2025年1月10日
薄板3品在庫、3カ月ぶりに400万d割れ
11月末391万d、前月比9万d減少
メーカー顕著な在庫減、流通と温度差

 2024年11月の薄板3品在庫が3カ月ぶりに400万dを割った。391万6千dで前月比9万1千d減少した。例年以上に大幅減となったが、自動車分野の需要回復と、メーカーの調整、流通の仕入れ抑制などさまざまな要因によるもの。メーカー、問屋、コイルセンター全てにおいて在庫は減少したが、今回はとくにメーカー在庫の減少ぶりが目立った。メーカー在庫は161万2千dで6万6千d減少した。
 メーカー在庫は熱延、表面処理鋼板ともに大きく減少。熱延は98万8千dで3万1千d減、表面処理鋼板は30万dで2万7千d減。熱延は3カ月ぶりに100万dの大台を割った。自動車分野の緩やかな回復のほか、輸出による消化が進んだものと見られる。
 流通在庫は問屋、コイルセンターともに小幅減にとどまった。問屋在庫は81万9千dで1万1千d減、コイルセンター在庫は148万5千dで1万4千d減少した。流通在庫の場合は輸入材の入着水準の高さが影響しており、在庫減少のテンポを遅らせている。店売り市場での輸入材占有率が高まっていることが背景にある。
 11月の3品輸入は30万dで前月比ほぼ横ばい。7月をピークに少し増勢は落ち着いてきたが、韓国材や中国材は品種によって増加傾向を示すものもある。鋼材輸入全体では中国材の増勢ばかりが取りあげられるが、薄板については韓国材の入着水準の高さも見過ごせない。黒皮では3万6千d、冷延では4万dが入着している。韓国国内の経済低迷と需要悪化影響を受け、ミルが輸出ドライブをかけている。中国材は冷延や表面処理鋼板で増加。冷延は1万d超えも珍しくなくなった。10万円の大台を割り、韓国材と比べ値差が広がっている。
2025年1月9日
NSSC1月契約、冷薄5000円下げ
貿易救済の措置申請急ぐ
海外材を含め相場の弱さが続く

 日鉄ステンレス(NSSC)は、1月契約の国内店売り向け冷薄価格をニッケル系でトン5千円引き下げる。2カ月ぶりの値下げとなり、流通相場がいぜん弱含みのなか、海外材も含めて市場価格がどれだけ踏ん張れるかが気になるポイントだ。ニッケル系を中心に過剰生産し、日本など海外への高水準輸出が目立つ中国材をはじめ海外材への警戒度は非常に高く「我が国のステンレス鋼産業として貿易救済措置の申請を急いでいるところだ」(NSSC)としている。
 国内材のニッケル系薄板相場は中心価格で60万円を割っている。有力どころでも販価姿勢にばらつきがあるものの、58万円程度が平均とみられる。中国材で15万円程度、国内材と相場の値差がある海外材を織り交ぜて、数量確保に走るところもあるとされる。利益確保の姿勢が以前より各流通などに浸透し、今回の値下げで大幅に市況が落ちることはないだろうが、底入れはまだ先になりそうだ。
 1月契約では、ニッケル系薄板のベース材でベース価格は据え置き、価格変動はアロイリンクをそのまま適用している。昨年11、12月のLMEニッケル価格はlb7・08jと10、11月比で0・30j下落し、為替は円安傾向だった。クロム系価格は据え置いた。
 需要環境としても、期待感が先行し続けている半導体関連はスマートフォン関係を中心に改善してきているが、それ以外は回復が遅い。建材も一部のユーザー、流通の引き合いは戻ってきていると聞くが、全体的な回復は見通せず、業界全体の景気を押し上げる力強さはない。厚中板も5千円値下げした。造船関連の順調な回復が続き、エネルギー分野も脱炭素関係の設備投資が動き出しており、薄板などと比べると堅調となっている。
2025年1月8日
日鉄、USスチール買収不当介入に訴訟
橋本会長、断固たる姿勢示す
米政府だけでなくクリフス・USWも対象

