2024年4月18日
23年の月平均上回るハイペース
中国の3月粗鋼生産8800万d
ミルや流通在庫調整矛先は輸出

 中国の3月粗鋼生産が8827万dで前月比400万d強増加した。4月も生産ペースが落ちる様子は見られず、需給調整を背景とした高水準の輸出量が継続することが懸念される。2023年累計の粗鋼は10億2025万d。月平均は8500万dで3月生産分はこれを上回っている。
 政府は経済促進政策を発表する一方、大手鉄鋼メーカーの生産動向を注視する動きを見せており、鋼材需給調整の対策を講じている。だが、この生産状況では政府の対策に実行力があるとは信じ難い。主力鋼材品種の週生産は4月第2週目にして960万dを維持。3月の週生産推移と比較し目立った変化は見られない。ミル在庫と全国流通在庫は減少傾向にあることを踏まえると、輸出による需給調整で凌いでいることがうかがえる。
 流通在庫が大幅に減少しているのは条鋼品だ。鉄筋と線材によるもの。4月第2週市況は鉄筋と線材が160元上昇した。政府の対策を好感して先物や現物の価格が上昇したが、実需に基づくものではないため安定しないと見る関係者もいる。
 条鋼品については中小のメーカーが多いため、果たして政府の統制がどこまで効くのか疑問符がつく。中国では不動産分野の低迷が長期化しており、地方政府の資金繰りも苦しくなっている。メーカーの減産だけでは需給調整の道筋はつけられず、輸出ドライブを選択するしかない。対日輸出においても、最近は鋼板類だけでなく条鋼品でも増加の傾向が出てきている。
 中国の減産統制は、23年末も効果は表れなかった。大手メーカーも一部設備で休止など手は打ったものの、形式だけの対応が目についたという。4月も生産にブレーキが効かない限り、需給調整の課題は先送りされたものといえる。
2024年4月17日
高値受注繰り越し効果も大きく
棒鋼メーカー23年度決算及第点
次年度は物流や労務費負担で課題山積

 棒鋼メーカー各社の2023年度決算は及第点をとれそうだ。販売数量は精彩を欠いたが、鉄スクラップ相場とエネルギー価格が想定以下にとどまるなか、製品販価維持したことによるもの。高値のキャリーオーバーも大きかった。共英製鋼は営業利益200億円(前期比35・0%増)、合同製鉄は同170億円(22・2%増)、東京鉄鋼は同100億円(129・6%増)を見込む。
 24年度は状況が一変する。人手不足と資材コスト上昇などの影響で物件需要は前年を下回る可能性がある。最近は現場の人件費上昇もバカにならない。関東地区の棒鋼メーカー筋は「収益が23年度並みとなら御の字」だと言う。鉄スクラップ以外の諸コストが上昇するほか、足元ではイランがイスラエル攻撃をするなど中東情勢が悪化していること、為替動向が不透明なことなどがエネルギーコスト上昇要因につながる公算も大きい。
 足元、トン5万円付近の鉄スクラップ相場への警戒感もある。23年度は5万円中心に比較的安定的な価格推移だった。国内の発生が少ないことや輸出価格が国内鉄スクラップ市況をけん引したためだ。足元でアジアの鋼材市況は下落している。中国のインフラ分野の需要低迷で、同国からの条鋼品種の輸出増加が目立ってきた。ビレット市況にも当然影響が出る。鉄スクラップは脱炭素化の流れを背景に、一定の価格水準で推移するとの見方が業界で大半を占めるが、アジアの不安定な条鋼品種の市況はマイナス要因につながる。
 23年度は需要が低迷するなかで、メーカーは販価維持に努めた。ベクトルもある程度揃っていた。これが24年度も継続できるかどうか、メーカー業界は試されている。需給バランスに即した生産に徹することができるか。輸出市場は調整弁として期待できない。ポイントとなるのは決算発表時における各社の第1Qの想定だ。今年度は序盤の苦しさが軽減されることはない。
2024年4月16日
東鉄5契販価、全品種で据置き
中国要因で輸入対抗意識
宇都宮のトラブル、他工場でカバー

