2018年5月25日
高炉キカク材、急速タイト化も
厚板市場激変の公算大
供給事情が主要因で働く

 (東京)厚板流通の間で、高炉キカク材の在庫が急速にタイト化する現象が起きている。これは主力需要分野の動きや、厚板シャーの稼働とは別の次元で起こっているもの。高炉の供給事情により、足元と比較し今後急速に需給が引き締まってくることを予想し、商社を含め買い集めの動きが生じていると見られる。4─6月は依然として鉄骨向けが端境期であるため、シャー関係者の間では在庫ポジションについては重めと感じる向きは多い。だが、こうしたムードの間隙を縫うように高炉材確保の動きは始まっている。
 高炉の設備トラブルは大けがにはいたらぬまでも頻発しており、製鉄所も特定の所に限らない。こうした状況が常態化しており、シャー関係者に聞けば毎月入票する拠点が変わると言う指摘もある。デリバリーに関しても輸送の問題も絡むなどして、3カ月から半年は当たり前、鋼種によっては1年かかるというものもある。シャーや特約店関係者はこういう状況に慣れっこになってしまい、今後の在庫タイト化については感覚が鈍くなりがちだ。鉄骨向けは端境、建産機やトラックについても引き続きメーカーの生産水準は高いが、これまでのように余剰の在庫を抱えてまでということはなく、材料手当て、あるいは部材手当のペースも巡航速度に戻ってきている。足元はそうした状況であるだけに、流通全体にまったりしたムードが広がっていても無理はないのだ。
 ただ供給事情だけみれば、この上期は後半に行けばいくほどタイト化すると予想する関係者も出てきている。高炉のキカク材だけでなく、敷板需給にも異変は表れている。高炉に敷板を作る余力がないのだ。高炉値上げの行方について、緊張感は既に高まっているが素材のタイト化が激烈なものになれば、マーケットが瞬時に変わる可能性を帯びている。
2018年5月24日
買い気が薄いアジアンマーケット
追い難い輸出高値
ASEAN市場には停滞感も兆す

 アジアの鉄鋼市場に停滞感が兆している。インドネシアやフィリピンの鉄鋼業者に元気がなく、半製品・棒鋼・ホットコイルの国際商談に沈滞感が漂い始めた。  中国の鋼材市況は、大手ミルが6月販価の引上げを企図した動きを示しているが、アジアマーケットは今週も呼応していない。指標となるビレット商談は、これまでと変わらない540j(C&F)とされ、引合いも少ない。中国ミルのオファーも目立たないが、東アジアからASEAN一帯の鋼材市況の上昇観は希薄になり、先行きへの見通しを欠いた格好だ。ASEANのGDP成長率は5%程度と予測されてきたが、4月以降は失速気味。
 ASEAN各国の最新事情は詳らかではないが、ベトナムでは需要自体は伸長。ただ、過当競争によって価格が軟化しており鉄鋼企業経営は悪化しているという。インドネシアでも中国から移設された地条鋼設備の稼働により供給過剰事態となり、価格の低迷が指摘されている。資金繰りのタイト化からアットサイトLCの150日猶予などの要請も表面化し、外商筋には「不況感」を指摘する向きもある。
 こうした情報の類似性は日本の状況と同様で、マーケットの量的成長は続いているものの、価格的に上昇余地を失うパターンといえる。今4―6月期は日本勢も輸出オファーを引上げ収益の拡大を期しているが、値上げ商談は難航している。
 中国・アジア市況と日本の市況を比べても、鉄筋丸棒は中国で6万8千円(4千元)、ホットコイルは7万4千円と税金などを考慮すれば中日の遜色はなく、アジア一帯に相似形が広がる。「息切れ」現象なのか、鉄価の必然性なのか、しばらく金縛りが続きそうだ。
2018年5月23日
新日鉄住金、薄板店売り・リロール向け
6月出荷からd5000円上げ
主原料以外のコスト上昇耐えられず

