2020年10月30日
中国鉄鋼需要、民需に疑問符
在庫に見る回復力の真偽
自動車販売好調の死角は

 中国の鉄鋼需要の雲行きが怪しくなってきた。ミルの生産水準が依然として高いこと、市中在庫の水準が昨年の同時期よりも高い水準にあることなどから、国内需給バランスが崩れているのではないかと多くの業界関係者が懸念を持ち始めている。新型コロナ禍に、世界でいち早く内需正常化を果たしたように見える中国だが、インフラ投資や不動産バブル抑制などの各種経済対策をもってしても、リーマンショック後の回復力には及んでいないと見ることもできる。12月はミルの決算期にあたることからも供給が緩むリスクは高く、鋼材市況動向を一層注視する必要が出てきた。
 鉄鋼需要のカギを握るのは自動車分野の動きだ。中国汽車工業協会まとめによると、9月の自動車販売は265万台で前年同月比12・8%増だった。1─9月累計販売は1711万台で前年同期比6・9%増加しており、コロナ影響から脱却後の伸び率が高いことがうかがえる。日本からの鋼材輸出にも中国市場は効果をもたらしており、こうした流れが継続的に続くことにこしたことはない。だが自動車やインフラ関係で活況を呈しているはずの需要を前にして、鋼材市中価格の方はそれに匹敵する伸びは見られない。中国国内の在庫水準の高さがそれを裏付けている。主力品種の在庫は10月第4週時点で1395万dで前年比大幅増となっている。
 昨年同時期の在庫は987万dだった。中央政府は暖房期にミルに強力な減産対策を課すわけだが、一昨年と比べこれは緩和される傾向にある。したがって今年は増産基調が収まらない。政府による金融引き締めで民間企業のバランスシートには負荷がかかっており、すでに副作用が出てきている。民需の回復に影を落としていることは否めず、需給の乱れの引き金になる可能性がある。
2020年10月29日
鋼材値上げに逆行の受注価格低落
「コロナデフレ」の逆風
中小取引先は受注減、採算難で信用不安へ

 中小建築物件の消失と同時にゼネコンの物件受注価格の低落が進み、動き出した鋼材価格是正進捗の障害となっている。地価の下落が具体化していることもアゲンストとなっており、建築意欲の低下と物件見積もりの停滞につながっている。
 鋼材市況はこの1カ月で2千─3千円の上昇を見せ、主力流通は11月にさらに2千─3千円を積み上げ、5千円以上の底上げを目標にしている。しかし、こうした動きがファブの鉄骨受注価格に反映されるのは容易でなく、鋼材流通業者の採算改善が中小鉄骨ファブリケーターの採算悪化につながりかねないという。鋼材値上げの受け入れに距離を置く中堅クラス以上のファブと中小零細ファブとでは交渉力、体力も異なり、コロナ建築不況の下で仕事の確保も採算の確保も厳しくなる見通しだ。これは多くの鋼材特約店が信用不安にさらされることを意味し、値上げが諸刃の剣となって振りかかってくることを示唆する。
 鋼材販売業と鉄骨商社を兼業する店は、対ゼネコン交渉で頓挫すれば値上げをどちらかの部門で吸収・転嫁するほかなく、実のある対処とはいえない。
 建築市場での既受注物件への値上げ適用は難しく、さらに新規案件への折り込みもゼネコン、ファブのカベをどう突き破るかが問われる。需要の下降トレンドに加えたコロナショック、市場構造変化の下で先行きの仕事の見通しが立たないまま、コストを直撃する格好の鋼材値上げを実現するには「必要な材料が入手できない」という条件が必要という。鉄鋼各社の値上げ交渉は経営の内情から「待ったなし」とされるが、市場では「半年は遅れる」と内情を明かす向きもある。これまでにも増して「さみだれ的」な実行を余儀なくされる可能性もあり、ここをいかに束ねるか11月以降のカギになりそうだ。
2020年10月28日
JFEスチール、海外拠点再編
米・欧・印エリア再構築
メキシコは法人化で攻めの姿勢