 東京製鉄は、5月契約分の鋼材製品販価を据え置いた。販価据え置きは3カ月連続。国内外ともに市場環境が整わないため、今回の据え置きは業界の想定どおりといえる。海外については、中国大手ミルが国内向けを値下げし、それに連動した輸出価格の下落でアジア市場の混乱が予想される。対日という点では鋼板類だけでなく建材品種についても中国からの輸入は増加しており、こうした動きは近国ミルを刺激するため、東鉄は輸入材動向に緊張感を高めている。国内について小松ア裕司取締役常務執行役員は「地域ごとの価格改善の動きは前月よりも進展した」と受け止めつつも、メーカー値上げや流通コスト転嫁の浸透はまだ道半ばとの印象を抱いているという。
 2024年度の国内需要環境について小松ア常務は「上期は建設業の残業規制強化の影響もあって厳しいが、下期に少し上向くのではないか。通期では23年度並みになる」と展望した。鋼板類の需給バランスはメーカー各社が慎重な供給姿勢を続けているため「崩れるとは想定していない」ものの、価格は中国の輸出・価格動向が大きく左右すると見る。鉄スクラップ価格については「足元は円安で輸出価格が上がっているが、海外からの引き合いは低調で、目先も同様だろう」とした。
 4月生産計画はH形鋼9万d、ホットコイル15万d(うち輸出3万5千d)、厚板3万5千dの計29万d。H形鋼の24年4─6月の引き合いは小松ア常務が「良くなかった」と振り返る1─3月と同水準になる見込みだ。ホットコイルは「先高感もあって余分に入ってきているものもある」という。他方、H形鋼の生産拠点である宇都宮工場で今月、製鋼設備のトラブルが発生した。月末までに復旧を予定しているが、宇都宮工場の製鋼ライン再開までは九州工場や岡山工場で生産をカバーしていく。
2024年4月15日
中国ミル国内下げと輸出価格影響
アジアHC動向混とんへ
半製品も刺激、日本市場高まるリスク

 中国ミルの国内向け値下げで、アジア鋼材市場が混とんとしてきた。国内向けの値下げは輸出価格と連動するため、アジアのホットコイル市況は500jの攻防という厳しい局面に移った。安値の中国材は東南アジアに流入、ベトナムミルの値下げを誘発している。間接的に日本市場も輸入の影響を受けるため、この状況は予断ならないといえる。
 宝鋼は5月積みの国内価格についてホットコイルで100元値下げ。一部品種を除き年末年始の価格政策とは一変させた。需要低迷により輸出で調整を図ろうとするも上手くいかない。宝鋼の方針に他の主力ミルも続くと見られる。ホットコイルについては4千元前後の水準を維持してきたが、トップメーカーの値下げは影響が大きく、市況下落を促す可能性がある。トレーダーが在庫を抱えるのを嫌がり、輸出向けに放出するリスクが高まった。
 ベトナムミルは安値による輸入材の影響を受け、国内需給調整に手を焼いている。ホットコイル以外に半製品放出も考えられる。原料のスポット価格が下がったことで半製品市況も連動している。さらなる値下がりとなればホットコイル市況にも影響が及ぶのは必至だ。
 アジアのホットコイルの市況動向は日本の輸入材動向を左右する。高値を維持する日本市場は一定の輸入鋼材が定着している。2月の通関実績では中国からの輸入はホットコイルと冷延コイルが5千dずつ。ホットコイルの平均単価は9万5千円、冷延コイルは10万7千円だった。
 ちなみに韓国からはホットコイルが6万1千dで1月比2割ほど減少したが、平均単価は10万4千円という安値。やっと二桁を超えた水準だ。中国政府はミル生産を管理する姿勢を示しているが、アジア市場への輸出拡散の影響は止められそうにない。
2024年4月12日
経産省第1Q需要見通し、低調持続
粗鋼生産2171万d直前期横ばい
土木が不調、製造分野もけん引なし

