2025年5月16日 |
小野建、長期ビジョン目指し基礎固 第1次中計、ソフト投資注力 ROE6%、株価を意識した経営に 小野建は15日、第1次中期経営計画を発表した。同社は昨年11月に2035年までの長期ビジョンを公表しており、この目標に向けた基礎固めの期間となる。長期ビジョンでは35年度の売上高は5千億円、営業利益は200億円を掲げている。 今回の新中計では売上高3100億円、営業利益75億円を目指す。ROEは6・0%とし、さらに収益率の向上に努める。 今回の中計で注目されるのは、人やIT・DXなどソフト面の強化だ。これまで商圏やシェア拡大のため、新たな拠点進出や設備増強などが話題になることが多かった。企業としての基盤をより強固なものにしていくためにはソフト面の補強がより重要な要素となる。6月の株主総会で社長に就任する小野剛副社長は、将来を支える人材育成とそのための投資強化を、自身の経営方針の柱の1つとして掲げている。 人的資本については人事制度を見直し、従業員のエンゲージメント向上のために具体策を検討する。同社では若手社員の登用が進んでおり、さらに諸策を講じることで組織の活性化を図る。ITやDX対応も強化する。営業効率化のためのCRM更新、経営管理効率化に向けたBIツール活用に取り組む。また、ESG対応として財団法人を設立し、学びの機会の提供に励むという。 24年度業績において営業利益は売上高2719億円、営業利益は68億円だった。これに対して27年度予想は売上高3100億円、営業利益75億円だ。主力となる建設分野がこれから少しずつ底を脱していく。数値目標設定はスローだが、収益や財務など中身の改善を優先し、次なるステップアップに備える。諸策については6月上旬に開示する方針だ。 |
2025年5月15日 |
鋼材市況は来期7─9月に曙光か 小状況は国内底入れ観 取り戻す製造業実需の「通常感」 (大阪)ようやく鋼材市場が短期的にでも転機を迎えそうだ。トランプ関税の行方、自動車産業への打撃、国際商流の収縮など大状況の困難は否定すべくもないが、7─9月の国内市況は下げ止まり、販売数量も上向きとなる気配だ。東京製鉄が5契でH形鋼などを3千円値下げして、4契での鋼板類の値下げと併せて「底入れ」を期し、その望みは5月GWまで叶わなかったが、5月帳破を控えて需給の膠着、下値の底堅さが流通の体感となりつつある。 都市型流通の卸値と実需密着型流通のユーザー渡し値には5千円以上の値差がなおもあるが、GW明けの商いは底値をうかがい、これまでの値下がり基調に歯止めがかかった観が強い。丸一鋼管が総額2万円の値上げを打ち出し、状況を踏まえて小刻みの底上げを実施しつつあるのも流通末端の「空気」を変え、国内店売り市場は世界の大状況の困難とは別に結界を成しつつあるようだ。関西の4月の荷動きは、1─3月と基調を異にして「通常感」に立ち戻っており、大きな需要増とならないまでも着実な加工・出荷量に結びついているという。汎用品市場における高炉の輸入材への危機感も浸透し、高級品比率の上昇だけでなく、汎用品への市場対策を進める戦略変更が明確にされ、これまでの「置き去り感」が拭われる方向となった。そうした情勢下、19日の東鉄6契売出しコメントが注目されるが、7─9月に向けたポジティブな指向に期待がかかる。 大状況のトランプ関税が日本の自動車業界に与える影響は100万台といわれ、トヨタ、ホンダなど1兆円を超える減益要因とされるが、このサプライチェーンへの打撃は一般鋼材市場とは区別された商社ミッションによって市況を直接的に襲うものとはならない。中国材のアジア市場での過剰感が募るにせよ、関税で上昇する米国市況の吸収力からも、杞憂となる可能性がある。 |
2025年5月14日 |