 JFEスチールは27日、今年度内を目途に主要海外拠点の再編と強化について発表した。対象となるのは米国と欧州、インドの現地法人で、現地の市場の成長に合わせ拠点体制にメリハリをつけ経営資源の選択と集中を行うことを狙いとしている。
 具体的には米国法人は3拠点(ニューヨーク、ヒューストン、メキシコシティ)を持つが、ニューヨークをヒューストンに2021年3月末までに統合、メキシコシティの拠点は今年度内をめどに独立法人へと昇格させJFEスチールメキシコとする。欧州についてはロンドンにある法人をドバイに統合する。これについては年内をめどとしている。インドについては3拠点(チェンナイ、ムンバイ、ニューデリー)のうち、チェンナイの業務をムンバイとニューデリーの分散し今年度内に統合させる予定だ。
 米国についてはJFEグループ発足前からの拠点展開であり、自動車用鋼板や油井管など主力品種の市場や戦略の転換などを背景に旧来の拠点体制を見直したといえる。メキシコシティの拠点を独立法人化させるのも、米国の保護貿易主義の台頭を背景に、市場インサイダー化を進めるためにテコ入れを行ったと見ることが出来る。JFEスチールではニューコアとの自動車用鋼板製造の合弁をメキシコで立ち上げるなど、同地域での展開に注力しており、市場へのフォローとしてより高い役割を求められていると見られる。インドについてはJSWとの関係を踏まえ同社としては注力姿勢を示しており、既存拠点の人材充実を優先したと見られる。高炉業界での海外拠点体制の再構築は急務の課題だ。人事や経費に限りがある中で成長市場への展開力を維持するには思い切った見直しが必要になる。同社の場合、建設的な再編の好例となるだろう。
2020年10月27日
現代製鉄・仁川大形をリプレース
ジャンボH生産可能に
12月末まで工事操休、値上げ推進

 現代製鉄は仁川工場のH形鋼ミルを900×300_のジャンボサイズまで製造できる新鋭ミルに切り換える。10月末から据付工事に取りかかっており、12月末には新ミルが稼働する運び。このリプレースにより、これまでジャンボサイズは浦項工場で生産していたのが仁川工場でも可能になり、H形鋼のトップメーカーとして強力な体制が整う。
 仁川工場は中形と大形のユニバーサルミル各1基を備え、これまでの生産サイズは最大で700_までとなっていた。浦項工場と合わせて年産300万dの能力を保有し、国内外で250万dを販売している。往時は中東の建設需要に応えて、ドバイなどへの輸出量が100万d(年)を記録したこともある。
 韓国の国内ではRC構造の高層建築が多いが、昨今は地震などによるビル崩壊の事例も多く、耐震強度に優れたH形鋼のニーズが強まっていた。2019年2月に現代製鉄は耐火耐震性に優れた複合H形鋼を開発して、市場に投入した。これはウエブ・フランジ厚15、25_で降伏強度355メガパスカルの高強度H形鋼で、これに続いて35_厚、420メガパスカルの開発に着手した。SN520・570材も00年代の早い時期から手掛け、H形鋼のグレードアップを進めてきた。
 仁川の新ミルでは、将来的に1千_アップ(1200_)までの開発・生産に取り組む方向という。海外を含めた大型サイズの需要に対応し、H形鋼のナンバーワンミルの存在を不動にする考えだ。同社のH形鋼は日本市場でも馴染みがあり、土木用途などに一定の顧客層を形成している。新経営陣の下で採算の重視を打ち出しており、約2カ月間の仁川・大形ミル操休のタイミングを生かしてH形鋼の値上げ浸透にも努める構えだ。
2020年10月26日
東京製鉄、業績予想を下方修正
20年度通期利益は7割減
販売数量15%減の205万dへ

 東京製鉄は23日、2020年度通期業績予想を下方修正し、売上高1340億円(前期比25・5%減)、営業利益53億円(69・5%減)、経常利益56億円(68・6%減)、純利益48億円(65・2%減)になるとした。7月末時点では営業利益62億円、経常利益65億円を見込んでいた。新型コロナウイルスの流行を受けて国内鋼材需要の低迷が続き、鋼材市況の回復遅れが響く。下期は上期と比べて販売数量、メタルスプレッドともに悪化する見込み。鋼材需要の本格的な回復には「時間を要する」と見ており、引き続きコスト削減に注力していく。今村清志常務取締役は「12年度通期は赤字となったが、20年度はコロナ禍でも黒字にするということ強調したい」と話した。
 20年度通期は販売数量205万d(前期実績比35万8千d減)、トン当たりの製品販売単価6万4900円(8800円安)、スクラップ購入単価2万5200万円(1700円安)、メタルスプレッド3万9700円(7100円縮小)を予想。下期は数量100万d(上期比5万2千d減)、販売単価6万6500円(3100円高)、スクラップ購入価格2万7500円(5千円高)、メタルスプレッド3万9千円(1900円縮小)、営業利益20億円(12億円減)になると見る。上期と比べて数量減・メタルスプレッド縮小要因で収益は計20億円悪化するが、電力コストや耐火レンガ、電極など副資材コストの改善分で8億円程度をカバーする。
 上期業績(4─9月期)は売上高673億円(前年同期比29・8%減)、営業利益32億円(57・8%減)、経常利益36億円(53・9%減)、純利益33億円(54・6%減)だった。輸出比率(金額ベース)は18・3%。出荷数量105万2千dのうち条鋼類は51%(形鋼47%、棒鋼4%)、鋼板類49%(薄板42%、厚板7%)だった。
2020年10月23日
20年上期粗鋼生産は3709万5000d
52年ぶりの低水準に
コロナによる需要減退など影響