 日本製鉄は6日、USスチール買収に対する不正介入について訴訟を提起した。訴訟は2件で、1件目はCFIUS審査と大統領命令の無効を求めるもの、2件目はクリーブランド・クリフスのゴンカルベスCEOとUSWのマッコール会長が共謀し買収阻止に関して違法行為を行ったことに対するものだ。
 この日、日鉄では橋本英二会長が記者会見を行い、買収実現を諦めることはないと語り、今後も日鉄とUSスチールは一枚岩で対応していく姿勢を示した。懸念されている違約金については、パートナーであるUSスチールとの間に直接支障が起きたわけではないことから、今回のバイデン大統領の買収禁止令によって生じるものではないとの見解を示した。両社の取り決めでは、USスチール側の株主反対などで不成立になった場合に800億円の違約金の支払いが発生することになっていた。今回はこれに該当しないことになる。
 橋本会長が買収に関する取り組みが本格化して以降、公式の会見の場を設けるのは初めてのこと。日鉄としてはグローバル1億dの実現に向け取り組むなかで、米国市場は不可欠の存在。会見における橋本会長の言葉には裁判に勝ち抜く揺るがぬ意思が見受けられた。今回の訴訟ではバイデン大統領が対象となっているが、トランプ次期大統領のことは言及されていない。橋本会長は、訴訟を起こすことで筋を通し、トランプ政権とCFIUSと再度適切な判断を行うことを求めている。あくまでも対象は現政権だ。大統領令の効力が発生するまで時間が無いが、橋本会長は大統領令の発出も含めて、安全保障に無関係な政治的理由により判断を下したことを無効化させるとしている。米国の大統領を相手に訴訟を起こし、勝訴した前例は2012年にある。(本紙2面に続く
2025年1月7日
中国鋼材市場、春節前にもう息切れ
HC市況、3400元割れゾーン
輸出も10j下げ、ドライブ強まるか

 中国の年明け鋼材市場は低調なスタートを切った。ホットコイルの国内価格はついに3400元を割り込む事態になっている。9月末以降、ホットコイルは3400─3500元台を維持してきたが年末年始の需要減が影響している。また、1月末の春節を控えさらに需要が落ち込むことが予想され、市場の受け止め方は厳しい。3月積み輸出のオファー価格はホットコイルでFOB475jまで値下がりした。国内の低迷を受けてのものだ。
 昨年末までに中国政府は景気てこ入れ策を発表しているが、消費者の反応はいまひとつ。懸念されるのは建設現場が月半ばには休みに入る影響だ。建材分野の鋼材の動きは停滞する。春節明けに調子を取り戻す要素もなく、今後の精彩を欠いた展開が予想される雰囲気に。主要品種の市中在庫は1月初旬で765万dだった。12月から再び増加傾向に入った。12月はミルの決算対策も影響していると見られる。1月にこの影響が解消される見込みは薄い。鉄筋が大幅増加、鋼板類は増減がまちまち。ホットコイルは前週比2万d減少。ホットに関しては市中価格動向とちぐはぐだ。
 市中では休暇期間を考慮し、ミルが価格維持に努めると見ている。ただ、輸出価格を見る限り値下がりが継続しており、これは国内市場の影響を受けたものと見られる。市況が休み明けにさらに悪化することがあれば、輸出へのドライブがかかるだろう。
 低迷市況に少し希望があるのは、値下げと横ばいが混在していることだ。鋼板類ではホットコイルは1月第1週で値下がりしたが、冷延や溶融亜鉛めっき、厚板はなんとか踏みとどまっている。冷延の下げ幅はホットの半分。春節明けまで膠着状態が続く。
2025年1月6日
2025年の初めにあたって
「悪貨」押し戻すレガシーに
米中露の「分断」に右顧左眄せず

 宇宙では生成と消滅が繰り返され、それは永遠の時間のなかにあるように思える。わたしたちは「有史」の世界観のなかに在るが、先史時代もローマ史も興亡の顛末は時代のなかにしかない。1千年のときを隔て、近代・現代史を俯瞰しても時代と思潮の顛末の実相は本当には視えない。いま世界を覆う国々と民族の紛争は、永い地域史と100年ほどの国家観で説明されるが、根幹は経済的な苦境に結びついた政治思潮(共同体イデオロギー)の波に負うものといえる。「分断と集合」「排除と結合」が利害の層で線引きされ、それに乗じた個的な欲望が世界を煽動し引き裂こうとしている。後者の時間軸は短かく、前者は社会経済構造の変化に少しの期間を要する。
 建国75年の中国(中華人民共和国)は市場経済がもたらす自由の享受に失敗し、復活させた経済統制の破綻に直面している。ロシアはソビエト連邦崩壊を「悪夢」とする政治的郷愁とウクライナ経済資源喪失の打撃からゴルバチョフ路線に逆行。米国はラストベルトと移民国家の利害矛盾に東部エスタブリッシュメントの無自覚が撹拌され、分断国家と化した。欧州は共同市場形成の夢成らず、アンシャンレジームかと見粉うばかり。そして日本経済は円安に沈み劣化、明かりを見失いつつある。阪神大震災から能登半島地震まで東日本大震災を挟んだ「失われた30年」で、わたしたちは多くを失い、さらに世界分断の得失に揺さぶられている。
 米国トランプ政権の再始動は、米国への富の集中を期し分配の争いを深めるが、通商の原則に違背した経済施策から終には米国経済が行き詰まる。遠い未来にではなく、信用の崩壊は瞬時に起き、株価は暴落し円安から円高に向かう。日本が歴史的に形成してきたレガシーを発揮できれば、時流に押し流されず曇りを払った視界に立つことができる。
2024年12月27日
経産省鋼材需要見通し、国内外振るわず
24年度粗鋼8300万d台へ
第4Q2093万d、3四半期連続2000万d台