経産省、第1Q生産計画国内向け微増 粗鋼2033万d、コロナ後最低 H形・小棒はボトムからやや回復 経済産業省は第1四半期の鉄鋼生産計画をまとめた。粗鋼生産は2033万dで前期比0・3%の微減、需要見通し比では0・6%の微増だった。新型コロナ禍の影響を受けた2020年度の第1四半期は1811万d。以降の第1四半期の数値は今回が最も低い。5月からはJFEスチールの倉敷第3高炉のバンキングが始まるためその影響もあると見られる。 鋼材生産計画は1786万dで前期比0・1%増だった。わずかな増減ではあるが、国内向けが増えて輸出向けが減少する。国内向けは1172万dで前期比0・4%増。普通鋼は887万d、特殊鋼は285万dとなる。国内向けは普通鋼だけ0・5%の増加を見込む。建設用鋼材が前期は超低水準だったため、その戻りが少し出たと見られる。 輸出向けは614万dで前期比0・6%減。特殊鋼の減少によるもの。トランプ関税影響などは第1四半期の段階ではまだ本格化していないが、需要家の保守的な見方が一部で影響をもたらしているといえる。輸出向けの特殊鋼は前期比で3・9%減、前年同期比で6・5%となっている。 建材品種の動向については、H形が77万dで前期比9・5%と大きな伸びを示した。ただ、前年同期比では1・6%減となっており、絶対値としては低い水準。建材品種は24年度の第4四半期に過去と比べても極めて低い生産水準になっている。 主部材となるH形鋼についても、その反動が起きたと見られる。それでも最悪期は脱したもようだが、多くの大型案件が端境期にあることを考えると、依然として厳しい状況に変わりない。小棒は172万dで前期比6・1%の増加だが、H形鋼と同様に生産水準は低く、前年同期比では3・9%の減少だ。 |
2025年5月13日 |
神鋼、特殊鋼事業見直し子会社売却 日本高周波が大同特殊鋼傘下へ 山特に続く高炉主導の再編、構造変化も 神戸製鋼所は12日、グループの日本高周波鋼業を完全子会社化したのち、大同特殊鋼に全ての株式を譲渡すると発表した。日本高周波の子会社である日本高周波鋳造は、株式と資産の現物配当を受ける神戸製鋼がグループ会社として傘下にとどめる。 日本高周波は自動車需要低迷とコスト上昇により2年連続で営業赤字となるなど厳しい経営状況にあった。神戸製鋼は2024年度連結業績において日本高周波について69億円の減損処理を行っている。日本高周波は昨年24年度を起点とする3カ年計画を策定。自動車分野の比重を減らし、産業機械分野を伸ばし品種構成の見直しを行う方針を示した。工具鋼や特殊合金・ステンレス、鋳鉄で主力事業は構成されていたが、特殊合金や高耐食性ステンレスを拡販し収益力を高めようとしていた。今回、大同特殊鋼の子会社となることで、生産効率向上や国内外のネットワーク活用、流通機能の再編などさまざまなメリットがある。 今回の神戸製鋼と大同特殊鋼の取り組みは、特殊鋼業界において大きな構造変化につながる可能性がある。工具鋼や軸受鋼は特殊鋼メーカーにとって主力分野であるが、EV化の流れなどを意識し、メーカー業界は事業構造を抜本的に見直しに入っている。そのなかで独自の強みを磨いている。神戸製鋼は特殊鋼の主戦場を切り離すことで、特殊鋼事業を再構築する。譲渡を受ける大同特殊鋼も、一貫生産設備を持つ日本高周波を機動的に活用し新たな戦略を描いていく。特殊鋼業界は山陽特殊製鋼が日本製鉄の子会社となるなど、絵地図が大きく変わる局面にある。世界の需要構造変化により、自動車だけでなく各種製造分野の流れは変わっていく。今回の取り組みはさらに拍車をかけるだろう。 |
2025年5月12日 |
日鉄、山特に続く電炉政策の一手 中山製鋼と合弁会社設立 総投資額950億円、汎用HC競争力強化 日本製鉄は国内製鉄事業再構築の一環として新たな一手を打つ。同社は9日、中山製鋼所と電炉の合弁会社を来年3月をめどに設立すると発表した。中山製鋼は計画している新製鋼設備やその関連設備などに総額950億円を投資。中山製鋼は設備を賃借し操業するというもの。日鉄は中山製鋼からスラブやホットコイルの一部を購入する。新会社の資本金は500億円。出資比率は日鉄が49%、中山製鋼が51%となる。 この取り組みは日鉄が進める品種分野ごとの競争力強化だ。ホットコイル市場は輸入鋼材の増加が顕著になっており、日鉄としても汎用品分野の対策が不可欠となっていた。この分野ではコスト競争力のある中山製鋼との連携が肝となる。中山製鋼は中期経営計画において、上工程に自ら投資し一貫生産の強みを発揮しようとしていた。半製品購入の不安定さから脱却するためだった。