 日本鉄鋼連盟が22日に発表した4─9月(上半期)の粗鋼生産は、前年同期比26・8%減の3709万5千dとなり、1968年4─9月の3318万d以来、52年ぶりの低水準だった。新型コロナウイルス感染症による需要減退や高炉休止などが影響したとみられる。下半期からは自動車など一部の業種で持ち直しがみられるが、建設向けでの冬場の季節要因などを考慮すると、通期では8千万dを割り込む可能性がある。7─9月では22・7%減の1898万dだった。
 4─9月の炉別生産では転炉鋼が29・5%減の2723万8千d、電炉鋼が18・0%減の985万7千dとなっており、高炉休止の影響もあって転炉鋼の落ち込みが大きい。4─9月の銑鉄生産は29・4%減の2728万5千d、7─9月では27・8%減の1379万2千d。4─9月の熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼合計)の生産は25・0%減の3318万5千d、7─9月では21・2%減の1707万d。
 4─9月の普通鋼熱間圧延鋼材の生産は21・5%減の2724万d、7─9月では17・8%減の1397万5千d。4─9月の特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は37・8%減の594万5千d、7─9月では33・4%減の309万4千dだった。
 4─9月の品種別生産は、広幅帯鋼が25・9%減の1512万7千d、普通鋼冷延広幅帯鋼が29・9%減の599万2千d、厚板が19・1%減の412万5千d、小形棒鋼が8・2%減の379万7千d、亜鉛めっき鋼板が32・8%減の339万2千d、H形鋼が7・7%減の167万1千d、熱間普通鋼鋼管(継目無鋼管、溶鍛接鋼管合計)が22・4%減の156万6千dなどとなっており、全品種で前年同期を下回った。(4面に関連記事
2020年10月22日
東京製鉄、形鋼実行販価突っ張り
H形、値上がりピッチ速まる
高炉鉄源タイト化で焦りも

 (東京)東京製鉄が11月契約で、形鋼の実行販価を突っ張り通したことで、形鋼市場の値上がりムードが加速している。今回の実行の値上げは取引先流通にとって追い風ばかりでなく、仕入れ値上昇という点で厳しい内容だった。東鉄は注文が減少するのを構わず実行価格を上げたのだから、それだけの覚悟があったのだろう。完全に尻に火が付いた状態になった流通は再販価格転嫁を貫徹するしか選択肢はない。高炉の鉄源タイト化もインパクトとなっている。H形鋼ベース市況は7万円台後半。7万5千円以下はほぼ払しょくできたといえるが、主力流通の歩みは止まることはない。8万円水準を射程に、値上げを進めていく構えだ。
 JFEスチールが先月、建材品種の値上げを表明、今月は日本製鉄がH形店売り追加値上げを表明した。日鉄の場合は東京製鉄発表の直前だった。流通側は東鉄に値上げアピールはしてほしいが、自分たちの仕入れは据え置いてもらいたいという複雑な心境にあった。東鉄の10月ロールに余裕があったことから、実行ベースでは値上げに踏み切りにくいという見方も一部にはあった。ところがふたを開けてみれば形鋼の実行価格値上げで、引き受け時もぶれることはなかった。こうなった時点で流通はさらに市況を押し上げるしかなくなったのだ。
 10月の市中の動きは最悪だ。コロナ騒ぎが最高潮だった春先と比べても、今のほうが状況は悪いと関係者は言う。「まるで年末の商いしまいのような雰囲気だ」との声もあるほどだ。主対象となる中小物件は閑散としており、いよいよコロナ影響が色濃くなってきたといえる。流通の間では自社の経営への不安も強くなっており、その不安が転嫁の取り組みの原動力になっている面も否めない。市況上昇ピッチは流通の不安の強さを反映している。