 経済産業省まとめによると、第4四半期の粗鋼生産見通しは2093万dで前期比微減だった。2024年度の粗鋼生産は8371万dを見込む。コロナ影響を強く受けた20年度の8278万dに迫る低水準。第1Qのみ2100万d台で2─4Qは2千万d台が続く。国内外で厳しい環境が続いたことが背景にある。3年連続で9千万d割れ、8千万d台前半と深刻な状況だ。
 鋼材需要見通しについては、1909万dで前期比0・1%の微増、前年同期比0・5%減だった。国内向けは1259万dで前期比0・4%増、輸出向けは650万dで前期比0・4%減だった。内需は微増ではあるものの建設・製造業分野とも精彩を欠く。国内向けは普通鋼鋼材が988万dで前期比0・2%増、特殊鋼鋼材が271万dで1・2%増だった。特殊鋼の増加は自動車メーカーの認証問題影響からの脱却が効いたものだ。普通鋼の増加幅小さいのは裾野の広い建設分野が振るわないためだ。
 輸出向けは普通鋼が540万dで前期比1・8%減、特殊鋼が110万dで7・5%増だった。普通鋼はホットコイルなどの輸出不調が反映されている。主要輸出国による通商対策の影響が出ている。需要分野別は建設分野が405万dで前期比0・1%減。製造業分野は583万dで0・4%増だった。製造業分野での増加は自動車と造船のみ。造船は2・1%増、自動車は1・5%増。造船は前年同期比では微減となっている。新造船受注は堅調だが人手不足の影響で建造ピッチが上がらず限界がある。
2024年12月26日
鉄連25年度見通し、中国・米国のリスク
粗鋼生産は24年度比微増に
ネガティブ要素次第で輸出下押し警戒

 日本鉄鋼連盟は2025年度粗鋼生産見通しについて、前年度微増とした。24年度は23年度を下回る予想としており、それを踏まえるとしばらくは目立った変化はないともいえる。ちなみに23年度の粗鋼生産は8683万dだった。24年は1─9月までが6300万d強となっており、暦年では8500万d割れの可能性が大きくなっている。
 鉄連によれば、25年度見通しの前提となる内需については、建築全体では若干の増加、製造業は造船・自動車とも前年並み。外需も前年並みとしている。ただ、中国の経済動向や、米国の通商政策などリスク要因を警戒して見ている。25日に行われた会長会見で今井正会長(日本製鉄社長)は、年間の鋼材輸出3千万dが維持できるかどうか、これらのリスク要因の影響が大きいとした。「時間軸の問題もあるが、数百万d規模で下向きの圧力が加わる可能性もある。少し経過を見る必要がある」とコメントした。
 会見で今井会長がトピックスとしたのは、輸入鋼材対策だ。今井会長は「9月26日の会見でも言及したが、鉄連の組織で国への政策要望の検討を行っている。他国の通商措置を踏まえ@実効性重視A新たな視点での対策B2国間・多国間の対話の場を活用するなどの考えを軸に、経済産業省と話し合いを行っている」という。今井会長は24年度の中国の輸出規模が過去最大になっていること、各国で相次いで通商措置が講じられていることから「我が国だけが対策を講じないならば国内のサプライチェーンの維持、そしてカーボンニュートラルの今後の対策にも影響が出る」と危機感を滲ませた。「鉄鋼業の持続的発展に向け政府に対して前広な対策が重要だということを説明していく」とした。通商対策は時間を要するべきではないというのが今井会長の考え方。年明けは具体的な動きを出していくタイミングだと話した。