 新日鉄住金は、薄板の店売り、リロール、パイプ、軽量形鋼向けについて、6月出荷からトンあたり5千円の値上げを行う。取引先に対し申し入れを開始している。対象品種は黒皮・酸洗・冷延・めっきの全品種。今回の値上げの理由は主原料以外の副原料や耐火物や電極コスト、物流費の上昇の転嫁を依然として行わなければならない採算状態にあるからだ。加えてコスト上昇分ではなくマージンも取り切れていない。同社に限らず高炉を巡るコスト事情は非常に厳しく、こうして新年度に入っても転嫁を続けなければならない状態にある。同社としても店売りやリロール向けなどにとどまらず、各需要分野向けに対して聖域なき価格改善を進めていこうとしている。
 値上げを更に転嫁していく店売り・リロールなどの向け先にとっても、今回のハードルは高い。これまでの値上げの経緯などもあり、それを取引先に対して更なる転嫁に挑むことは生易しいことではない。ただ各ミルが安定した需要をもとにロールタイトになっていることから値上げを一気に推し進めるには、このタイミング以外にない。国内の需給は現状よりさらにタイト化してくる。需要分野の活動水準以外にミルの不調なども影響しているが、輸入材が入りにくくなっていることも値上げのプラスに働くと見られる。
 同社の値上げ表明は他メーカーの連鎖の動きにつながるのは必至。高炉が抱えるコスト事情はどこもそうは変わらないからだ。高炉だけではない。電炉にも同じことが言える。再び鉄スクラップが上昇し始め、コスト的になかなか楽にならない状況にある。高炉の値上げの動きが連鎖すれば、電炉にも必ず波及する。業界関係者は、高炉を含めたメーカー値上げは上期に集中すると見ている。6月販価で東京製鉄が価格を据え置いたが、基本にあるのは更なる値上げだ。
2018年5月22日
東鉄6月販価、4カ月連続据え置き
マーケットを意識
「機は熟していない」と判断

 東京製鉄は21日、6月販価について全品種据え置きとした。これで4カ月連続での据え置きとなる。今回は市中において据え置き予想が多く、想定通りの内容となった。今村清志常務取締役は今回の据え置きについて「マーケットが値上げをするのにまだ熟していない」との見解を示した。海外は米国鉄鋼輸入制限の影響から落ち着きを取り戻しており、もともと需要そのものが安定しているため懸念要素が少ない。国内も同様で主要な需要分野の動きは安定しており、国内外とも総体的に堅調と言える状況にある。ただ、今年2月以降の市中の荷動きが停滞していたことなどから、価格改定には慎重になっていると見られる。今村常務は「5月になって荷動きが改善されてきたことで雰囲気は変わってきており、特に厚板にはタイト感が出てきている。だが品種によって温度差もあり、もう少し見極めたい」とし、価格改定にはマーケットのムードが醸成されてくることが条件だとした。
 ただ同社としてもコスト面を踏まえ、これまでの値上げで充分だとは捉えてはいない。新年度に入って高炉の間で値上げの機運が高まっているが、今村常務はマーケットにはプラスに働くと見ている。流通も5月から6月にかけて新たな高炉値上げに備え再び転嫁に動かざるをえないと業界内では見られており、同社はそのタイミングを見計らっているとも言われている。
 5月の生産計画は24万dで、H形鋼10万d、ホットコイル11万d(うち輸出2万d)、厚板1万dなど。物件価格・あるいは在庫売りについてはH形8万9千円、異形棒鋼6万9千円、厚板8万1千円で変わらず。同社では4月から5月にかけての流通からの受注状況について「特に駆け込み的なものは見られない」としているが、H形鋼とホットコイル生産合計で5月は20万dを超える予定であることから、今月の受注も冷静な判断が働くと見られる。
2018年5月21日
棒鋼メーカー収益改善急ぐ
出荷単価伸び悩みで
エキストラ改定と契約見直しも

 関東地区棒鋼メーカーは鉄筋出荷単価の改善スピードの遅れに苦しんでいる。新規案件の平均製品販価が躯体向けでトン7万1千円付近にまで上がってきたが、メーカー指定がないフリー物件となる杭向けなどで6万2千円付近もあるためで、平均出荷単価が6万円前後で推移。安値契約残とともに杭向けが出荷単価改善の足を引っ張っている。他方、副原料・副資材価格が4月からトン4千─5千円近く上がっているほか、鉄スクラップ相場が足元再び上向いてきた。棒鋼メーカー各社は引き続き販価改善に強い姿勢で挑む。10月から見込まれる生産コスト増にも備える。エキストラ価格改定の動きや大量の安値契約残を抱えないための契約見直しの取り組みも進む。
 流通間競争や安値契約残が収益を直撃している関東地区棒鋼メーカー各社は「再生産可能なメタルスプレッド」としてトン3万円を唱えてきたが、2018年度は電極など副資材、合金鉄など副原料、輸送コストの上昇などで「プラスアルファ」も求めたいところ。足元の鉄スクラップ相場3万4千円で単純計算すると最低でも平均出荷単価6万4千円以上に上げていなければ収益的に厳しい。だからこそメーカーは流通から現実的ではないと指摘されながらも「販価トン7万5千円」を唱える。
 加えて東京鉄鋼が関東地区などで5月契約分から2鋼種のエキストラ価格を改定、ともにトン1千円引き上げるなど、鉄筋市況の動きと別の部分での収益改善の取り組みも進む。同社の鋼種エキストラ価格改定は11年ぶり。また、大量の安値受注残を避けるために納期や契約を見直す動きも出てきている。「ゼネコンは安いときに必要以上に発注している」(メーカー筋)ことへの課題がある。関東地区では14年前に契約見直し通知を各社が出していた時期があったが、納期問題への対応機運が再び高まっている。
2018年5月18日
溶融めっきも6月じわりタイト化
リロール・店売り影響大
鉄源・ホットC不足で輸入材にも脈なし