 経済産業省まとめによると、2024年度第1四半期粗鋼需要見通しは2171万dで前期実績見込み比ほぼ横ばいだった。23年度は第2四半期以降、2100万d台の実績が続いており、新年度もその低調ぶりから抜け出せていない。前年同期比は2・2%減。ちなみに粗鋼生産は22─23年度連続で8700万d台。幸先の悪いスタートになった。
 鋼材見通しについては1895万dで前期実績見込み比0・8%減でほぼ横ばい。減少したのは普通鋼鋼材だけだ。国内需要の減少が響いた。内訳は国内需要向け1254万dで前期実績見込み比1・7%減、輸出向けは641万dで0・9%増加した。国内についてさらに見ると、普通鋼鋼材は985万dで2・3%減、特殊鋼鋼材は269万dで0・5%増だった。輸出は普通鋼鋼材が537万dで1・3%増、特殊鋼鋼材が104万dで1・3%減だった。
 内需減はほとんど建設向けの減少によるものだ。季節性のもの、人手不足や素材高の影響により土木需要が落ち込む見通し。土木は直前期比大幅減少、前年同期比でも減少する。製造業をけん引するはずの自動車も冴えない。直前期比微増だがほぼ変わりがない。能登半島地震によるサプライチェーン混乱影響も一因とされるが、あきらかに一部の自動車メーカーの不正問題が響いたといえる。造船も需要回復が期待されたが、直前期横ばいで精彩を欠いた。
2024年4月11日
関東鉄源、鉄スクラップ共同入札
4契、5万1000円台で987円高
円安影響、国内市況に波及なしか

 関東鉄源協同組合は10日、4月契約の鉄スクラップ輸出入札を行った。落札は1番札のみで5万1087円で1万5千dだった。前月比987円高となった。向け先はベトナムかバングラデシュと見られる。上昇したのは為替影響が大きい。3月入札時は149円だったのに対し、今回は151円だった。トルコやバングラデシュ、ベトナムについてはもともと在庫が少なかったことで補充買いの動きが続いている。トルコはラマダン明けでこれも要因の1つ。5万1千円台は役員の間では想定内のこと。先週、補充買いが出た時の成約価格は5万1千円を超えていたという。関東鉄源のブランド力を考慮して、5万2千円台もあるのではという予測があったそうだ。
 今回の応札は9万7600dで17件だった。辞退はゼロが続いている。今回は1万5千dの成約で最近の数量と比べ大きく増加した。組合の役員の間ではブランドの影響力を考慮した場合、1万d以上のボリュームが望ましいとの声があったという。2番札を成約すれば2万d超えとなるはずだったが、それには至らず。4月契約の船積みは5月末日としており最終的には翌月に持ち越すべきではないとの見解になった。ちなみに3月契約の5千dの成約は台湾向けだった。
 関係者は今回の落札は国内市況には大きな影響はないと見ている。実際、東京製鉄は購買価格を変更していない。国内では依然としてヤードディーラーの入荷状況は改善していない。年度末でも増えなかった。ただし、地域によっては若干増減の差はあるという。総体的に、鉄スクラップ需要水準は低いが肝心の供給量が落ちている。ただ、あまりにも国内の建設需要が低迷しており、電炉メーカーの稼働は冴えない。大型連休を間近に控えるが積極的な原料ストックの姿勢も見られない。
2024年4月10日
三菱製鋼G、印でばね事業強化
強化拠点の車向け2倍に
鉄道車両向けも新たに量産開始

 三菱製鋼グループは、今後市場のさらなる成長が期待できるとして、インドでのばね事業体制強化を発表した。今回発表したのは自動車用巻きばね生産体制の強化と、鉄道車両用ばねの量産開始。
 自動車用巻きばねについては、現地合弁会社における生産体制を強化する。生産能力の強化を行うのは、同社グループの持分法適用会社であるStumpp Schuele&Somappa Auto Suspension Systems(インド・カルナータカ州ベンガルール)チェンナイ工場。設備の完成は2024年7月を予定し、今回の体制強化で生産能力は約2倍となる。
 同社は、三菱製鋼と現地ばねメーカー(Stumpp Schuele&Somappa Springs)の共同出資により14年に設立。現地での主要顧客である日系自動車メーカーの現地生産拡大や、部品の現地調達化ニーズに応えてきた。また、鉄道車両用ばねについても現地連結子会社で新たに量産を開始する。生産を行うのは連結子会社のMSM SPRING INDIA(MSM─SI、インド・タミル・ナドゥ州チェンナイ)。
 三菱製鋼はインド政府の推し進める「Make in India」政策に基づく顧客の現地調達化ニーズに応えるとともに、同社の技術・品質が評価されたことにより受注が決定した。すでに顧客承認も得ており、24年3月から本格量産を開始している。MSM─SIは、同社グループの建設機械用太巻ばねの生産・販売を主な目的として14年に設立、現地の日系建設機械メーカーを中心に納入を行ってきたが、車両用ばねの生産・販売は今回が初となる。三菱製鋼グループでは、3月に北米ばね事業子会社への増資を行うなど、海外ばね事業の体制強化に取り組んでいる。