中川特殊鋼、令和特殊鋼などがあるが、今回のグループ化はサプライチェーン整流化の側面もある。藤田社長が東金属の社長も兼任することになり、登記手続きを進めている。東金属の前社長である創業家の菅正成氏は取締役会長となり、経営業務をサポート。藤田商事の有路泰弘取締役が、東金属の専務取締役となる。藤田社長は「互いの強みを生かし、配送などもより効率よくできるようになる」とシナジーを見通す。 東金属は「含ニッケルのアズマ」といわれ、含ニッケル鋼の扱いでは西日本の堀田ハガネと並び称される有力流通。24年3月期の売上高は15億円だが、市場競争の激化など数多の苦難に直面し、楽ではない経営状態だった。藤田商事と共同配送や在庫の持ち合いを実施する。藤田商事の浦安鉄鋼センターと、東金属の千葉県八街市の在庫・加工拠点の連携による東関東地域の営業強化も進める。菅氏は「いろいろな企業に相談してきたが、藤田商事が応じてくれてありがたい。両社の交流が活発になると良い」と期待する。 |
2025年2月5日 |
H形鋼輸入に異変、第2の中国材なるか ベトナム材、1000d入着(12月) サンプル仕入れの可能性、今後のリスクは H形鋼輸入に異変が起きている。12月の通関でベトナム材が入着したのだ。数量は約1千dで揚げ地は四日市。単価は9万6千円。国内電炉材と比べて割安感は薄いが、新たなソースとなりうる可能性がある。ベトナムは経済対策を講じているが国内建設需要は低迷したままで鋼材の輸出ドライブで需給調整を行わねばならない実情がある。 ベトナムからの輸入はこれまで皆無に等しかった。2024年内は単発で100d入着したのみだったので12月の1千dはインパクトがある。ベトナム材については韓国市場を席捲しており、現状で最も高い輸入材シェアを持っている。それに次ぐのが日本材だ。現代製鉄がこうした状況に強い危機感を示している。韓国内では政治不安が続いており、国内経済対策は後手に回っている。だが、日本材についてはすでにAD適用に向けて調査が始まっている。ベトナム材が安定した供給先として日本をターゲットにするのは無理からぬことだ。 残念ながら日本では具体的な通商措置を行うには至っていない。日本鉄鋼連盟では経済産業省などと協議を行いながら打開策を探っているが、足元の輸入には牽制の術がない。国内では東京製鉄が輸入材の防波堤としての役割を担っているが、中国材のように8万円台の攻防となる水準では深追いは禁物だ。今回のベトナム材は中国材の8万1千円と比べればはるかに高い水準。これを一時的なものと一蹴するか、今後の警戒対象とするかで、国内の市場への影響は変わってくるのではないか。 中国材は今や韓国材と数量が逆転し、土木用途といえども軽視できない状況になっている。素材としてだけではなく加工品として流入し日本市場を侵食している。ベトナム材は第2の中国材とならぬ保証はない。 |