 (東京)表面処理鋼板は、市中の需給タイト化が再び鮮明になりそうだ。電気亜鉛めっき鋼板が足かけ2年にわたってタイトな状況を維持しているのに対して、溶融亜鉛めっき鋼板の需給タイト感はひと頃に比べ緩和されてきた観があるものの、6月以降は溶融も荷繰りが窮屈になりそうだ。
 その背景の大元は高炉鉄源のタイト化だが、すでにホットコイルを中心にアロイ材もリロールへの母材供給がタイト化し、堅調な需要実態に反してリロール製品の供給状況に影響している。店売り市場においては輸入材が調整弁としての活用度が高まるかと思いきや、韓国・台湾ミルも対日増枠には慎重な姿勢のままだ。高炉各社は圧延販売の品種構成を変え、溶融亜鉛めっき・電気亜鉛めっきともに店売り・プロパー材の引受け枠がどんどん厳しくなってきた傾向を否めない。流通関係筋によれば「とくに自動車メーンの店は敏感になっている。足元、一時的に在庫が溜まっているように見えるが、これでこの先やっていけるかというとそうでもない。主たる向け先分野によって捉え方に温度差があるため、市中では一見ひっ迫感が台頭していないように感じられるだけ」という。
 4月末の薄板3品在庫のうち、表面処理鋼板は129万4千dで前月比9千d増にとどまった。コイルセンター在庫は6千d増に過ぎない。昨年4月から表面処理鋼板トータルの動きを見る限り、130万dを超えたのは5カ月だ。熱延鋼板に比べボリュームが少ないことと、一昨年に先行した価格水準からの変動が小さいため需給タイト化の実態が目立たたないだけで、実はじわじわと進んでいるという。「仕事は一定量あるが、季節要因から市中全体の荷動きとしては落ちている。その感覚で見ると在庫は充填されているように映る。これが落し穴にならねば良いが」と危惧する声もある。
2018年5月17日
新日鉄住金、日新製鋼を完全子会社化
19年4月ステンレス事業統合
シナジー効果は100億円積み増しに

 新日鉄住金は16日、2019年1月1日付で日新製鋼を完全子会社化するとともに、同年4月1日付でグループの新日鉄住金ステンレス(NSSC)を承継先として、日新製鋼のステンレス鋼板事業と新日鉄住金の特殊薄板事業を統合すると発表した。新会社は年間粗鋼生産180万dの規模となり、世界9位のポジションとなる。ステンレス業界は世界的に供給過多となっており、生産量の3分の1が余剰となっていると言う。トップクラスの青山鋼鉄は800万d、太原鋼鉄は400万d、3位以下でも300万d、200万dの生産規模となっており、世界で戦うために日本のミルとしては現状よりもさらに高い競争力が必要となっていた。今回の子会社化と事業統合によるシナジーは、日新を子会社化した時に算出した200億円に加え、新たに100億円が上積みされる。
 進藤孝生社長は「今は世界の鉄鋼業界が大きな構造変化の転換期に直面しており、需要・社会構造の変化により早く対処することが必要になっている」とし、こうした流れの中において、今回の日新製鋼子会社化とステンレス事業統合が決まったといえる。新日鉄住金と日新製鋼の株式交換は新日鉄住金の株式1に対し、日新は0・71の比率となる。株式交換後の効力発生に先立ち、12月26日をもって日新製鋼は東証第一部の上場廃止となる。
 NSSCの伊藤仁社長は光・八幡・戸畑の鉄源がフル状態であることを踏まえ、事業統合により設備機能を単純にサヤ寄せするのではなく、最適な生産体制構築を追求するとしており、周南の汎用材の効率生産体制の活用などを例に挙げ、事業統合によるメリットが非常に大きいことを強調した。日新製鋼の蜷欽也社長は「新生日新は普通鋼と特殊鋼の会社に分かれるが、それぞれに当社のDNAは引き継がれていくことを確信している」と話した。