だが、将来的に鉄スクラップの安定調達も含めて製鋼設備の維持には、中山製鋼1社で行うよりも日鉄との連携があるほうがリスクを低減できる。新会社の設立と日鉄からの投資を受けることで、製鋼設備は中山製鋼の独自の所有ではなくなるが、市場における競争力を考えた場合、負担は少なくて済む。稼働開始は2030年以降を見込む。 日鉄は山陽特殊製鋼を子会社化している。親子上場を廃止することでよりグループ経営のスピードを上げ、欧州のオバコを含めた特殊鋼の戦略展開に弾みがつく。日鉄はこのほど大阪地区の一部製品を山特の第一工場に集約する方向で検討に入った。完全子会社化で特殊鋼棒線の一体化と最適化を進める。今回の中山製鋼とはまた異なるケースではあるが、日鉄は分野ごとに精査し対応を進めていくとしている。従来の業界の捉え方とは異なる方法で粛々と電炉政策を進めている。 |
2025年5月9日 |
JFEHD、長期戦略・8中計策定 鉄鋼事業利益2600億円へ 年間粗鋼生産は2100万d体制に JFEホールディングスは2035年度事業利益7千億円確保に向けた3カ年の第8次中期経営計画を策定した。高炉7基体制から5基体制で年間粗鋼2100万dに最適化、インドをはじめとする海外市場を狙った各種戦略などで一過性要因を除く27年度事業利益3650億円(24年度実績2155億円)を目指す。27年度セグメント利益を鉄鋼事業2600億円・エンジニアリング事業420億円・商社事業600億円に引き上げ、35年度までにセグメント利益を鉄鋼事業5千億円(24年度実績1373億円)・エンジ事業1千億円(193億円)・商社事業1千億円(479億円)を目指す。 北野嘉久社長は8日の会見で2050年のカーボンニュートラル(CN)達成に向けた投資を行うためには7千億円規模の利益水準が必要だと説明した。内需の減少や中国材の安値輸出拡大、米国の関税政策をはじめとする保護主義のリスクがあるなかでもインドを中心とした成長市場、CN社会実現に向けた需要は底堅いとして国内生産体制のスリム化、海外成長分野・地域への積極投資を含む事業拡大を図っていくとした。国内生産体制は西日本製鉄所の福山地区を高炉2基体制(27年度)に、革新電気炉を導入する倉敷地区を高炉2基体制(28年度)にする。現在の単独粗鋼生産能力(2600万d)は約400万dの余剰能力となっており、残る設備の稼働率を高めることで収益改善につなげる。 鉄鋼事業では高付加価値商品比率を高める。洋上風力発電用の大単重厚板や高級無方向性電磁鋼板など高付加価値商品の比率(総量ベース)を24年度実績48%から3カ年で60%に引き上げて400億円の増益要因にする。エンジ事業では洋上風力モノパイル製造事業が25年度下期から本格化する。廃棄物発電事業や食品リサイクル事業への投資分を刈り取っていく。(本紙2面に続く) |
2025年5月8日 |
メタルワン、サプライチェーン革新に挑む メタルX UP導入企業1200社に 今年度中に見積機能搭載、対象範囲柔軟 メタルワンの提供するデジタルプラットフォームの「メタルX UP」の導入企業が今年4月に1200社を突破した。このプラットフォームはミルシートの電子化や工事進捗、受発注などメタルワンと取引先との間で情報をデジタル化し、業務効率向上に繋げるもの。2023年に厚板品種の取り扱い流通で導入が始まり現在、パイプやステンレス・特殊鋼など対象とする品種が広がっている。新たに在庫状況を把握できる機能が盛り込まれ、さらなる導入企業増加につながりそうだ。 メタルX UPはミルシートの電子化を実現したことで取引先から高い評価を受けた。ミルシートはメーカーによって仕様が異なり、まだ電子化されていない部分もある。同社は紙でやり取りされているデータを電子化することで管理にかかる手間を減らした。この発展形として三菱商事のMill─BoXとの連携も検討中だという。このほかには、これまで電話で問い合わせていた工程進捗を画面上で確認できるようにしたり、納品書の照会、注文履歴の閲覧やこれを使用した再注文、受発注業務の電子化、請求金額照会、そして在庫表確認などの機能を充実させた。(本紙2面に続く) |